週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

Windows情報局ななふぉ出張所

Surface Pro 2は縮小するPC市場の救世主か!?

2013年11月13日 17時00分更新

 第2世代Surfaceの発売から2週間が経過しました。そろそろ皆さんの周囲にも新しいSurfaceを手に入れた人が増えてきた時期かと思います。

Surface Pro 2
Surface Pro 2は縮小するPC市場の救世主か!?

 Surface Pro 2は価格.comのランキングでも上位に食い込むなど、着実に盛り上がりを見せています。その一方で、国内のPC市場は縮小傾向が続いているとの調査結果もあります。

 はたしてSurface Pro 2の登場は、PC市場においてどのような意味を持つのでしょうか。

■第2世代Surfaceが価格.comで上位にランクイン

 原稿執筆時点の11月12日現在、価格.comの“タブレットPC・PDA”カテゴリーの売れ筋ランキングを見ると、Surface 2の32GB版が2位、Surface Pro 2の128GB版が3位にランクインしています。

Surface Pro 2は縮小するPC市場の救世主か!?
↑第2世代Surfaceが売れ筋ランキングで上位に。

 ここ数日のランキング変動を見ている限りでは、細かな変動こそあれ、Surfaceが2~4位を占めています。また、8位には256GB版のSurface Pro 2もランクインしており、こちらも10位前後をうろうろしています。

 こういった売上ランキングでは、キャリア店舗やアップルストアでの販売が多いiPadが不利になる傾向があります。そのためSurfaceがiPadを上回ったと言えるかどうかは、微妙なところです。

 しかし小型Androidタブレットの代名詞的存在であるNexus 7よりも上位に来ていることから、第2世代のSurfaceシリーズがかなり売れていることは間違いありません。

■家庭向けPC市場は前年同期比で24.6%減少

 その一方で、PC市場全体は縮小の傾向が続いています。11月11日にIDC Japanが発表した国内クライアントPC市場の出荷台数は、前年同期比で1.7%の増加となり、6四半期ぶりにプラス成長となったことが話題となりました。しかしその内訳を見ると、企業向けが21.3%増加したのに対し、家庭向けは24.6%と大きく減少しています。

 IDC Japanが指摘するように、企業向けPCが伸びている背景として、主にWindows XPからの置き換え需要があるものと考えられます。この“特需”の効果により、全体として1.7%のプラス成長を実現したものの、PC市場のトレンドが縮小に向かっていることは、家庭向けPCの大幅減を見ても明らかです。

 Windows XPのサポート終了期限となる来年4月には、この特需も終わるものと思われます。このままPCの減少傾向が続いていくならば、PC市場には本格的な“冬の時代”が訪れることになるでしょう。

■性能とコストの両面で魅力を増したSurface Pro 2

 PC市場が縮小しているのとは対照的に、Surface Pro 2は売れています。その理由としては、前モデルから確実に向上した基本性能やバッテリー駆動時間に加えて、他社に比べて割安な価格を挙げることができます。

 価格について、Surface Pro 2のライバルとも言えるソニーの『VAIO Tap 11』と比較してみましょう。Core i5プロセッサー、4GBメモリー、128GB SSD、Windows 8.1 Pro、Office搭載という基本構成では、Surface Pro 2の9万9800円に対し、VAIO Tap 11は15万8800円となります。キーボードの有無を考慮しても、Surface Pro 2は単純計算で4万円以上安い計算になります。

Surface Pro 2は縮小するPC市場の救世主か!?
↑11月16日発売の『VAIO Tap 11』。Surface Pro 2と比べると割高に感じる。

 タブレットPCやノートPCなど、モバイルで利用するWindows PC全体を見渡しても、Surface Pro 2は最もお買い得なPCのひとつという印象を受けます。

■Surface Pro 2がPC市場の救世主に

 このように“破格”とも言えるSurface Pro 2の価格設定から気になるのは、OEMメーカーとの関係です。いかにソニーのブランド力があるとはいえ、数万円の価格差は厳しいはずです。

 これに対してマイクロソフトは、「決してOEMメーカーを潰そうという意図があるわけではない」と説明しています。むしろSurface Pro 2の価格設定は、PC市場によい刺激をもたらし、活性化につながると考えているようです。

 そのロジックは次のようなものです。現在は、PC市場の存在自体がスマートフォンやタブレットなど、PC以外のデバイスによって脅かされています。このように市場が縮小している場合、OEMメーカー各社が従来どおりの競争を行なっていたのでは“パイの奪い合い”となり、やがて共倒れとなります。どこかでパイ自体を拡大する必要があるわけです。

 縮小するPC市場のトレンドを逆転させ、上向かせるほどのエネルギーを得るには、従来のタブレットやPCの概念を根底から覆すほど、魅力的なデバイスが必要となります。そこでSurfaceシリーズの出番です。まずはSurface Pro 2を圧倒的に魅力的な価格に設定することで注目を集め、PC自体の魅力を高めるという作戦です。

 現在、一般ユーザーの多くは、タブレットとしてiPadやAndroidを思い浮かべる人がほとんどです。しかしタブレットとしても使える“2in1”など、新しい世代のPCが増えていけば、再びPCに目を向ける人も増えるはず。その橋渡し役でもあるSurface 2とSurface Pro 2は、タブレットとPCの境界線上に投入されています。

 もちろん、すべてのユーザーがSurfaceを購入するとは考えられません。Surface Pro 2と比較した結果、VAIO Tap 11を購入するユーザーや、超軽量のLaVie Zを選ぶユーザーがいても不思議はありません。そのきっかけとしてSurface Pro 2が機能することが重要なのであって、結果的にSurfaceが売れるのか、OEMメーカーのWindows PCが売れるのかは、このシナリオ上では重要ではないのです。

 これはマイクロソフトにとって“Surfaceが売れるか、またはWindows PCが売れる”という構図です。どちらに転んでもWindowsのエコシステムが拡大する“両取り”戦法というわけです。

■OEMメーカーはどこまでついてくるのか?

 このようなマイクロソフトの目論みが、どこまでうまくいくのかは疑問が残るところです。OEMメーカーとして、PC市場のパイを拡大することには賛成してくれるでしょう。しかしそのためにマイクロソフトのSurfaceシリーズが、売れ筋ランキングの上位を独占するような事態については、疑問の声も聞こえてきます。

 奇しくも台湾のエイサーは、2013年7~9月期決算として約440億円の赤字を発表し、前四半期に続く赤字によりCEOが辞任する事態に陥っています。その赤字の原因も、PC出荷台数が前年同期比で35%も減少するなど、PC市場の縮小が大きく影響したものと見られます。

Surface Pro 2は縮小するPC市場の救世主か!?
↑2013年末でCEOを辞任するエイサー会長のJ. T. Wang氏。

 Surface Pro 2の躍進により、マイクロソフトはPC業界で確実に存在感を高めていくものと思われます。マイクロソフトが主張するようなパイの拡大が起こらず、縮小するPC市場のシェアをマイクロソフトとOEMメーカーが奪い合うことになれば、事態はより深刻になっていくでしょう。

 SurfaceシリーズはPC市場にとって救世主となる可能性がある反面、意外とハイリスク・ハイリターンな要素を含んでいるようにも思います。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります