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インテルが全力でインサイドしてきたIDF2013総ざらい:IDF2013

2013年09月13日 13時10分更新

IDF2013

 米サンフランシスコで9月10日から3日間開催されたIDF2013。そのなかで何度も頭に浮かんだ超がつくほどシンプルでわかりやすいインテルの戦略。それは、PCやタブレット、スマートフォンはもちろん、ネットにつながるその他のデバイス(IoT=Internet of Things)から、クラウドサービスを運用するデータセンターにおけるサーバーまで、すべてのコンピューターにおいて、“Intel Inside”を実現し、そのシェアを勝ち取っていくというもの。

 今回はIDF2013のまとめとして、華々しいデビューを飾ったタブレット向けのSoC、Bay Trail-Tも含め、コンピューターのジャンル別に駆け足で振り返ろうと思います。

●タブレット(Atom Z3000:Bay Trail-T)

IDF2013
↑Bay Trail-T搭載タブレットとしては早くも発売が告知されたASUS『Transformer Book T100』。32GBモデルは349ドルで10月18日発売。OSはWindows8.1で、CPUはAtom Z3740(4コア、最大1.8GHz)。10.1インチ液晶を備え、重量はキーボードドックを含めても約1キロ。

 タブレットは9月12日(米国時間)に発表された、Atom Z3000シリーズ(開発コードネーム:Bay Trail-T)が2013年後半の主力となります。ちなみにBay Trailは大きく分けて3つ(組み込み機器向けのBay Trail-iを混ぜれば4つ)に分かれますが、いずれもSilvermontマイクロアーキテクチャーのコアを採用するSoCです。

IDF2013
↑Intel HD Graphicsのゲームデモも行なわれ、左のClover Trail世代のタブレットではカクカクのDiablo IIIが右のBay Trail-T世代ではヌルヌル動いてました。

 Silvermontマイクロアーキテクチャーのコアはこれまでの非力なAtomとは一線を画し、22nm世代でパワフルかつ省電力。また、Bay TrailのGPU部はIvy Bridge世代のIntel HD Graphicsを採用し、なんと第2世代Core iシリーズからの十八番、高速動画エンコード機能“クイックシンクビデオ”まで使えます。

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↑Intel HD Graphicsは4K動画再生も余裕。タブレット液晶の解像度は2560×1440ドットですが、内部的な処理で4Kを2560×1440ドットに縮小しながら再生。外部出力で4Kディスプレーに表示することも可能。

 性能こそ、現在メインストリームを務めているHaswellアーキテクチャーのCPUにはかなわないものの、省電力性と性能のバランスからこれで十分と判断する人は多そうです。それぐらいすばらしい出来であり、そのポテンシャルの高さはインテルの製品展開の多さ(Bay Trailのほか、スマートフォン向けのMerrifield、マイクロサーバー向けのAvotonもSilvermontコアを採用)からもわかります。

IDF2013
↑低価格ノートPC向けにはBay Trail-M、低価格デスクトップ向けにはBay Trail-Dを展開。Windowsのほか、AndroidやChrome OSもサポートします。

 Bay Trail-Tはタブレット向けとして、Windows8.1に合わせて今年後半にはさまざまな製品が出てきます。早ければ年内、遅くとも来年の前半には低価格帯のノートPCにBay Trail-M、デスクトップPCにはBay Trail-DというSoCを搭載した製品が登場します。

●低価格ノートPC(Pentium N3000/Celeron N2000:Bay Trail-M)

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↑Bay Trail-M/DはそれぞれAtomブランドではなく、Pentium/Celeronブランドとして販売されます。従来のブランドイメージもあり、生半可な性能ではクレームにもなりかねないブランド展開ですが、それだけBay Trailに自信があるということの証明でもあります。

 Bay Trail-MはPentium N3000シリーズ、Celeron N2000シリーズとして市場に投下されます。Pentium N3000シリーズはクアッドコアSoCで、Cleron N2000シリーズはN2910がクアッドコア、N2810とN2805がデュアルコアです。

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↑Bay Trail-Mは2in1からタッチ対応ノートPCまで、幅広くカバー。ざっくり言うと、低価格ノートPCはBay Trail-M、その上位の価格帯に省電力Coreプロセッサーを搭載するUltrabook、さらにその上にIris Graphicsや外部GPUを搭載した高性能ノートPC、といったクラス分けになります。

 Bay Trail-MはUltrabookと採用製品ジャンルがかぶっており、市場ではMSオフィス価格込みで5~6万円の低価格ノートPCがBay Trail世代のPentium/CeleronノートPCになり、6万円以上はHaswellを搭載するUltrabookという住み分けになりそうです。とは言え、価格付けはメーカー次第なので、MSオフィスを外したUltrabookやリッチなボディーデザインのBay Trail-Mノートでは、同価格帯で戦うこともあると思います。

 差別化するのであれば“性能差”に尽きるのでしょうが、Bay Trail-MのIntel HD GraphicsはEU数が4基でしかもIvy Bridge世代とHaswellよりもひとつ前の世代なので、純粋な3D性能で選ぶならUltrabookでしょう。しかし、ゲームはやらないけど、ウェブブラウジングや簡単な写真/動画の高速加工やメールチェックができて、1日8時間ぐらいバッテリーがもつノートPCが欲しいなという人は、圧倒的に低価格なBay Trail-MノートPCに流れることでしょう。

●低価格デスクトップPC(Pentium J2000/Celeron J1000:Bay Trail-D)

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↑Bay Trail-Dは400ドル(4万円前後)以下の液晶一体型PCや低価格デスクトップPC、小型PCに採用。Androidでは2014年以降に登場するスマートディスプレイという液晶一体型PCに相当するジャンルで新興国向けには非HDMIサポートでCeleron版を349ドル以下で販売。成熟市場ではPentium版をHDMIサポート付きで399ドル以下で販売する想定。

 Bay Trail-Dの位置付けは、低価格な液晶一体型PCや小型自作PC向けのベアボーンなど、位置付けはAtomブランドが出たばかりのころのネットトップに似ています。

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↑展示スペースにあったNUCと同じぐらいのフットプリントを実現したBay Trail-Dマザー用小型ケースのサンプル(右)。上に載っているのはHaswell版NUCの試作機。もちろん写真の左にあるようなネットトップ然としたBay Trail-D用の小型ケースも出てくることでしょう。

 しかしながら、Bay Trail-DはIvy Bridge相当の機能(クイックシンクビデオや4K出力など)を持ちながら、NUC並みの小ささで設計でき、しかもNUCよりも低価格。OS込みで総額3~4万円で小型PCを自作できちゃうかもしれません。Pentium J2850はとCeleron J1850はクアッドコア、Celeron J1750はデュアルコアで展開します。

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↑Celeron J1850を採用する液晶一体型PCのOEMモデル。Windows8 Proが動作し、ウィンドウをつまんでぐりぐり動かしてもスムーズに描画され、体感上、ロークラスプロセッサーだとは思えないぐらい快適でした。

 インテルはここ数年、コンシューマー向けのCPUでは、その開発リソースをメインストリームのCoreアーキテクチャーとロークラスのSivermontマイクロアーキテクチャーに分割してきました。それはインテル自身が、はたしてどちらのアーキテクチャーが時代に合うのか予想しずらかったらからだと思います。その代償にどちらの開発も難航し、スマホやタブレットブームに出遅れてしまいましたが、いよいよここにきてSilvermontの申し子であるBay Trailが世に出ることになり、その答えが出ます。

 Bay Trail-T/M/Dでタブレット、低価格ノートPC、小型デスクトップPC市場に革命が起こり、Coreプロセッサーが淘汰されれば、インテルの開発リソースは自ずとSilvermontのようなCoreプロセッサーよりも省電力なCPUコア開発に傾くことでしょう。スマホやタブレットを巡るARM勢との最初のシェア争いで負けるというリスクを負いながらも両方に開発リソースを割いきたインテルですが、ここからはまさにインテルのターン。市場動向を見て、売れているほうを選び、限られたリソースをどちらかのアーキテクチャーに全力で注ぎ、来る14nm世代のSoCではほかのプロセッサーメーカーに微細化技術において大きく差をつけてゆうゆうとタブレット/スマホメーカー各社にパワフルかつ省電力なプロセッサーを低価格かつ大量に販売できるというわけです。インテル、なんて恐ろしい子!

●スマートフォン(Merrifield)

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↑Merrifieldを搭載したインテルのリファレンスデザイン端末。展示ブースではガラスケースに入っており、まだまだ極秘扱い。メーカー製端末としては2014年に登場の見込み。

 スマートフォン向けSoCとしては、Silvermontoマイクロアーキテクチャーを採用する次世代Atom(開発コードネーム:Merrifield)が控えています。

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↑展示されていたスマホにはIntel XMM 7160を搭載。ちなみにこの通信モデムチップはノートPCやタブレットにも搭載可能。

 LTEモデムはIntel XMM 7160のほか、将来的にはLTE Advanded対応モデムもサポート。こちらは各国キャリアの電波帯での検証があるので、普及にはまだ時間がかかりそうです。2014年で性能や各メーカーのデザインを楽しみ、2015年に通信性能的にも過不足ない状態で土俵に上がるといったところでしょう。

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↑DisplayLinkブースで展示されていたMerrifieldの試作スマホ。

 ちなみにIDF会場の1階ではパートナーブースが多数ありました。DisplayLinkブースにはこっそりMerrifiledスマホがありました。

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↑やたらとごっつい装置ですが、やっていることはシンプル。Merrifieldスマホとタッチ液晶ディスプレーを接続し、セカンドディスプレーでもヌルサク動作できるかどうかというデモ。

