ソニーモバイルがCES2014で発表したもう1つの大きなことは『Xperia Z1 compact』および『Z1S』という北米での端末展開だ。
既報の通り、日本でいう『Xperia Z1f』がベースになっており、外観も基本的に同じ。プレスカンファレンスでは、北米市場に向けて「Z1と同じ機能をそのまま小さく詰め込んだ」と紹介された。
(スマートウェア『Core』について訊いた前編はコチラからどうぞ)
黒住吉郎氏
ソニーモバイルコミュニケーションズ
UXデザイン&企画部門
UX商品企画部
Vice President, Creative Director
●フラッグシップ級性能だろうと“小さいなら安く”を求められるグローバル市場
Xperia Z1 compact。外観は日本仕様と同じ。現時点では純正カメラアプリに一眼デジカメのような“背景ボカし機能”が追加されているのが国内仕様と異なる点。ただし、同アプリは後日日本版でもダウンロード配信される予定。 |
本来は「フラッグシップの機能を詰め込んでも、小さい端末はグローバルとしては難しい領域。基本的には小さかったら安くなければならない」(黒住氏)。
つまり、ユーザーに小さくてもプレミアムな価格を納得してもらえるブランディングをする必要がある。これは、どのAndroid端末メーカーもできていないことだ。
黒住氏はZシリーズの特徴を「一言でいえば、プレミアムな良いデザインで、しかも防水、絶対的に強いカメラ」と表現する。Z1でこの要素を高いレベルで実現できたのを踏まえ、これをそのまま小さくしてみようとチャレンジしたのがZ1 compactということになる。
とはいえ、ただのスペック向上・凝縮化を追求するのが同社の狙いではないという。
「年々スマートフォンの(画面)サイズは拡大し続けています。一方でそれがユーザーとの距離を広げたり、選択肢の幅を狭めている原因にもなってしまっています。その距離を縮める意味で、このサイズ感がいいと。(中略)Z1をギュッと凝縮してるけど全部入りなのがZ1 compactなんですね、と言われると“そうです”とは言ってしまうんですが、それだけではなくて、裏の意味としてはユーザーの選択肢(の幅)を広げるという想いが、Z1 compactには込められています」(同)
●『Xperia Z1S』の仕様が国内版と変わった理由
T-MobileエクスクルーシブモデルとなるZ1S。国内仕様のZ1とはイヤホンジャックや側面端子の配置が変わっているほか、実はZ1の特徴だった外周のメタル素材もプラスチックに改められている。その理由は、アメリカ固有の事情によるものだ。 |
もう1つの大きな発表は、T-Mobileの限定端末となる『Xperia Z1S』だ。
「ソニーモバイルはこれまで、正直なところアメリカでのビジビリティ(存在感)があまりありませんでした。ただ、昨年からZをT-Mobileで発売した結果、それなりの数字が上がって来ています。もちろん、1オペレーターで1モデルしかないので、(日本国内レベルの)知名度や認知度ではありませんが、T-Mobileとは中長期的な視点をもった戦略としてやっていこうという関係のもと、Z1Sを出すことになりました」(同)
既報のとおり、Z1SはZ1ベースではあるものの、Z1とは細かな部分が異なっている。この点については、T-Mobileのネットワークとアメリカの仕様にあわせた変更をしているという。
具体的には、以下のポイントを“アメリカ仕様”として盛り込んだ。
・電波感度の一層の向上
・重量をより軽くする
・アメリカ人好みの持ち心地になるように
この結果、日本仕様とは微妙に違った、T-Mobileエクスクルーシブのカスタムを施すことになった。
日本仕様と異なる部分は
・外周部分を日本版はメタル素材にしているが、Z1Sでは樹脂素材に変更
・外周素材の一部をアンテナとして使っていたため、新たにアンテナを内蔵するよう設計変更
・それにより、ポート類の位置を変更
・メモリーのサイズを、北米で一般的な16GBではなく32GBに
ただし、黒住氏が強調したのは、外装をメタルから樹脂(プラスチック)へと変えたのはコストの要因ではまったくない、ということだ。
手前が国内仕様のZ1、奥がZ1S。側面のポートカバーの位置が微妙にズレているほか、上部のイヤホンジャックの場所もセンター付近に変わっていることがわかる。 |
「おもしろいことにアメリカの方って、持ったときの手触りを(Z1Sの形状でいうと)メタル系よりもプラスチックのほうが好きなんですね。これは予想していたのとは違ったことでした。綿密なユーザーテストをしてみると、そのことが明確に出て来ました」
インタビュー後半の質疑応答のやりとりを以下のとおり。
Q.外観のポート位置の変更をした理由はなんでしょう?
