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自分との約束を守る――出版コンサルタント/ビジネス書評家 土井英司

2013年10月02日 11時25分更新

ルールを変えようキャンペーン

 元アマゾンのカリスマバイヤーであり、出版コンサルタントとして数々のヒット企画に関わっていらっしゃる土井英司さんに、「大切にしている自分ルール」や「ルールについての考え方」をお聞きしました。

自分との約束を守る――出版コンサルタント/ビジネス書評家 土井英司

 

■「自分との約束を守ること」がルール

 大切にすべきルールのひとつは、「自分との約束を守ること」だと、私は思います。
 人との約束を守るのは当然のことですが、自分との約束を守ることはすごく大事です。だけど、それをおろそかにするケースが多いように思います。「いつまでにこれをやる」と決めたはずなのに、やっていないことって、たくさんありますよね。
 「毎日、英会話の勉強をする」でも、「5キロ走る」でもなんでもいいんです。自分と約束をする場合、「本当にできるのか」「やりたいと思っているのか」と自問することが必要です。自分との約束を守れなかったらどうなると思いますか? 自信を喪失してしまうのです。
 「人間の能力の根源は自信だ」と、いろいろな本を読んで強く思います。自信を喪失しないためには、自分との約束を守ること、守り続ける習慣が大事なのです。約束するときには、なるべく具体的に、自分のモチベーションに最大限の配慮をしたほうがいいと思います。
 いまの世の中は、情報量が多いから、人はなかなか判断しにくい。判断材料や選択肢がありすぎて、先送りにすることが多いのです。判断しないで先送りすることを繰り返していると、「私は判断できなかった……」と思ってしまいます。
 たとえ判断を先送りにしていい結果を得たとしても、学びがなければ自信はつきません。積極的に「やらない」ことを選んだのならいいのですが、「やれた」のに「やらなかった」場合は、自信喪失につながります。何かに挑戦しなければ、失敗はありません。でも、失敗から学ぶことは多いはずです。
 「自分との約束を守る」
 これをルールにすれば、自信を失うことはありません。
 意外に思われるかもしれませんが、私はセルフイメージが低い人間です。進学先を選択するときでも、志望校を低く設定して、あとで上げていきました。自分に対して自信があるタイプではありませんでしたから、自信をつけるため、自分を奮い立たせるために、小さなステップを設定して、ひとつずつ上げていったのです。

■好き・嫌いに左右されないために数字を見る

 「好き・嫌いで選ばないこと」も自分で大切にしているルールです。
 ほとんどの人は、「好き・嫌い」で失敗するのではないかと思います。
 学生時代、「○○先生が嫌いだから、社会の勉強はしない」という声をよく聞きましたが、先生が嫌いなのと社会の勉強をしないことに関係はありませんし、先生が嫌いだからといって勉強するのをやめていたら、何も身につきません。好き・嫌いで選択すると、学びのチャンスが減ります。
 目の前の人が嫌いかもしれないけど、その人からだって学ぶことが絶対にあります。だから、そこだけ学べばいい。完璧な人間がいないのと同様に、学ぶところがない人もいません。どんな人にも、最低ひとつはいいところがある。
 一点を見てすべてを否定するようなことをやっていると、何も学ぶことができません。歴史上の偉人や経営者の本をたくさん読みますが、いいところを見つけて、学んで、自分を変えていくようにしています
 好き・嫌いはなぜいけないのか? それは、依存を生んでしまうからです。判断をほかの人に委ねて、別のチョイスを考えなくなってしまいます。
 好き・嫌いを判断の材料から除いてみると、新しい可能性が開けてくるのではないでしょうか?
 『ビジョナリー・カンパニー2』でいうところの、Good to Greatではないけれど、グッドはグレートの敵である、ということです。確かに、いま付き合っている人はグッドかもしれないけれども、グレートがある。グッドで満足したら、もっと上があるという可能性に目を向けなくなってしまいます。だから、好きなものに依存するのはやっぱりよくない。それは大切にして感謝すべきですが、その先に行くためには、やっぱり変えていかなければいけないと思います。
 好き・嫌いに左右されないためには、現実を見ることが重要になります。数字を見れば、いろいろなことがわかります。
 たとえば、Amazonの本のランキングを見ても、どうしても好き・嫌いで購入する本を選んでしまいがちです。自分の関心のないジャンルを飛ばしていることがある。でも、好き・嫌いを無視して、1~100位まで全部買って、まとめて読んでみる。そうすると、いま売れているものの共通項が見えてきます。
 自分の判断を差し挟まないで世の中が評価する客観基準を見ると、純粋に売れているものがわかる。そこを基準にすれば、どれだけ自分がずれているかに気づきます。
 「これは俺のタイプじゃないな」とか、「なんか、嫌い」と思うものも、食わず嫌いしないで食べてみることです。簡単な話、「売れているものは全部買う」でもいいんですよ。

■ルールの変化にどう対応するかが勝負

 「ルールはどこでも同じ」と思い込んでいる人が多いようですが、そんなことはありません。その国にはその国の、その会社にはその会社のルールがあります。その国の為政者が変われば、会社なら社長が変われば、ルールは変わる。
 会社や業界のルールは常に変わるものです。そういう前提で準備しなければいけないと思います。「ルールが変わったから力を出せません」では、ビジネスマンとして一流とは言えないでしょう。違うルールになったとき、どれだけ早く順応して結果を出すかが、その人の能力だと思います。
 ビジネスにおいて、ルールや環境の変化に順応できた組織だけが生き残れるというわけです。ルールや評価方法が変われば働き方を変えるのが当然の姿だと思います。
 KADOKAWAの角川歴彦会長も、楽天の三木谷浩史さんも、サイバーエージェントの藤田晋さんも、「ルールが変わるな」と思ったときに、素早く対応した経営者です。やっぱり、そういう人は勝ち残っている。迅速に、自分を変えていけるかが、勝負ですね。そのときに一番の障害になるのが、自分の気持ち。人間って、変わりたくないものですよね。そんな気持ちにどれだけ抵抗できるか、でしょう。
 ルールがどんどん変わっていくなかで、どれだけ早く自分を適応させるかが、ビジネスマンの腕の見せどころだと思います。

土井英司

出版コンサルタント/ビジネス書評家。
慶應義塾大学総合政策学部卒。ゲーム会社、日経ホーム 出版社を経て、2000年にAmazon.co.jp立ち上げに参画。数々のべストセラーを仕掛け、「アマゾンのカリスマバイ ヤー」と呼ばれる。 2004年に独立。数多くのベストセラーを手掛けるほか、個人で読者数56,000人の人気メルマガ「ビジネスブックマラソン」を執筆中。

■関連サイト

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