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「会計の新しい流れをつくりたい」freee開発者インタビュー

2013年12月16日 15時00分更新

 経理の知識がなくても銀行やクレジットカード口座と直接連携し、帳簿作成や決算書作成まで、会社に必要な経理業務を安全なクラウド上で半自動的に行なえる、全自動クラウド会計サービス『freee』。
 2012年7月に立ち上げた日本のスタートアップ企業が、1年後の2013年7月、米DCMなどから2億7000万円の増資を得、リリース8ヵ月で約1万7000事業所が利用を開始するまでに急成長している。そのアイディアはどのように生まれたのか、代表取締役佐々木大輔氏にお話を伺った。

freee開発者インタビュー
↑freee代表取締役 佐々木大輔氏。2008年からGoogle のアジア地域における中小企業向けマーケティングを統括。その後、独立してfreeeを創業。

■みんなが悩んでいた会計の概念を変えよう

――freeeのアイディアはどこから生まれたのでしょう?

佐々木 経理の現場を見ていると、カード会社や銀行明細といったデータを紙で発行して、紙からまたデータに入力し直すという作業があります。でも、このデータってどこかのサーバーに元データがあるはずですよね。……これってエンジニアの目から見るとずいぶん無駄が多いなと感じたんです。特に専門の経理担当がいない小規模なスタートアップや個人事業主にとって、売掛管理や税金の計算ってめんどうな上に、簿記の知識が必要な経理業務を覚えながらやるとなると負担が大きい。
 これらをクラウド上で自動化すれば、もっとクリエイティブな作業に、人のリソースを割くことができるのではないか、いちばんクラウド化が遅いであろう会計周りの常識をここでひっくり返せば、ゲームが変わるんじゃないかと考えて、2012年の7月に創業しました。創業当初は私と共同創業者の横路の2人しかいなかったので、僕も自宅のリビングでバリバリコーディングしてましたね(笑)

freee開発者インタビュー
↑料金は月額980円の個人事業主プランと、月額1980円の法人プラン(各3ユーザー共有可能)を用意。3ヵ月間無料の試用プランもある。

――開発時に苦労した部分などはありましたか?

佐々木 開発ではそんなに苦労しなかったんですが、周囲の人の反応がことごとく否定的なものだったのには参りましたね。やはり従来の税理士さんや経理担当者は保守的な人が多くて。日本の、特に中小企業はクラウドに対する不安が大きいので「これだけ便利になる」といった部分が目に見えて伝わらないと、世界一安全なクラウドだと説明しても、きっと誰も使わない。そこで、ある時期から人の意見を聞くのを一切やめました(笑)。とりあえず完成させ、動いてるものを見てもらおう、と。

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↑銀行やクレカIDとPassを登録すると、自動的に会計帳簿を作成する。日本では企業のクラウドサービス利用率はまだまだ低く、米国での利用率が70.6%なのに対し、日本はわずか42.4%(全く検討していない企業が28%)と大きく遅れをとっている。(総務省「平成25年版 情報通信白書」より)

――ローンチ後の手ごたえはいかがでしたか?

佐々木 2013年の3月にローンチしたのですが、直後からSNSなどで話題になり、初日はサーバーが落ちてしまって、寝ずに作業して、急遽サーバーを増強することになったほどです。その後『インフィニティ・ベンチャーズ・サミット2013』というベンチャー企業のイベントで優勝し、500人の経営者の前でプレゼンできたのも大きかったですね。そこで一気にバズりましたから。

 現在は1万6000以上のユーザーによって、今までに70万以上の取引が登録されています。これは2万3000時間ぶんの作業を自動化したということになります。マルチブラウザーに対応していますので、Macでも会計ができる、というのも大きいです。

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↑ある程度自動で項目を振り分けるが、自分で指定も可能。次回以降は学習してくれる。
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↑個人なら青色申告、法人なら会計法に対応した決算書も作成する。
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↑請求書も発行・管理できる。売掛金として処理され、入金の有無も自動で把握できる。

――ユーザーデータの安全性が最も気になるところだと思いますが、そのへんはどのような施策を?

佐々木 サーバーはAmazonのAWS(Amazon Web Services)を利用しており、急なアクセス増に対応しうるスケーラビリティは確保しています。もちろん多重バックアップは行なっていますし、TRUTe(トラストイー)による認証を取得しています。通信はすべて暗号化されています。データはファイアーウォールで遮断された場所で厳重に保管され、侵入検知など、複数の安全診断を通っているため、安心して使っていただけます。

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↑主要銀行・クレジットカード会社のほか、AmazonやモバイルSuica、アプリのReceReco(レシレコ)とも連携。パスワードは256bit SSLで暗号化。

――サービスの販売・営業方法は?

佐々木 営業らしい営業はまったくしていません。ほとんどのお客様がTwitterやブログ経由で来てくれますね。ただ、パッケージ版の販売や書籍の出版など、オフラインでユーザーと接点を持つ努力はしています。サポートも外部に出すのではなく、社内でしっかりと対応しています。今後は電話よりも効率的で素早い、チャットを使ってサポートするつもりです。

――ご両親も個人事業者だとか?

佐々木 はい。その様子を間近で見ていたので自分も自然に起業という発想になった気もします。両親に『freee』を使ってもらうのも目標のひとつですね。

――今後の予定をお聞かせいただけますか?

佐々木 今年中にはe-Taxにも対応する予定です。また、来年度にはモバイルアプリの開発とか、勤怠管理を元にした給与計算機能を実装しようと思っています。アジアを中心とした海外進出ももちろん視野に入れていますよ。

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↑freeeのロゴが入った長Tを着用した佐々木氏。ロゴのツバメは“世界一速く飛ぶ鳥”で、会計を高速化するサービスにふさわしいと思い選んだそう。“e”の文字が3つなのは、創業時のメンバーが3人だったから。

このインタビューは12月24日・31日合併号(959号)特集『最先端スタートアップサービス6』に掲載したインタビューを加筆し、まとめたものです。

■関連サイト
全自動のクラウド型会計ソフトfreee (フリー)

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