2014年1月初旬、ラスベガスで行なわれた世界最大の国際家電ショウ、CES2014。その晴れ舞台で発表され、世界の注目を集めたソニーの新4Kハンディカム『FDR-AX100』について、CES会場でインタビュー。帰国後も品川のソニー本社にて、開発者の方にお話をおうかがいしたので併せてご紹介したい。
↑CES会場にてお話をうかがった、中山茂彦さん=ソニー(株)DI事業本部商品企画部門(写真右)と、河崎麻衣さん=ソニー(株)DI事業本部マーケティング部門(写真左)。 |
――ニュージーランドで行なわれたPVの撮影は順調にいきましたか?
河崎さん「はい、ニュージーランドの広大な自然をFDR-AX100の広角レンズでしっかり捉えることができました。湖の微妙な色など、そのままの変わらない美しさで残すことができ、帰国してから見ても感動しました。遠くの建物も高精細に描写され、とても明瞭に確認することができます。FDR-AX100はハイエンドコンパクトデジタルカメラのRX10と同様の1.0型イメージセンサーを搭載し、暗部のノイズが出にくいのが長所なので、PVではその特徴を生かしたシーンを撮ろうと狙っていたのですが、ニュージーランドは日が長くてなかなか暗くならないので、スタッフ一同ずっと夕暮れを待っていました(笑)」
――FDR-AX100はそもそもどのようなカメラとして企画されたのですか?
中山さん「昨年発売されたFDR-AX1(関連記事)よりもずっと小さく、片手で持てる、まさに“ハンディカム”といえる4Kカムコーダーとして企画しました。最大の特徴としてカムコーダーの中でも大きな1.0型のイメージセンサーを使用していますので、ZEISSバリオゾナーの効果と相まって、美しいボケ味を作り出せます。また、感度が極めて良く、低ノイズです。高精細で没入感のある映像が、家族旅行など身近な場面でも撮影できるコンシューマーに向けたビデオカメラです」
――AX1の登場からわずか4ヵ月でAX100が発表されましたが、大きさ以外で両機の違いを教えてください。
河崎さん「AX100も豊富なマニュアル操作が可能で、撮りたいシーンに合わせてアイリス、ゲイン、シャッター、ホワイトバランス、ズーム、フォーカス、内蔵NDフィルターとさまざまな設定ができますが、AX1はさらに細かい設定ができます。また、AX1は4K/60pの撮影ができますので、動きの速い被写体の撮影にも向いていると思います。さらにAX1は4K150Mbpsのハイビットレート撮影が可能なため、水しぶきや大勢が動くシーンなどの細かい動きを再現したい場面でも解像度の高い映像を撮影できます」
――4Kの視聴環境は普及途上にありますが、この点はどうお考えですか?
河崎さん「4Kテレビをお持ちでない場合でもフルHDテレビで、フルHDに変換した映像を観ることができます。4Kで撮影した場合、フルHDカメラで撮影した映像よりもきれいにフルHDで再生できるのも利点です。そのため、思い出は4Kでキレイに残しておきながら、お手持ちのフルHDテレビでお楽しみいただけます」
――撮影後のソリューションですが、どのような用意がありますか?
中山さん「4K動画編集に対応したソフトの無償ダウンロードキャンペーンを用意しています。また、ポストシューティングソリューションを考えると、その他の幅広い選択肢もユーザーの皆さまに示せればと思っています」
↑ソニー本社にてお話をうかがった、神澤貴雄さん=ソニー(株)DI事業本部商品設計部門(写真右)と、鈴木康介さん=ソニー(株)DI事業本部 商品企画部門(写真左)。 |
――FDR-AX100には4K記録を行なうために画像処理エンジンに加えて別のチップを搭載しているということですが?
神澤さん「基本は兄弟機のHDR-CX900(最大フルHD記録)と同様、画像処理エンジン“BIONZ X”を使っていますが、FDR-AX100ではエンコードとデコードなど4Kの最終処理を別のICチップで行なっています。フルHDまでならBIONZ Xで最終処理までできるのですが、4Kとなると別のICチップでサポートする必要がありました。これは上位機種のFDR-AX1や業務用PXW-Z100で採用しているものと同じチップです」
――小型化する上で、どのような工夫がなされていますか?
神澤さん「もともと4K画質の体験をより多くのお客様に届けたいというコンセプトがあったので、4Kの高画質をキープしながら小型化することが命題でした。また、お客様が実際に手に持って使う商品ですので、4Kを記録しながら低発熱(=消費電力が小さい)にするため、業務用ハンディカムコーダーで搭載している画像処理エンジンではなく、省電力なBIONZ Xを採用しました」
――FDR-AX1とPXW-Z100では記録メディアにXQDメモリーカードが採用されていましたが、FDR-AX100ではSDXCカードを選択した理由を教えてください。
神澤さん「イチバン大きな理由は、SDXCカードのほうがXQDよりも入手性の高いメディアであるということです。ただし、4K記録はある程度高速な書き込み速度が必要なので、撮影フォーマットをXAVC Sに選択している時は、SDXCのClass10を推奨します」
――4K動画記録時にFDR-AX1とPXW-Z100ではフレームレートが60pとなっていますが、FDR-AX100では30pなのはなぜでしょう?
神澤さん「記録メディアの入手性や書き込み速度、小型化と、4Kの美しさを感じていただける仕様のバランスを総合的に判断しました。SDXCカードの書き込み速度はXQDよりも遅いので4K撮影に支障のないビットレートとなると60Mbpsになります。XAVC Sの4K記録で60Mbpsとなると、おのずとフレームレートも30pになります」
――4K動画編集ソフトが無償でダウンロードできるそうですが、滑らかにプレビューを行ないながら編集できるPCのスペックはどれくらいでしょう?
鈴木さん「コアi5やi7で、クアッドコアを推奨します」
――ところで、FDR-AX100にもNFCが搭載されていますね。
鈴木さん「はい、スマホなどのモバイル機器からリモートコントロールしたり、4Kと同時記録できる720pのMP4をシェア用に転送できます」
――ユーザーにはどんな風に使ってほしいと考えていますか?
神澤さん「風景や髪の毛の質感など、静的でも精細感が味わえるものを撮って、まずは4Kの美しさを感じていただきたいなと。また、任意の場所をフルHDで切り出して再生するトリミング再生機能もあるので、とりあえず引きの画を撮ったあとで拡大再生といった新しい使い方もオススメです。4Kで撮っていただいた映像は、ご自宅にあるフルHDのテレビで再生しても違いがわかるほど高精細です。4Kテレビをお持ちでない方にもぜひそれを知っていただきたいです」
――今後の4Kの展開をどのように考えていますか?
鈴木さん「私自身、実際にこのカメラで撮った映像を見て、SD画質とHD画質の違いに驚いた時のように感動しました。これはまず観ていただかないとわからない感動なので、その機会を増やすことが大事だと思ってます」
神澤さん「低価格な4K液晶が増え、YouTubeにも4Kの動画が増えています。とにかく多くの人にまずは観ていただいて、感動してもらいたいです」
さて、いかがでしたでしょうか?FDR-AX100は4K/30pで映像が撮れる普及モデルです。22万円とこれまでの4Kカムコーダーの常識を覆すほど低価格。このほかにも今年のソニー製品は超アグレッシブに展開します。そのあたりを1月21日発売の週刊アスキー2/4号で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
■関連サイト
ソニー製品サイト
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