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「GALAXY Jの外観は日本向け、中身はグローバル」デザインチーム長が語る

2013年11月21日 16時00分更新

 サムスンとしては初となる、日本向けに特化してデザインされたスマホ『GALAXY J SC-02F』。この端末の開発には、韓国サムスン本社ではなく、日本法人であるサムスン電子ジャパンのデザインチームが深く関わり、携帯電話事業者と開発している。そこで、サムスン電子ジャパンのデザインチーム部長兼チーム長である林秀紀氏(以下、林氏)に、GALAXY Jのデザイン開発でこだわった部分や苦労した部分などを聞いてみた。

■日本では日本人のニーズにあった端末が不可欠

GALAXY J インタビュー

↑サムスン電子ジャパンのデザインチーム部長兼チーム長、林秀紀氏。GALAXY Jの本体デザインを担当した。

──まずはじめに、日本向けのオリジナル端末となるGALAXY Jを出されることになった経緯を教えてください。

林氏:多くの人々がスマホを使うようになり、スマホの進化の軸足がメーカーからお客様に移ってきている。私たちも日本のお客様が求めているものは何かということを突き詰めて考えたときに、デザインや使い勝手など日本人のニーズに合った製品が必要と考えて、GALAXY Jを開発しました。

──GALAXY Jはドコモとの共同開発ということですが、これはどちらから先にアプローチがあったのでしょうか。

林氏:これまでは、グローバルモデルをベースに、色を変えて日本で出すということが多かったのですが、それだけではなくて完全に新しいモデルを開発しようということになりました。グローバルモデルをベースに、おサイフケータイなど日本向けの機能を入れた場合でも違いはわかりますが、店頭でお客様が見て、すぐに違いがわかるような目に見える差は、やはり見た目、ルックスなんですね。

──韓国と日本で別れて開発するというのは、作業的に難しくはありませんでしたか?

林氏:普段からそのような体勢でやっておりますので、とくに違和感はありませんでした。強いてあげれば時間でしょうか。離れていますので、すぐに会って話ができません。電話やテレビ会議などを行なう必要がありますので。量産前の製品レベルでの協議やカラーのチェックなどは、韓国で行なっています。

──開発を進めるうえで、韓国本社と日本チームとのGALAXY Jに対する考え方の違いのようなものはありませんでしたか?

林氏:それはありました。初めての日本向け端末でデザインも大きく変えていますが、GALAXYというブランドのアイデンティティーもありますので、グローバルモデルの中にGALAXY Jのような製品が入ってきていいのか、ということはかなり議論しました。

──そういった中で、とくに苦労した部分はありましたか?

林氏:それは、GALAXY Jのデザインの価値を認めてもらうことですね。本社側は、GALAXYファミリーに合ったデザインを採用したい。そういった中で新しいものを取り入れるのはリスクがありますし。

──確かに、これまでのGALAXYシリーズとは全く違うデザインですから、戸惑いもあったと思います。それならば、GALAXYではない別のブランドで出すという手段もあったように思います。

林氏:それは、ドコモさんとの議論の中でありました。ただ、サムスンの商品で違うブランドを付けるというのも唐突感があります。お客様の間でも徐々にGALAXYのブランドを受け入れていただけてきている中で、やはりサムスンの製品として出す以上、GALAXYでなければいけないのではないか、と考えました。

──このところ、HTCやLGエレクトロニクスなど、海外のグローバルメーカーが日本向けに特化した製品を出していますが、そういった流れもGALAXY Jの開発を後押ししたということはありましたか。

林氏:それは、あまり意識はしませんでした。それとは関係なく、日本向け端末をやりたいという考えは以前からありましたし、デザインチームも日本に合ったものを出したいという意識が強かったです。

──GALAXYシリーズというと、ハイエンドというイメージが強いです。それに対し、GALAXY Jは、中身はGALAXY Note 3とほぼ同等で、ハイエンドそのものですが、デザイン的にはハイエンドではなく、方向性が全く違うように感じます。

