『装甲騎兵ボトムズ』のハンドメイド腕時計(過去記事)で数多くのファンをむせさせたJHAが、3月1日に『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のコラボ腕時計を発売した。『王立~』といえば、ガイナックスが設立後初めて世に送り出した記念碑的作品。ロケット発射シーンを始めとする高クオリティーな作画から制作にまつわる逸話まで、語れる要素は数知れない。
そんな同作の人気を象徴するかのように、劇場公開から27年が経ったいま、『王立宇宙軍時計 オネアミスモデル』が発売された。公開当時の盛り上がりを知る古参ファンはもちろん、新規ファンにとっても注目すべき現在進行形のトピックと言えそうだ。以下に週アスPLUSの独占取材記事をお送りするので、ぜひチェックしてほしい。
これが『王立宇宙軍時計』だ!!
鈍く輝く真鍮のボディーに、赤青ツートンカラーのバンド。そして、文字盤のオネアミス数字を見ることで「王立コラボモデル」だと確信する。赤青のカラーリングは、作中で主人公のシロツグが着用した宇宙軍の正装をイメージしたものだ。なるほど、見れば見るほどすごく……王立です……。
またまたJHAの工房にチン入したでGOZARU
詳しい話を聞くため、吉祥寺にあるJHAの工房を再び訪問。ショップをのぞいてみると『カオスだもんね!PLUS』(週刊アスキー10/1号掲載)の取材時に話題にあがっていた、『エルゴプラクシー』の腕時計(左)もあった。
ショップ内で代表取締役兼職人の篠原氏を発見。今回のコラボ腕時計も、同氏の強い要望により製品化にこぎつけたのだという。作中で腕時計がクローズアップされたシーンは皆無のはずだが、どのようにデザインしたのだろうか?そして、これほどまでに製作意欲をかき立てられた理由は何なのだろうか?たっぷりとインタビューした。
王立腕時計は“好きなアニメの啓蒙活動”
横江jpeg(以下J):まず、製作の経緯をきかせてください。『王立』は根強いファンをもつ作品ではありますが、関連グッズとなるとそれほど見かけたことがありません。商売とするには悩ましいところだと思うのですが。
篠原氏:私がただ好きだからやるのであって、人気があるかどうかは関係ないですね。『王立宇宙軍』はあの時代(1987年公開)ということを抜きにしても非常に質が高い作品だと思いますし、メカに関してもロケットや戦闘機、計器類など時計づくりのモチーフになるものがいろいろ出てきます。しかもそれがファンタジックなのがいい。あと、この作品には若い人たちと老人たちがふれあう描写があるでしょう?
J:シロツグたちが、老博士たちと一緒になってロケットを作るシーンですね。
篠原氏:そう、異なる世代のキャラクターたちが混ざり合うのも好きなところです。私は、多様な世代の人たちが協力したり反目したりすることで、街や組織に活力が生まれると思っているんです。ひとつの世代だけだと、うまくいかない。これはいつの時代でも不変なんじゃないでしょうか。
J:なるほど。作品と篠原さんの理念が合致しているんですね。その思いが腕時計づくりに影響するようなことはありますか?
篠原氏:好きなアニメの時計を作ることで、それを知った人が(腕時計をきっかけとして)作品も観てくれれば、とても嬉しい。特に、まだ『王立』という作品を知らない若い人たちに観てほしいです。これって、多少なりとも啓蒙活動をしていることになるんですかね(笑)
↑ここでチョイとブレイク。これは、ガイナックス社内で行なわれた打ち合わせの現場を潜入撮したもの(呼ばれてないから)。打ち合わせは複数回行なわれたが、製作進行や契約などおカタい話をしているうちに、内容がアニメ業界よもやま話にそれることもしばしば。っていうかトークの比率はそっちのほうが多めでした。 |
↑オネアミス文字などのディティールは、当時の設定資料をひも解きながら忠実に再現された。創作物のグッズなのに“忠実に”とはいささか奇妙な気もするが、「ファンタジーの中にリアルがある」という信念をもつ篠原氏には当たり前の作業。テーブル上には、同氏が走り描きした王立腕時計のラフスケッチも見える。 |
あえて使い勝手を悪くする
J:今回の腕時計は『王立宇宙軍時計』という名称ですが、デザインはどのように着想したんですか?
篠原氏:オネアミス王国が宇宙軍の士官に支給した腕時計、というイメージですね。シロツグがつけていてもおかしくないような。“王立”宇宙軍というくらいですから、誇り高さや権威のようなものを匂わす要素も取り入れています。
J:横から見ると、本体部分に傾斜がかかっているのが特徴的ですね。
篠原氏:見やすいように文字盤が持ち上がるようなデザインにしましたが、服に引っかかるかもしれないし、使い勝手はたぶん良くないです。でも、昔のモノってそういうムダが意外と多いんですよ。そのムダが、魅力になる。使い勝手を考えると軽くて薄いほうがいいけれど、あえてズッシリ重くしたほうが存在感が出る。お客さんが欲しがるのは果たしてどちらだろうか……ということですね。
JHA作品に命を吹き込む“古美(ふるび)加工”とは?
王立腕時計のパーツ一式をずらりと並べてもらったところ、真鍮パーツのシャイニー感が半端ない。完成品に見られるあのくすんだ色合いは、いったいどのように出すのだろうか?篠原氏に尋ねたところ、それは古美(ふるび)加工なる技法を用いるのだという。こいつぁ気になるぜ、てなわけで「俺達って、もうそういう関係だよね?」くらいのトーンで図々しく実践してもらいました。とくとご覧あれ。
↑真鍮のパーツを、黒染め液に丸ごと沈める。金属加工用語でいうところの“黒色ニッケルめっき浴”の工程だ。 |
↑金ピカだった真鍮が、1分も経たないうちに真っ黒になった。気泡が付いた部分だけ変色せず、元の色が残る。 |
↑そして、手作業で研磨する。磨き方によって金属に微妙な個性が出てくるので、ひとつとして同じ仕上がりにはならない。手作りならではの妙味だ。 |
1日あたりの生産可能本数は、ボトムズ腕時計と同様に5~10本とのこと。あいかわらずクオリティー重視です。そしてお値段は、儲ける気があるのか不安になる1万8500円でおま。買う気マンマンでオネアミス通貨(あの棒のやつ)を握りしめている諸兄にとっては、商品到着まで待ち遠しい日々が続くことになるやも知れぬ。ここは、シロツグよろしく“ハリボテソング”でも口ずさんで待とう。詳細は下記オンラインストアにてチェック!
(c)BANDAI VISUAL/GAINAX
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