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iPad下取りも公表、好調な決算のKDDIの次の一手は

2013年10月28日 19時45分更新

 KDDIは10月28日、2013年度3月期の第2四半期決算発表会を開催した。

 営業収益が初めて2兆537億円と、初めて2兆円を突破したのに加え、営業利益も過去最高の3476億円に達するなど、大幅な増収増益となった。

 その要因は、今年4月1日にジュピターテレコム(J:COM)を連結子会社化しただけでなく、主力のモバイル事業と固定通信事業が、ともに好調だったことが大きく影響している。

“au”ブランドで展開するモバイル事業を見ると、通信料収入は前年比5.7%増の8237億円に達する。その要因として大きいのは、データARPU(ユーザーひとり当たりの平均収入)の伸びで、前期の3110円から3180円へと拡大。

 全体のARPUも、伸びが初めてプラスに転じた前期よりも増加して4180円に達するなど、好調な推移を見せている。2期連続でARPUが前年同期比でプラスとなったことから、通期でのARPUをプラスに反転させるという目標の達成も見えてきたといえよう。

 

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↑モバイル事業のARPUは、データARPUの拡大で増加基調を維持。

 

 データARPUを押し上げている要因が、スマートフォン利用者の増加だ。前年同期のスマートフォン浸透率は28%だったのに対し、今期は42%と大幅に拡大。しかもLTEスマートフォンの浸透率は22%と、ほぼ半数に達している。

 現在販売されているスマートフォンのうち、LTE対応のものの比率が98%を占めているのに加え、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は「日本のスマートフォン比率は世界的にまだまだ低い。将来的には8割くらいまでを達成できるのでは」とコメント。

 今後もLTEとスマートフォンの拡大による、データ通信利用の伸びが期待できる状況にあるようだ。

 

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↑スマートフォン浸透率は42%に。現在はLTE対応のものが販売の大半を占める。

 

 もうひとつの通信事業の柱となる『auひかり』などのFTTH事業をはじめとした、固定通信事業も好調だ。固定通信料の収入は、J:COMの連結の影響を除いても前年比10.6%増加しているのに加え、J:COMの連結分を含めると3475億円にも達する、急激な伸びを見せている。

 固定通信事業の拡大には、固定通信とのセット利用でauスマートフォンの料金を割引く“auスマートバリュー”の好調が影響している。

 実際、同サービスの契約者はau契約数のうち540万、世帯数にすると286万に達するとのこと。これにより、FTTHサービスの累計契約数は3260万に達し、auひかりは黒字化を実現するに至っている。

 

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↑auスマートバリューの好調で固定通信事業も拡大。「auひかり」は黒字化を達成した。

 

 好調な決算を発表したKDDIだが、田中氏は今後のさらなる競争力強化に向け、モバイル事業の総合力を強化したいと語る。

 具体的には、主力の800MHz帯を中心とする“ネットワーク”の強化や、iOS、Android双方のラインアップを拡充した“端末”の強化、そして、新たにO2O(Online to Offline)ビジネスに力を入れた『auスマートパス』をはじめとした“サービス”面の強化や、auスマートサポートによる“サポート”の拡大などを挙げている。

 さらにKDDIは、好調なauスマートバリューの拡大を目指すべく、提携事業者を拡大したり、単身者向けに、UQコミュニケーションズのWiMAX2+対応ルーターとのセットで割引を実現する『auスマートバリューmine』を提供したりするなど、“料金”面でも他社にはないメリットを打ち出して競争力を高めていく方針だ。

 

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↑今後はauの競争力強化に向け、5つの施策で総合力を高める方針。

 

 新たな取り組みとして、個人株主の拡大に向けた株主優待を導入することも発表。具体的には、回線契約を伴うau端末本体購入時に利用可能なクーポンを、株の保有数や期間に応じて提供する内容になるとのこと。

 株主優待の導入によって個人株主の比率を高めると共に、KDDIへの忠誠心が高い“ロイヤル・カスタマー”を獲得したい狙いがあるといえそうだ。

 好調を背景に競争力強化に向けた動きを進めるKDDIだが、一方で通期の判断は据え置いており、海外展開を含めた長期的な戦略についても特に触れられないなど、今後の戦略については慎重な姿勢を崩していないように見える。その理由として、田中氏は「年末商戦の様子を見た上での判断が必要なため」と語る。

 今年の冬商戦は、これまで不調だったNTTドコモが『iPhone』を発売したことで、市況が大きく変化している。

 従来iPhoneを武器として、主にNTTドコモから番号ポータビリティー(MNP)でユーザーを獲得してきたKDDIとしては、同社がiPhoneの販売を開始したことによる市場の動向を十分見極めた上で、先の戦略を判断したいようだ。

 

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↑決算発表会で記者の質問に答えるKDDIの田中社長。

 

 特に今回の冬商戦で重要なポイントと見られるのが、各社とも販売が好調な『iPhone 5s』の品不足解消だ。

 これについて田中氏は、「一部の色であれば手に入るようになってきている。遠くないうちに解消されるのでは」と話しており、iPhone 5sの在庫が潤沢になってからの動向が、むしろ重要との認識を示した。

 11月1日以降の発売予定の『iPad Air』、『iPad mini』に向けた販売施策についても、田中氏は「Wi-Fiモデルを含め、iPadの下取りを予定している」と、iPhone同様に下取りサービスを準備していることを明らかにした。

 詳細については明らかにされていないが、現在発売されているauのiPadとiPad miniは、iPhone5同様LTEが主力の800MHz帯に対応しておらず、不満を抱えるユーザーも見られることから、下取りサービスの提供は朗報といえそうだ。

 ユーザーの不満という意味でもうひとつ、近頃インターネット上でも多くの報告がなされている、「auスマートパス」などのサービスを契約しないと、スマートフォンを販売しないauの販売店が見られることについても田中氏は言及。

「指摘を受けているのは知っている。店頭で加入を勧めるのはあくまで“お試し”のためであり、それを必須条件にするのは決して許されるものではない」と話し、店舗に対する改善を進めていくとしている。


 

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↑好調な伸びを示すauスマートパスだが、店頭での加入施策が問題視されている側面も。

 

 各社がiPhoneを販売するようになったことで、大きな差別化要素が少なくなる今後、KDDIがモバイル事業での好調を維持するには、ユーザーの満足度向上が欠かせない要素となる。

 強引な対応を進めれば既存ユーザーからの信頼を大きく損なうだけに、他社ユーザーの獲得に向け端末やサービス面での魅力を高めるだけでなく、店頭販売やアフターサービスにおいても、ユーザーの満足度を向上させる取り組みが求められるといえそうだ。

■関連サイト
KDDI 投資家情報(IR)サイト

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