 Merrifieldスマホはセカンドタッチディスプレーの状態でもサクサク動いていました。ドキュメントを選んで拡大/縮小したり、複数のフルHD動画のサムネイルを表示して選んで再生したり、動作に支障なしといったところ。さすがSilvermont SoC。しかしながら、スマートフォンはタブレット市場よりもはるかに成熟してしまっているぶん、こういった付加価値や新たな仕掛け(たとえば超低価格化など)がないと革命は起こりづらいですよね。そのあたりもSoCのポテンシャルから各社どういったアプローチをとるのか楽しみです。

●Ultrabookなど(次世代Coreプロセッサー:Broadwell)

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↑14nm世代のCPUは2014年中に発表。BroadwellはUltrabookを中心とした2in1やファンレスタブレットに採用予定。微細化が進むことで、現行のHaswellよりもさらに省電力となる。

 一方で、14nm世代の次世代CoreアーキテクチャーCPU(開発コードネーム:Broadwell)も基調講演で紹介されました。わざわざ“Broadwell and 14nm”と言葉を分離しているのは、邪推ですが、「CoreプロセッサーのBroadwellは14nmだけど、もちろんBay TrailとかのSilvermontマイクロアーキテクチャー SoCの後継ももちろん14nm世代を使うからね、そのへん忘れないでね!」というメッセージなんだと思いました。前述したとおり、Bay Trail勢が当たれば、Broadwellの先のSkylake世代の開発よりもSilvermontの後継を優先して開発しそうですね。その開発優先度の逆転現象は、もっともっと先の世代になるかもしれませんが……。

 Broadwellの発表タイミングは明らかになっていませんが、Sandy Bridgeが2011年1月、Ivy Bridgeが2012年4月、Haswellが2013年6月と本来1年ごとだった発表サイクルが徐々に遅くなってきているので、順当に考えれば2014年の8月ぐらいに落ち着くのではないかと思います。

●データセンター向けサーバー(Xeon E5-2600 v2:Ivy Bridge-EP)

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↑12コアデザインのXeon E5-2600 v2はL3キャッシュを30MB搭載。性能はSandy Bridge-EP世代と比べて最大1.5倍としながらも、同数コアで比較すれば22nm世代のCPUコアを採用しているため、省電力。

 インテルの戦略はモバイルデバイスやデスクトップPCだけではありません。サーバー用の超高性能CPUとして、Xeon E5-2600 v2(開発コードネーム:Ivy Bridge-EP)も発表しました。ダイデザインは異例ともいえる3種類で、最大コア数は12コアと並々ならぬ気合を感じます。

 ちなみにインテルのコンシューマー向けハイエンドCore i7シリーズ(LGA2011ソケットに対応)は、サーバー向けのXeonを作る“ついで感”が満載です。Sandy Bridge-EPのときは最大8コアの1デザインで、コンシューマー向けのIvy Bridge-Eは2コアを機能的にオフにした6コアモデルでした。しかしながら、今回のIvy Bridge-Eが6コアかつdisableコアがなかったのは、最小コア数のダイデザイン(6コア)だったからというわけです。

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↑Xeon E5-2600 v2のメガブリーフィングではamazon web servicesの担当者が登壇。

 Xeon E5-2600 v2はamazonのクラウド事業でも活用される見込み。また、一部のとがったハイエンド自作ユーザーも注目していますが、自作erのなかでもかなり趣味性の高い選択肢となるでしょう。もちろん、僕は購入しますが。

●IoT(Quark X1000)

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↑今回初お披露目となったIoT向けの新SoC、Quark X1000。2013年第4四半期にサンプル出荷予定なので、来年にはなんらかの製品が出るかもしれません。

 Quark X1000はIoT(Internet of Things)という聞き慣れないジャンルのデバイス向けのSoC。スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスやネットにつながる組み込み機器がメインターゲットです。

 このように、インテルは小さな機器からデータセンター向けのサーバーのような大きなコンピューターまで、Intel Inside化を進めます。まずは今年後半に登場するBay Trailを採用したタブレットや低価格ノートPCの実力を早く確かめたいですね。

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↑冒頭で使った写真はベンチマークセッションルームに置いてあったBay Trailタブレットのリファレンスデザイン。iPhone 5s/5cの裏番組にもめげず、取材を頑張ったご褒美にひとつ譲ってくれないか、と相談したかったけれど自粛しました。余談ですが、アメリカのインテルスタッフはIDF2011参加時のことを覚えていてくれて、僕を見つけるなり、「Tiger Hut!!」、「He is The Tiger Hut!!」、「Yeah,Tiger Hut is coming!!」と大騒ぎ。日本では便宜上、虎マスクと言ってますが、アメリカでは虎帽子ですって。確かに顔出てますもんね。

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