林氏:そうですね。ドコモさんへの最終プレゼンでも「ハイエンドっぽくないね」と言われました。これは、ネガティブな意味ではなくて、今まではビジネスライクなデザインでしたが、カジュアルになって親しみやすくなった、という意味でした。我々が狙っているのもそこでした。従来のGALAXYのデザインは、30~40歳代のビジネスマンにはヒットしますが、20歳代の若者や女性に気に入ってもらうには、グローバルモデルと違うものをやりたい、やらないと意味がないということで始まりました。

──ターゲットとしているユーザー層は、ハイエンドも含めて、より幅広い層になるわけですね。

林氏:従来のGALAXYシリーズでカバーできなかった層を補完しつつ、GALAXYのユーザー層の幅を広げる、ということですね。

■シンプルながら時代を先取りするデザイン

──GALAXY Jは、日本に特化したデザインを採用している、ということですが、どのようにこのデザインに行き着いたのでしょう。

林氏:日本市場で、GALAXYシリーズがどのようなポジションにあって、日本人の感性やニーズに合っているか、というような製品のリサーチは常に行なっています。そうしたデータをもとに、外観のデザインやカラー、素材など、トータルで日本にあったデザインにこだわりました。

──このデザインを実現するうえで、とくに苦労した部分はどういったところでしょう。

林氏:これまでとは全く形状が違いますので、非常に苦労しました。まず、デザインランゲージを変えていますし、カラーや素材の選別もかなり苦労しました。素材については、今回は金属をあまり使いませんでした。従来のGALAXYシリーズでは、ハイエンドということで高級感を出す必要がありますので、側面にメタル素材を使っています。ただ、日本向けの製品では、このようなメタル素材の使い方はあまりしません。ですので、メタル素材を使わなくても受け入れられるだろうと考えて、素材の使い方を変えています。

──色は、とくに目をひきますね。これまでのGALAXYシリーズになかった色ですよね。

林氏:そうですね。これは日本のカラーデザイナーがすごく頑張ってくれました。せっかく日本向けのGALAXYを出すんだから、これまでのSシリーズのような渋い大人っぽいカラーではなくて、フレッシュでパッと目に付くものをやりたかったのです。色は20色以上検討してこの3色に決定しました。

 我々はカラートレンド調査もやっていまして、まずはサテンホワイトを決定しました。また、ビジネス向けではないということで黒は外しました。コーラルピンクに関しては、日本人は元来ピンクが好きで、携帯電話売り場にもピンクの端末は数多く並んでいます。ただ、同じピンクではなく、2014年のトレンドを先取りするようなフレッシュなピンクは何か、と言うことでわずかにオレンジがかったピンクを採用しました。ラピスブルーに関しては、これまでGALAXYシリーズにはなかった色ですし、競合他社にもこういうブルーはありませんでした。そして、白とピンクが先に決まり、それとのバランスも考えてブルーにしました。

GALAXY J インタビュー

↑カラーはラピスブルー、コーラルピンク、サテンホワイトの3色。目をひく色だが、2014年のトレンドも先取りしている。

──ドコモとのやりとりで苦労する場面などはありませんでしたか。

林氏:とくにありませんでした。ドコモさんの中にもデザイナーさんがいらっしゃいますが、デザイナー同士は気持ちが通じる部分があって、こちらの提案した内容も素直に聞いてもらえましたし、逆にいただいたアドバイスも反映しています。非常にいい関係で開発できたと思っています。

──本体の形状や色で、とくにこだわっている部分はどこでしょう。

林氏:形状では、複雑に見せないという部分ですね。線が少なかったり、変な模様が入ってない、穴が少ない、部品と部品の合わせ目がキレイに整っている、カメラなどのパーツの配列がキレイといったような、きちんと整ったデザインという部分に日本人はこだわりがあると思っています。仕方がないからこういうデザインになった、というのではなくて、きちんと整理整頓されてシンプルな魅力、というものを追求したかったのです。たとえば、Sシリーズでは側面に複数のラインをデザインしていたりしますが、GALAXY Jは側面にラインがなくて裏蓋の合わせ目が目立たないように配慮しています。これは、弁当箱にごはんと梅干しだけが入っている、というようなシンプルなイメージです。

 色については、長年やっていたカラー調査の中で日本人受けする色を採用したのですが、その中でも来年のトレンドを先取りするような色を採用しています。そこがこだわった部分ですね。

GALAXY J インタビュー

↑GALAXY Jでは側面に金属素材を使わず、凝ったデザインも極力省いてシンプルさを追求。裏蓋と本体との合わせ目も目立たないように配慮されている。

──ストラップホールが用意されているのも、GALAXYシリーズ初ですよね。

林氏:そうですね、サムスン製のスマホでは初です。日本市場ではスマホのストラップホールは絶対に必要ですが、グローバルモデルにはありません。形状も日本向けですし、絶対に必要でしょうということで押し切りました。

──本体デザインで意識した製品などはありましたか?

林氏:とくにありませんでした。良いデザインをつくろうという使命感を持って取り組みました。

■日本語入力や緊急時長持ちモードなどソフトも日本向けに追求

──本体デザイン以外で苦労した部分はありましたか?

林氏:とくに苦労したのは日本語に関する部分ですね。日本語入力に関する部分は地道に開発を続けてきまして、日本語入力の部分で消費者の心をつかむようなことをやりたいと考えて、“8フリック”という新しい入力システムを開発しました。リサーチを含めて1年以上かけて日本チームで開発しました。8フリックのシステムは、様々な日本語入力システムを試して、それぞれのメリットやデメリットを洗い出すことによって行き着きました。日本語と英語の切り替えが不要になりますので、慣れれば非常に速く入力できると思います。

GALAXY J インタビュー

↑GALAXY JとNote 3に搭載された“8フリック”。斜めにフリックすることで、日本語入力モードのままでも英数字を入力できる。

──日本語以外でソフト面で注力したのはどこでしょうか。

林氏:それは“緊急時長持ちモード”ですね。東日本大震災の時にも、使いたいのにバッテリーが切れて使えなかった、と言う声を多く聞きました。GALAXY Jは日本向けの端末ですから、そういった部分もしっかり対応したいと考えました。開発のきっかけは、やはり東日本大震災です。日本法人の法人長が東北方面をまわって直接話をうかがって、バッテリーの消費電力を抑えたり、緊急の時に使える予備電力を用意するといった案が上がってきました。そして、韓国本社や我々日本チームも様々な意見を出しつつ、肝入りで実現しました。

──逆に、緊急時長持ちモードは日本発でグローバル端末にも標準的に搭載されていく機能になりそうな気がします。

林氏:私もそう思います。GALAXY Note 3にはすでに搭載されていますが、これこそ日本が発信するグローバルな機能だと言えます。もちろん、この機能を使う機会がないというのがいちばんいいのですが、あるとないのとでは安心感が全く違うと思います。

GALAXY J インタビュー

↑“緊急時長持ちモード”をオンにした様子。画面輝度を最低レベルにし、利用可能アプリや通信を制限することで消費電力を約50%削減する。

──今後についてですが、GALAXY Jの次の機種があると仮定して、どういったことをやりたいと思っていますか?

林氏:デザインとしては、GALAXY Jでやりきれなかったことが沢山あります。新素材を使ったりとか、ソフトウェアなど中身のデザインももっともっとできるんじゃないかと思っています。とくにUIは、日本人的に使いやすさをもっと追求したいと思います。

──最後に、日本のスマホユーザーに向けてメッセージをお願いします。

林氏:日本には、非常に多くのスマホユーザーがいらっしゃいますが、人それぞれ使い方は違うと思います。その、それぞれの人に応じた使い勝手やデザインを追求していきたいと思っています。

──どうもありがとうございました。

GALAXY J インタビュー

↑今後さらに使い勝手を追求した日本向け端末を出していきたいという林氏。今後のサムスンの日本向け端末にも期待が持てそうだ。

●関連サイト
サムスン電子ジャパン 公式サイト

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