“スペース系ノスタルジック活劇”をテーマに活躍する演劇ユニット☆宇宙食堂が、東京芸術劇場 シアターウエストで舞台『プラネタリウムを作りました。』を9月19日から上演する。新作はプラネタリウムMEGASTARの開発者である大平貴之さんの著書を題材に、『MEGASTAR-II』と演劇がコラボレーションする舞台となる。
↑左から演劇ユニット☆宇宙食堂主宰で脚本・演出・映像を手掛ける新井総さん、俳優・宮内かれんさん(ホットラインプロモーション)、プラネタリウム・クリエーター 大平貴之さん、俳優・伊丹孝利さん、俳優・ささきくみこさん。東京芸術劇場 シアターウエストで9月23日まで開催。
日本で唯一の宇宙モノ専門のエンターテインメントが話題の演劇ユニット☆宇宙食堂にとって、今回の大平さんとのコラボレーションは、1999年――まだ前身劇団のころから思い続けた理想の形だという。
代表の新井さんは当時、「舞台をドーム状にしてプラネタリウムを投影する、という課題を解決できなかった」と苦労の多さを話してくれた。「14年前は舞台装置もそこまでのものが使えなかった。それがようやく今、ここまできた。今回の舞台は14年越しのコラボ実現ですね」と笑う。
↑「1999年ごろかな、一度大平さんにコンタクトしたことがあるんですよ」と大平さんにインタビューの場で打ち明ける新井さん。
そんな思いを「え! そうなの?」と驚きをもって聞いていた、プラネタリウム・クリエーターの大平さん。今回上演される物語の舞台は、今から10年後の2023年の世界で生きる、未来の大平貴之さんを描いている。プラネタリウム誕生100周年の年に新たなプラネタリウムを作ろうと考える大平さん。舞台の中では非常にユニークな人物として登場し、自らの破天荒な言動から“プラネタリウム界の貴公子”ではなく、“プラネタリウム界の奇行師”と呼ばれて話題になっているというのだ。
おもしろいのは、そんな物語・大平貴之のイメージが、現実の大平さんからあまりかけ離れていないところ。お会いしてみると、ご本人もマイペースでつかみどころがない性格が垣間見えた。
↑「いいですよね~奇行師。まぁ僕は家では全裸派ですけどね~」とひょうひょうと語る大平貴之さん。
最近の活動を訪ねると「ここ何年か、恒星原板作成以外に、あんまりプラネタリウムを作っていないんですよね。ツイッターして、ラジオやテレビでしゃべって……それに映像や、映像制作のソフトを作っていることが多いかなぁ。あとは……私は何をして毎日を過ごしてるんだろうね。エネルギーのことを調べているかな」と話す。最近は宇宙より深海に目覚めているようで、「先日、水中360度カメラを作ったので、今度は、これを自律航行ができるタイプにしようと思っているんです。それを餌に見せかけてサメに襲わせる。360度サメが迫ってくる映像ですよ! ダイオウイカとか目じゃないでしょう? “あなたもサメに喰われてみませんか”って、おもしろいと思うんですよね」と楽しそうに笑った。
プラネタリウムはどんどん進化しているけれど、やはり実際の宇宙へ行ってみたいですか、という質問には「それは行きたいと思いますよ」という。「でも、それにはまず安全であること。……それからいくらお金出すかなぁ。今は弾道飛行で約2000万円でしょう。搭乗したらすごい加速度で、失神して寝ちゃって……気がついたら終わっていたというのは最悪だよ」と、現在の宇宙“旅行”にあまり期待はしていないようだ。
↑「1万人が衛星軌道をまわって観光旅行をするよりも、ひとりの宇宙飛行士が木星に行って実体験を熱く語る。その体験を皆でシェアするほうが、インパクトがある」という大平さん。
それでは、宇宙旅行計画は無意味かと尋ねると、決してそうではない。「人間が宇宙に行くのは危険だしお金もかかる。それでも人間が行って“その人が見てきた”というのは、受け止め方が全然違います。なぜかというと、やっぱり人間は人間に興味があるんですよね。人類の代表として、宇宙飛行士が火星でも、木星でも有人探査に行って、それを“火星はこんなだったよ”と語ってもらう。そのことに、理屈抜きの価値がある」とする大平さんは、臨場感をそのまま映像に織り込んでシェアすることに大きな意味があると考える。「ものすごい映像を見せながら“いやあ、このとき火星は寒くてさ”と語るとかね」。
↑舞台で主人公・大平貴之役の伊丹さん。
舞台上で大平さんの役を演じる伊丹孝利さんは、一度、大平貴之さんが解説役を務めるプラネタリウム番組を見たことがあり、「大平さんの生解説が始まると、お客さんの女性は目がハート形になるんですよね」と、プレッシャーを感じているようす。大平さんの役は「過去の自分を振り返ることで復活していく、人を元気にしていく役どころ」なのだとか。
↑元気いっぱいのヒロイン、あおい役の宮内かれんさん。主人公に喝を入れ、ストーリーを動かしていく役どころだ。
主人公を触発する3人の女子大生ヒロインから、“過去”に関わる部分を代表する“あおい”役の宮内かれんさん。静岡県出身の宮内さんは「この子は富士川でMEGASTARに出会った気がする」と、実際に道の駅・富士川楽座(富士市)の『MEGASTAR-II B』を観に行ったとか。「あおいだったら、きっと手作りするから」と、舞台で大平貴之を応援するうちわを実際に製作したんだとか!
↑大平技研の社長秘書を演じるささきくみこさん。
前代未聞のプラネタリウム製作に挑む社長と、3人の女子大生が集う有限会社大平技研で、社長と社員の行く末を見守る社長秘書、島田女史を演じるささきくみこさんは「ストーリーの中で唯一普通の人です」と笑う。破天荒な社長と自由な女子大生の面倒を、はらはらしながら見守る役どころだが、“過去と未来をつなぐ”大事な役でもあるとのこと。
↑学生のころから人を集めて驚かせたり、喜んでもらえるようなことを考えるのが好きで「ずっとそんなことをやってきているよね」と語る劇団主宰の新井さん。
19日から始まる舞台『プラネタリウムを作りました。』は、実在する主人公・大平貴之さんが本当に作りたかったものを見つけ出し、前代未聞のプラネタリウム開発に挑む物語。クライマックスに向け、ビックリするような仕掛けが仕組まれているという。「元はエイプリルフールのために考えたネタなんですけどね」と大平さんが笑う“仕掛け”とは、いったいどんな宇宙体験を披露してくれるのか、1000万個の星空の下での上演に期待したい。
舞台『プラネタリウムを作りました。~2023年、それでも君の頭上には2000億の星~』
原作:大平貴之『プラネタリウムを作りました。』(エクスナレッジ)
脚本・演出・映像:新井総
劇場:東京芸術劇場シアターウエスト(東京都豊島区西池袋1-8-1)
9月19日(木)~9月23日(月・祝)
チケット:全席指定 前売り3500円、当日4000円
■関連サイト
舞台『プラネタリウムを作りました。』特設サイト
スーパープラネタリウム「MEGASTAR(メガスター)」シリーズのオフィシャルサイト
本記事は、週刊アスキーの連載『2013年宇宙の旅 ~宇宙をちょっと知っちゃうコーナー~ 』の派生版です。週刊アスキーでは、毎週、知っているようで知らない宇宙の知識を、優しく読み解いていきますので、ぜひ、あわせてお楽しみください。
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