誰でも楽しめるメディア芸術の祭典
国内最高峰のメディア芸術を無料で一気に体験できる展覧会として、すでに恒例となった感のある「文化庁メディア芸術祭 受賞作品展」。東京・六本木の国立新美術館を舞台に、今年は2月5日〜16日まで、平成25年度の受賞作品が展示される。
「芸術祭」といっても堅苦しい雰囲気は一切なく、老若男女を問わず楽しめる内容だ。来場者数も年々増えており、会場は熱気に満ちている。ここでは同展覧会の楽しみ方を、注目作品とともに紹介しよう。
第17回の注目作品群
そもそも「文化庁メディア芸術祭」とは何か? といった疑問が湧く人もいるだろう。しかし、そうした説明は後回しにして、まずは今回の注目作品群を見ていこう。論より証拠だ。
ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険 Part8 |
荒木 飛呂彦 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/SHUEISHA |
いまや世界共通語となった「マンガ」。文化庁メディア芸術祭には、アート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門と並び、マンガ部門も設けられている。そのマンガ部門で今回大賞を獲ったのが、荒木飛呂彦氏の「ジョジョリオン-ジョジョの奇妙な冒険 Part8」だ。そう、いまや我らが「ジョジョ」がメディア芸術作品として讃えられる時代なのだ。
龍が如く5 夢、叶えし者/ボケて(bokete) |
龍が如く5●名越稔洋 (C)SEGA ボケて●鎌田武俊/和田裕介/平山 剛/イセ オサム/新甚智志 (C)2013 Omoroki.Inc, All Rights Reserved. |
こんな作品が並んで展示されるのも、メディア芸術祭ならでは。左は、画像にセリフを付けて笑いのセンスを競うウェブサイト「ボケて」、右はセガのアクションアドベンチャーゲーム「龍が如く5」。いずれもエンターテインメント部門での入選だ。
Sound of Honda / Ayrton Senna 1989 |
菅野 薫/保持壮太郎/大来 優/キリーロバ・ナージャ/米澤香子/関根光才/澤井妙治/真鍋大度 (C) Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. |
同じくエンターテインメント部門で大賞を獲得したのは、本田技研工業のカーナビシステムのプロモーションのために制作された複合メディア作品「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」。1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した、世界最速ラップの走行データを基に、セナの走りを音と光で蘇らせた作品。と言われてもピンと来ない人は、公式サイトのムービーをまず見てみよう。きっと胸がざわつくはずだ。
プラモデルによる空想具現化 |
池内啓人 (C) 2013 IKEUCHI Hiroto |
こちらはギークな人が好きそうな、池内啓人氏の「プラモデルによる空想具現化」。エンターテインメント部門の優秀賞を得た作品だ。プラモデルを用いてパソコンや周辺機器を改造し、緻密で壮大なジオラマを作り上げている。単眼鏡でのぞき込むと、その細部の作り込みに驚くだろう。
河野通就/星 貴之/筧 康明
先端テクノロジーのプレゼンテーションのために作られた「lapillus bug」は、一見無意味でありながら、妙に心惹かれる作品だ。朝食のプレート上を舞う黒い粒子(バグ)は、超音波によって空中浮揚し、動きを制御される。
はちみつ色のユン |
ユン/ローラン・ボアロー (C)Mosaïque Films - Artémis Productions - Panda Média - Nadasdy Film - France 3 Cinéma – 2012 |
こちらは、アニメーション部門で大賞を獲った「はちみつ色のユン」。韓国系ベルギー人のユン氏が自身の半生を描いたマンガを元に、ドキュメンタリー映画監督のローラン・ボアロー氏とユン氏が共同監督した作品だ。
crt mgn |
(C)2013 Carsten Nicolai. All rights reserved. |
アート部門で大賞を獲ったのは、ドイツの作家、カールステン・ニコライ氏の「crt mgn」。普段は目に見えない「電磁波」を音響的・視覚的に感じられるようにしたインスタレーションだ。どういうことなのか、ぜひ会場で体験してほしい。
Dronestagram |
(C) James Bridle |
この「Dronestagram」は、ソーシャルメディアを用いた社会派の作品。無人航空機(ドローン)に攻撃された地域の風景を、報道記事やSNS、地図データを通じて明らかにするプロジェクトだ。
そもそも文化庁メディア芸術祭ってなに?
「メディア芸術」とは、文化芸術振興基本法という、文化や芸術を国として盛り上げようという法律に示された、芸術の一分野を指す。メディアアートのような美術のほか、マンガやアニメーション、ゲームやウェブなどのインタラクティブまで、メディアを用いた表現全体を包括した、我々がふだん文化として親しんでいる、日本ならではの芸術分野のことだ。
そして文化庁メディア芸術祭は、このメディア芸術の振興のために毎年開催されている国際的なコンテスト。日本のみならず世界から応募や推薦された作品を審査し、その年の最高峰を表彰している。今年度は、世界84カ国・地域から4347作品もの応募があった。その優秀作が、この展覧会に集結しているわけだ。
今年の展示の特徴は、作品群がひとつの大きな空間にフラットなかたちで展示されていることにある。これまで、それぞれの部門ごとに大小さまざまな区画に分けて展開されていた数々の作品が、一気に見渡せるようになっている。
展覧会場の入り口に立ち、メディア芸術をめぐる多種多様な表現を一気に見渡す瞬間は、一気にテンションが上がる。このような通常の美術展にはない手法を採用したのは、例年非常に混雑する展覧会を、少しでも余裕をもって鑑賞してもらえるようにする配慮から。それに加え、「メディア芸術がアートだけでもない、マンガやアニメだけでもない、それぞれが文化や表現で深く結びついた存在であることを感じてもらえるような展示」として構成したとのこと(文化庁メディア芸術祭事務局を率いる脇本厚司氏)。
この会場に「順路」はない。このメディア芸術空間の作品を、興味が赴くままに触れてみるのはいかがだろうか?
第17回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
■会期 2014年2月5日(水)~2月16日(日)
■会場 国立新美術館(※2月12日休館)ほか
■時間 10:00 ~ 18:00(金曜は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで
■入場料 無料
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