「単純に言うと、アンテナの関係です。Z1ではメタルの外周部分に一部アンテナの機能を入れてます。素材をプラにしたことによってアンテナの機能が持たせられなくなるので、一般的な内蔵アンテナを採用しました。
このために従来のポート位置だと干渉が起こることになるので、変更することになりました。」
Q.過去にも北米向けに素材変更をしたことがありましたが、そのあたりの事情は同じでしょうか?
「アメリカはバンド数が多いんですね。加えてアメリカは(日本に比べて)ネットワークの環境があまりよくない。日本のような人口密集型ではないので、郊外に行くと極端にネットワークの環境が悪くなるというのが、アメリカでは普通です。ただ、それに対してオペレーター(キャリア)側からは少しでも圏外にならないようにという要望があるし、我々としてもそれに応えたいという想いがあります。そうすると、グローバルで同じようなRFの感度でやろうとすると、無理がある——というのが現実的なところです」
Q.T-Mobileで廉価なモデルを投入していくという意図で素材をメタルからプラスチックに変更したのでしょうか?
「そういう意図はありません。我々としては商品価値や価格を下げる意味でプラスチックを採用したわけではありません。先ほども申し上げたように、北米市場ではプラスチックのほうが好ましいというほどなんです。そこはアメリカのユーザーさんは面白いなと思いました。
廉価というと言葉として難しいのですが、たとえば、仮想で200ドルというゾーンがあったとします。我々としては、そのレンジの中でも上のほうプレミアムな位置をとっていきたい。
もちろん、プレミアムというのはそれに見合った商品価値がないといけません。それは、カメラであったり、サービスであったり、今回発表させていただいたスマートウェアとの関係であったりという部分だと考えています。
T-Mobileからソニーへの期待も同様です。他社がやっているような価格の低いレンジで勝負していくという期待はもたれていませんし、我々もそこをやっていくつもりはありません。
プレミアムのゾーンというのは難しい領域です。300ドルとか200ドルだとかの(複数の)ゾーンがありますし、弊社でいうとZ1とZ1fでもゾーンが違います。いまは(いわゆる)上の上のゾーンをやっていますが、今後、下のゾーンに入って行くかは、動向を見ながら判断していきたい。」
Q.プレスカンファレンスで平井社長が「北米をしっかりやっていく」という発言をされましたが、それを踏まえて“T-Mobileでいい”んでしょうか?
「歴史的にいうと、AT&T(Cingular)ともやっていて、いまでも一部商品は販売されてます。また過去にはVerizonでも『Xperia Play』をやっていました。アクセサリーやコンパニオン的なものもやってます。
そういう意味では、機会があればどのオペレーターさんとでもやっていきたいという意思はあります。今の段階でいえば、これ(Z1S)はT-Mobileさん向けの商品です。
今後で考えると様子を見ながらちゃんと考えていきたいと思っています。そういう意味では日本と同じですよね。」
Q.中国も同様なんでしょうか。大きな市場なだけに同時に展開するのでしょうか?
「中国も同時にやっていくつもりです。もしかすると、パートナーシップという意味では、中国のほうが進んでいる部分もあるかもしれません。
なぜかというと、昨年『Xperia SP』というモデルをチャイナモバイル向けに出しました。チャイナモバイルは独特のLTEを展開しているので、それに合わせた仕様になっています。
中国市場という意味では、過去にはチャイナテレコムだったり、チャイナユニコムでもやらせていただいていたし、あるいはディストリビューターさん経由の展開もありました。市場でのビジビリティという意味では、アメリカよりも中国のほうが進んでいる部分はあります。
ただし、ご存知のように(中国市場は)とらまえにくいというか、難しい市場であることは確かです。展開の困難さという意味では、アメリカに負けず劣らず難しい市場ではあるのかなと。
ただアメリカと同じように、しっかりと訴求したい点をもっていけば、市場が広がる、というのは結果が出て来てますから、今後もしっかりやっていきたいと思っています」
Q.北米と同じように“ちょっといい”、というプレミアムを狙うポジションでしょうか?
「そのとおりです。逆にそこがなくなってしまうと、ソニーがスマートフォンをやっていくというのは難しいと思います。」
カンファレンス後のハンズオンの模様。高画質なカメラ機能、高品位なデザイン、手に収まるサイズ感など、CES2014に訪れたプレスの興味は高かった。 |
●関連リンク
SONY CES2014特設サイト
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