Mac購入は妻同伴で! 電子版我が妻との闘争|Mac
2013年09月30日 18時30分更新
MacPeopleにて好評連載中のコラム「我が妻との闘争」。Macを愛し、毎夜ホームページ作成に挑むサラリーマン、呉エイジさん。新製品やOSを買いたい気持ちはやまやまですが、小遣いは月2万、加えてとにかく無駄使いを嫌う奥さまに「Macを卒業しろ」「金食い虫」「ダメ夫」と嫌みを言われる毎日。本作は鬼嫁の迫害に耐えながらMacを愛し続ける男の悲しい記録です!
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すでに紙版で発売されている1〜4巻と、2009年1月号から2011年6月号までの全30話を収録した第5巻が9月26日に電子書籍で発売されました。
ここでは、最新刊である「第5巻 恐怖の夫弾圧編」から、「魔のルート29」を丸ごと掲載しちゃいます。
魔のルート29
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世の中「言うたモン勝ちかい!」と叫びたくなるのである。
プッスン! プッスン! 先ほどまで快調に稼動していたはずの洗濯機が何の前触れもなく不穏な音を奏で出す。
「アンターッ、洗濯機が止まってしもうたでー」
「ふぅーん」
「何がふぅーんじゃコリャーッ! 明日汚れたままの服で会社行ってもエエんかい! こっち来て見んかい」
気合に負けて洗濯機まで慌てて駆けつける。
「ど、どないしたんや」
「だから洗濯機止まってしもうたんや。直して」
嫁は平然と言う。
「直してて、オマエ。そんな簡単に言うなや。こんなもん直せるわけがないやろう」
「男やろ。すぐ後ろ開けるなりして直してぇや」
「男やろ。すぐ後ろ開けるなりして直してぇや」
嫁はすべてにおいてこの調子なのだ。
プッスン! プッスン! ブオーッ!
今年で15歳になるわが家の車から異音が発生した!
「あ、アンタ、だ、大事な車に何さらしてくれるねん」
「故障が俺のせいかい! まだ1キロも走ってないやないか。オマエが乱暴に乗ってたせいじゃ」
「私は大事に使ってるわ! 男ならすぐ直して」
男ならば無条件にトラブルの解決や地球の危機を救うのは当然のことなのか。できない男だっている! いや、できない男のほうが多い。
「と、とりあえず動いてるうちに、そこの車屋さんへ入ろう。ちょうど同じメーカーやし」
息も絶え絶えと、虫の息で車は駐車場にたどり着く。
そこへどこからともなく現れたスーツ姿の3人。
「あ、アンタ、車誘導してくれてるで。みんなイケメンぞろいやないの」
「私この店気に入った」
点検してもらってる間、店内に入り新車を見てみる。乗り込んでハンドルを握ってみる。最近の車に驚く。わが家の愛車とは雲泥の差だ。車はここまで進化しているのか。
「お客さま、ただいま点検中ですが、時間がかかりそうなので、試乗車でドライブとかいかがでしょう。お車もかなり年数がたっております。新車の候補にぜひ」
「ええっ、家族で乗っていいんですか?」
「20分くらいドライブしてもらって結構ですよ」
家族でピカピカのワンボックスカーに乗り込む。快調に国道号線を走る。何もかもが心地よい。
私も嫁も「新車っていいじゃん」という気持ちになった。
「いかがでしたか? 車の調子は」
モミ手をしながら駐車場へ営業マンが駆けつける。
「いやぁ、やっぱり最新の車っていいですね。内装もすごいオシャレでご機嫌なドライブでしたよ」
「で、お車の修理なのですが、キチンとした修理は部品代を入れて8万円前後になります。本日は応急処置だけで5000円程度ですが、近いうちにまたオイル漏れは起きると思います。この際、新車のお見積もりなど......」
ゲゲッ、キチンとした修理で8万円も! こりゃこのまま走り続けたら修理代貧乏になってしまう。
「アンタ、見積もりだけでもして帰ろうか」
おぉ、珍しく嫁も新車購入に乗り気である。やはり高額の修理費が決め手になったか。テーブルに腰掛ける。笑顔の女性スタッフが飲み物を聞きに来る。子供たちにはアメを持ってくる。
なんというサービスのよさ!
「で、候補ですがご家族5人ということで、やはり先ほど試乗されたお車になりますか?」
「そうよねぇ、ゆったりしててよかったわ」
イケメンの営業マンがカタログを広げる。
「おおっ、このフルエアロバージョン格好エエやん、おい、これにしよう、なっ」
「うーん、確かに格好エエけど、このいちばん下のランクとの価格差はどれくらい?」
「約20万円くらいの差でございます」
「こっちはいりません」
1秒も考えてはいなかった。私は嫁をにらみつける。
「で、いま新車を買うと、減税があるんですよねぇ」
「よくごぞんじで。その通りでございます。今月からは考えられないくらいの値引きが可能でございます」
イケメンの営業マンは自信満々でカタログを広げる。
「じゃあ、このクラスで見積書出してもらえます?」
笑顔で見積書をプリントアウトし、目の前に置く営業マン。
価格は260万円であった。
嫁を見る。右の眉毛だけが釣り上がっている。思ったより高い。しかし、ここで引き下がる嫁ではなかった。
「ここから減税と値引きがくるのね」
「当然でございます。奥様。で、今回はスペシャルプライスの240万円でございます」
「ふぅーん、こっから修理で立ち寄っただけから、新車購入まで決心させる劇的な値引きに入るわけね」
私はいま、言葉の暴力というものを感じていた。
営業マンは口を開けたまま、北斗の拳のケンシロウに秘孔を突かれた直後の「あべし」のような顔になっていた。
「ワンボックスで8人乗りで、これ以上値引きが無理なわけではございません。今日決めてくだされば、ここからさらに考えさせていただきますが......」
話をしながら嫁が壁に張ってあるチラシに気がついた。
「営業さん、このチラシの期間やないの、ホレ、御来場の皆様全員にトートエコバックとバームクーヘンのプレゼント」
「私ら修理で来たけど、権利あるんでしょ?」
営業マンは血相を変え、慌てて立ち上がった。
「も、申し訳ございません。こちらから気が付きませんで、すぐお持ちいたしますのでお待ちください」
なんか嫁の交渉が強引に感じられるのは気のせいであろうか。続けざま嫁は信じられないひと言を小声で発した。
「営業さん、ちょっと耳を、ホレ、このチラシに抽選でBluーrayレコーダーを1名様に、ってあるでしょ? その当たりクジをこそっと回してくれれば即決してもエエけど? 不正やないですやん。双方ハッピーになる提案っていいますか……」
無茶苦茶を言ってる気がする!
営業マンは額に変な汗を浮かべながらマネキンのようにかたくなに笑顔を保ってはいるが、目の奥は全然笑ってはいなかった。殺意すら見えた。
「いやぁ、このクジイベントは管轄が違いまして、ちょっとお申し出のとおりにはできないのですが……」
当然だろう。相当困っている様子だ。
「240万円か……。まだ高いな、見積書見せて。フムフム、このマットセット3万円って何?」
「車名のロゴ入りの室内にマッチしたオシャレなマットセットでございます」
「高いな、いらん!」
営業マンと私は嫁を見た。足敷きマットをいらない、という客などいるのであろうか? いや、いま横にいた。
営業マンが慌てて省いたぶんの見積書を印刷しに走る。
「オーディオ、ほぼ10万。高すぎる、いらん」
ラジオすらなしの車か、すうどん状態か!!
「オマエ、オーディオスペースすっからかんかい」
「音楽なくても死なん」
それじゃあ車だってなくとも死なないではないか!
慌てて営業マンが修正の見積書を印刷しに走る。
「210万円でございます」
「これでスタートラインですね、こっからナンボ勉強してくれはるんですか? 営業さん」
これは勉強などではなく恐喝ではないのか?
「私の権限で、マットもお付けしましょう。ギリギリのラインです。200万6000円でございます」
最初の価格から相当の値引きだ。見守る営業マン。
「うーん。ここまで踏ん張って200万切らんか。まだ高いなぁ、しゃあないなぁ、中古車屋も見に行こか」
鬼か! というような目で営業マンは出て行く私達をぼう然と見送っている。
嫁は修理の終わった愛車に平然と土産を積み込んでいる。私は店の人たちに申し訳ない気持ちでいっぱいであった。
そんなヒドイ状況の中でも、今度Macを買い替えるとしたら、絶対に嫁を連れていこう、とボンヤリ誓ってしまうのであった。
これを読んでいる独身者諸君……
大きい買い物は、やっぱり妻同伴のほうがイイみたいです
と、ひと言いっておきたい。
このほか最新刊の第5巻では、ムダ使いがバレて誓約書を書かされる呉さん、iPadの購入金が車の修理代に飛んでいった呉さん、デジカメの電池切れに激ギレされる呉さん……などのエピソードを収録しています。ぜひ全編お読みください!
「我が妻との闘争」1〜5巻は、「BOOK☆WALKER」で9月26日から発売開始。1〜4巻は300円、5巻は800円。iBookstoreやAmazonをはじめ、各電子書籍ストアでの発売は10月10日以降。配信が決まり次第、お知らせいたします。
●関連サイト
・BOOK☆WALKER
・Kure's Homepage
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