“理系”という人種の生態をおもしろ、おかしくつづる、マンガ『理系の人々』の最新刊が発売中だが、「まさか、4巻ぶんもネタが続くとはビックリです(笑)」と、著者のよしたにさん本人が驚いてしまうほど。
ところで現在のよしたにさんは、かつてSEとして勤めていた会社を辞め、マンガ家として完全に独立。フリーになって1年半ぐらいだが、そもそもマンガ家の道へ進むきっかけとは? そのへんのエピソードをうかがった。
よしたに著『理系の人々4』(中経出版、952円+税) |
いちばん影響を受けたのは
桜玉吉先生の『しあわせのかたち』
──マンガを描き始めたのはいつごろから?
よしたに 2000年くらいからウェブサイトを開設して、そこでコマ割りのある絵日記調のマンガを描き始めました。それ以前にも学生時代に、サークルの部室にあった雑記帳みたいなノートにちょこちょこっと描いていたりはしましたが。
──SE時代、仕事をしながらマンガを描いていたときは、どのような時間配分でマンガを?
よしたに 当初は商業ベースではなかったので、そんなに根を詰めて描くこともなく、仕事から帰ってきてササッと1本描き上げて寝るとか、日曜日に暇だったら描くみたなペースでした。だいたい1本描き上げるのに1~2時間くらいですね。
ただ、本を出すようになってから、マンガの仕事の量や幅を広げたいなという思いも募ってきて。このままSEの仕事を続けながらという状態では職場にも迷惑がかかるだろうし、マンガのほうにもあまり時間がとれない。それで最終的にマンガの仕事を選びました。
──あこがれのマンガ家、影響を受けたマンガ、好きなマンガ、マンガの世界に入るきっかけになったマンガといえば?
よしたに いちばん直接的に影響を受けたマンガ家さんといえば、桜玉吉先生。桜玉吉先生が描いていた日記マンガの『しあわせのかたち』ですね。
──おー、ファミ通世代ですね。
よしたに そのあと、桜玉吉先生の作品を全部追っかけていて、思春期のころに『しあわせのかたち』を読んでいて楽しと思っていたんですが、そのあと『しあわせのそねみ』に変わって、「こんなマンガもあるんだ!」と、あれは衝撃的でしたね。トーンが週によって全然ちがってたりして。あと、ある週だけたまたま異質だったのか、「色をぬってくれる“チョリソのぶ”さんが、色を塗るのがイヤで逃げた」なんていうエピソードが描いてあって(笑)。
──桜玉吉先生の日記マンガが、よしたにマンガ原点ですか。
よしたに そういう日常もののマンガに触れたのは玉吉先生の作品が初めてで、すごく好きになって、それをまねて4コマとかの日記マンガを学生時代にサークルの雑記帳とかに描いていたんですよねー。それがいちばん最初ですかね、自分で描いたマンガの。
●桜玉吉先生からひとこと
「あー。何か若い作家さんで数人、“桜玉吉”の名前を挙げてくれる人がいるみたいですね。一応ネットでマンガを見てみたりしたけど、みなさん、才気あふれるいい感じの作風でありがたい限り。僕がここまで無理ぐりやってきたことも、とりあえず無駄じゃなかったんだなあと、もう完全にじじいの心境です」
『理系の人々』の作画は完全デジタル
──マンガに描くネタは、ふだんからメモっているんですか?
よしたに 『理系の人々』の場合はそうですね。いつ何が起きても大丈夫なように、iPhoneのホーム画面に『Remember The Milk 』を置いてて、何かあったらメモってます。そして「描くぞ!」というときそこからネタをピックアップして。でも、どうしてもネタがないってときがあって、そんなときはiPhoneとヘッドフォンをお供に1時間ぐらいウォーキングに出て、ネタを考えることだけに集中して、なんとか絞り出してます(苦笑)。
──マンガの作画は完全にデジタル?
よしたに そうですね。モバイル用のノートPCと自宅のデスクトップPCの2台体制で、ノートは『レッツノート』、デスクトップは3年ほど前の『マウスコンピューター』を使っています。
──下描きやペン入れは?
よしたに ワコムの液晶ペンタブレット『Cintiq 21UX』で下書きから仕上げまで全部。紙はほとんど使っていないです。
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15,271円
──ウェブサイトに描き始めたことからデジタル制作ですか?
よしたに 今でこそ『コミックスタジオ』というソフトを使っていますが、初めてマンガを描いていたころは、コミスタのようなマンガ原稿用のソフトがなくて、『フォトショップエレメンツ』か『ペインター』か、窓の杜からフリーのペイントソフトを落としてきて描くか……みたいなレベルでしたね。ただ、フォトショップを使うといっても、使う機能といえば“ペンツール”と“ラインツール”、それと“バケツツール”くらいですね(笑)、あとテキスト入力かな。
とはいえ、ペイントソフトでは下描きの鉛筆っぽい線がうまく出せなかったので、下絵は紙に描いてスキャンして、仕上げはPC上で──最初の1~2年はそんな作業行程でした。今なら『SAI』といった低価格なソフトがありますけど、かつてはソフト代にウン万円とか、かかってました。
そのあと完全にデジタルへ移行したのはマンガを書き始めて2~3年後くらいかな。『コミックスタジオ』が発売されはじめたころだと思います。
SEが漫画家になったら──トラブル&スケジュール |
『理系の人々4』より。 |
(C)Yoshitani |
──『理系の人々4』の作中で、外出先で作業されているようすが描かれていますが。
よしたに 外出先でプロットからネームまでやらなきゃいけないときは、ワコムのペンタブレット『Bamboo』を使ってササッと描いて、『レッツノート』で送ってます。
よしたにさんのお出かけキット |
よしたにさんが外出時に持ち出すアイテム。デジタルアイテムについては右から、ノートPCはパナソニック『レッツノートSX』、ペンタブレットはワコム『Bamboo』、あと『ニンテンドー3DS』(これは遊び用)、通信は『iPhone 5s』で。外出時は、これらでちょっとしたマンガの作業をこなしているとのこと。 |
よしたに(『理系の人々』著者)──元システムエンジニア、現在漫画家。1978年生まれのおひつじ座。長野県出身、東京の下町在住。 好きな野菜はナス。『ぼく、オタリーマン。』、『理系の人々』(KADOKAWA中経出版)、『ぼくの体はツーアウト』(集英社)などのコミックエッセーシリーズは累計200万部を突破。現在『グランドジャンプ』(集英社)で『ぼくの体はツーアウト』、『ガンダムエース』(KADOKAWA)で『ガンダム系の人々』、リクナビNEXT『Tech総研』(リクルート)で『理系の人々』、朝日新聞・全国版月曜夕刊で『よしたにのへぇぇ』を好評連載中。 |
『理系の人々4』絶賛発売中!
よしたに著『理系の人々4』(中経出版、952円+税) |
関連サイト
●よしたに公式ブログ 大宇宙ひとりぼっち
●中経出版
●リクナビ Tech総研 SE兼マンガ家よしたにの「理系の人々」
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