10月18日、いよいよWindows8.1が発売されました。既存のWindows8ユーザー向けにWindowsストアからの無料配信も始まっており、すでにインストールしてみた人も少なくないと思います。大事なメインマシンの場合、しばらく様子を見るというのもアリでしょう。
↑いよいよWindows8.1が発売された。 |
Windows8.1には多くの新機能が搭載されていますが、Windows8で不満の声が多かった“デスクトップ利用”が改善されている点も興味深いところです。そこで今回は、Windowsとデスクトップ利用について、改めて考えてみます。
■Windows8のモダンUIはデスクトップユーザーから不評
マイクロソフトはWindows8において新しくWindowsストアアプリを導入し、それまでのスタートメニューをモダンUIによるスタート画面で置き換えました。従来のx86アプリを利用できるデスクトップはそのままに、タッチで使いやすいモダンUIを導入したわけです。
しかし、肝心のWindowsストアはWindows8と同時に立ち上がったため、有用なアプリが乏しかったのも事実です。そのため、Windows8ユーザーの多くはデスクトップを使い続けることになりました。
問題は、PCの起動時に必ずモダンUIのスタート画面が開くという仕様です。そのため、デスクトップにショートカットを並べたり、アプリへのショートカットをまとめたフォルダーをタスクバーに配置するといった原始的な手段に回帰するユーザーが続出しました。この状況を憂慮した企業ユーザーの多くはWindows8を無視し、WindowsXPからWindows7への移行を進めています。
■Windows8.1はデスクトップを使いやすく改良
これに対してWindows8.1では改善が施され、スタート画面を飛ばしてデスクトップを直接開くなど、様々なオプションが用意されました。
↑Windows8.1のデスクトップに関する重要なダイアログ。いくつかのオプションがデスクトップ利用を劇的に改善する。 |
Windows8からの仕様として、スタートアップに登録した常駐アプリなどは、初めてデスクトップを開いたあとで起動します。Windows7に比べると、PCで作業を始めるタイミングがワンテンポ遅れるという問題がありました。
また、スタート画面とデスクトップを行き来するためにスタートボタンが“復活”。さらにスタートボタンの押下時に“アプリ一覧”を開くオプションを有効にすれば、Windows7までのスタートメニューに近い使い勝手を再現できます。
↑デスクトップ画面からスタートボタンを押すと、スタート画面が開く。 |
↑設定により、アプリ一覧画面を直接開くことも可能。 |
上記画面のようにデスクトップとスタート画面に同じ壁紙を設定することで、両者をシームレスに切り替えできるようになるのも嬉しい点です。
このようなWindows8.1の変更により、デスクトップアプリを中心に利用する人の使い勝手が改善されます。まさに“desktop lover”(デスクトップ愛好家)のための改善と言えます。
■Windowsの未来は依然としてストアアプリが握っている
このようにWindows8.1では、モダンUIに興味がない人でも使いやすくなっています。とはいえ、これで筆者はWindowsの未来が順風満帆になったとは考えていません。Windowsの未来は依然としてストアアプリにかかっていると考えています。
現在のWindowsストアの問題点は大きく分けて2つあります。ひとつは“数”の問題です。アプリ数が少なく、世間で話題のアプリが見つからないこと、見つかっても選択肢の幅が狭いことが挙げられます。もうひとつは“質”の問題です。ほかのプラットフォームのアプリに比べて機能面で劣っていたり、アップデートされずに放置されているといった状態です。
Windows8の登場から1年が経過し、ようやくFacebookの公式アプリが登場するなど、ストアはじょじょに充実しつつあります。とはいえ、Windowsストアアプリを目当てにPCを買い換えるほどではないと言えます。
↑Windows8.1のアプリストア。UIも一新し、以前よりアプリを探しやすくなった。 |
↑Windowsストアでアプリを買えるギフトカードも導入される。日本版は2000円と5000円の2種類。 |
↑Facebookの公式アプリが登場。英語のみだが快適に使える。 |
なぜ筆者がWindowsストアアプリを重要と考えているかというと、デスクトップアプリの勢いがじょじょに衰えているからです。iPhoneやAndroidの登場による“アプリ”ブーム以降、Windowsアプリの開発者はじょじょに減っているという実感があります。これまでに蓄積された過去のアプリが膨大なため問題は感じにくいものの、長期的に見てデスクトップアプリが勢いを取り戻すかどうかは微妙なところです。
たしかに、OfficeやAdobe製品などに代表される重厚長大な生産性ツールは、PCならではのものです。本格的なコンテンツの制作やアプリ開発などを行なう人にとって、PCは非常に便利なツールです。しかしそういったツールを必要とするプロフェッショナル以外の人々は、より安価でシンプルなスマートデバイスに流れていくでしょう。
もちろん、これまでにもWindowsが衰退するという言説は何度も耳にしました。有料のWindowsは廃れ、無料のLinuxに置き換わると予測した人も少なくないでしょう。しかしWindowsはPCにおける支配的な地位を維持したまま、PC自体が衰退していくことになる可能性が出てきたというわけです。
そうした“一般の”人々にとっても、PCで実現していた大画面のディスプレーやキーボード、マウスといったデバイスは便利なものです。しかしこういった周辺機器も、Androidタブレットがカバーしつつあります。ノートPC型やオールインワン型のAndroidデバイスも増えており、スマート家電やスマートホームとの連携ではWindowsより有望と見られています。
■ストアアプリの充実に改めて期待
このようなトレンドからWindowsが振り落とされないために、ストアアプリの充実が必須なのです。その延長線上には、スマートデバイスに対抗できる“Windows RT”への移行も視野に入ってきます。
↑ストアアプリが充実すればWindows RTの注目度は高まる。 |
たしかに現時点では、Windows RTを活用できるシーンは限られています。しかしストアアプリの盛り上がりが最高潮になったときには、何が起きるでしょうか。デスクトップアプリの動作を封じた“x86プロセッサー用のWindows RT”が登場し、ARM版とともにAndroidを置き換えていく可能性もあり得ると筆者は考えています。
とはいえ、デスクトップ利用を中心とするユーザーは、Windows7で十分と考える傾向にあります。そこでWindows8.1は、デスクトップに関するオプションを提供することで、ある種の譲歩をしたものと考えられます。今はただ、“モダン”世代のWindowsに移行するユーザーをひとりでも多く増やすことが最優先というわけです。
残念ながら筆者の場合、アプリレビューや検証などの仕事利用を除けば、個人的にWindowsストアアプリを使う時間はかなり短いのが現状です。Windows8.1でデスクトップアプリを利用しつつ、Windowsストアアプリの充実に改めて期待したいところです。
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります