とあるところに、それはそれは奇妙にも光りを放つヒヨコがいました。
光るヒヨコはいつも、普通のヒヨコたちに光ることをバカにされ、いじめられていました。
「どうしてボクだけ光っているんだろう。きっとボクの居場所はどこか違うトコロにあるはずなんだ!」
光るヒヨコはある日、とうとう仲間のヒヨコたちのもとから飛び出しました。
「ボクの居場所を探さなきゃ。でもどうやって……」
そんなとき、光るヒヨコの目に飛び込んできたのは、1本のケーブル。
そのケーブルは、光るヒヨコのカラダと同じようにピカピカと光っているではないですか。
「ボクとそっくりだ。よし、このケーブルをたどってみよう」
光るヒヨコは、光るケーブルが続く道をたどっていくことにしました。光るケーブルはコネクタで繋がっていて、どこまでも長く長く伸びていました。
光るケーブルはまっすぐに伸びているわけではありませんでした。上下に曲がったり、
クネクネと左右に曲がったりしていました。
急に崖から下降し、
けわしい道へと続いていたり。
クネクネ。
ケーブルをたどっているうちに、光るひよこは光るケーブル色が1つだけではなく、何色にも輝いていることに気が付きました。
「3、4、5、6、7……8。すごいや、8色に輝いている! だからこんなにキレイなんだ」
と、うれしくなりました。
光るヒヨコは、たまに光るケーブルに話しかけました。
「ケーブルさん、ケーブルさんはどうしてピカピカに輝いているの? ケーブルさんは何者なの?」
「我々はな、USBケーブルといって、USBポートから力をもらって、輝いているのじゃよ」
「ふーん。ボクの居場所って、ケーブルさんをたどっていけばわかるかな」
「それはわからんな」
と、光るヒヨコの居場所については、何度訊いてみてもわからない、とだけ。光るヒヨコは質問するのを諦めて、行きつくまで光るケーブルをたどることにしました。
湿地帯を進んだり、
真っ暗な勾配を下ったり、
光るヒヨコはとうとうヘトヘトになって転んでしまいました。
「いつまで行ったら、ボクの居場所にたどりつくのかな?」
つい泣き出しそうになりました。だけど、力を振りしぼってもう少し歩いてみると……。
「あれはもしかして……」
光るヒヨコは光るケーブルがたくさん輝く、光の里を見つけました。
「ここがボクの居場所なのかな?」
と、光るヒヨコが確信を持てずにいると、とある1本のケーブルが目に留まりました。
それは、きらびやかな光の里のそばにいながらも、光っていないケーブルでした。
光るヒヨコは思わず話しかけました。
「光っていないケーブルさん、あなたはどうして光っていないの?」
光っていないケーブルは答えました。
「シクシク。私も本当は光るの。でもUSBポートに繋がってないから、光らないの。私だけ仲間外れ」
光るヒヨコは光らないケーブルをかわいそうに思いました。
「あのバッテリーのUSBポートに繋がれば光るんだよね」
光るヒヨコは言うが早いか、小さなクチバシで光っていないケーブルを持ち上げ、バッテリーの方へと運びはじめました。
うんせ……、こらせ……。
光るヒヨコは長い旅で疲れきっていて、1歩踏み出すごとにぜぇぜぇと息を切らしました。
「無理しなくていいのよ、光るヒヨコさん。私、ずっと仲間外れでもいいの」
と、光っていないケーブルは言いましたが、光るヒヨコは、
「ダメだよ。ケーブルさんは光っているのが本当の姿なんだから」
と、譲りません。
光るヒヨコは、とうとう光っていないケーブルをバッテリーところまで運びました。
「あとはUSBポートに、光っていないケーブルさんの端子を入れるだけ。それ……、ううう」
「がんばって! 光るヒヨコさん」
「ううう……、ケーブルさん、どうか8色に輝いてください。それっ!」
光るヒヨコが力を入れると、光っていないケーブルのUSB端子がUSBポートにガチっと接続されました。
その瞬間、今まで光っていなかったケーブルが、他のケーブルと同じように8色にキラキラと光を放ち始めました。
「うれしい、私、光っている!! これでみんなと一緒だわ。ヒヨコさん、ありがとう!」
光るヒヨコは、胸をなでおろすと同時に、自分のカラダがなぜか光っていないことに気が付きました。
「ああ、そうか。ボクはケーブルさんに光を与えるためにここまで来たんだ」
ヒヨコは光の里でゆっくりと瞳を閉じました。
そのカラダはもう光らないけれど、たくさんの光るケーブルが美しく8色に輝いて、ずっとずっとヒヨコを照らし続けましたとさ。
---おしまい---
この物語は週刊アスキー1/28増刊号(960号)付録の『マイクロUSBぴか~るケ~ブル』を使って創作しました(光るヒヨコは付きません)。気になった人はぜひ週刊アスキー1/28増刊号(960号)をチェックしてみてください!
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