Googleと慶應義塾大学、インテージ、ブレインパッドの4者は、2013年7月21日に行なわれた参議院議員選挙において“シングルソースパネルを利用したネット選挙動向調査速報レポート”を共同で発表した。インテージの“シングルソースパネル(i-SSP)”を利用した市場調査で、調査対象者の2013年5月~7月のテレビ視聴データとインターネット閲覧データを機械的に収集。テレビ番組の内容、ウェブでの検索ワード、閲覧したサイトの情報など大量に得られたテキストデータの中から、政治、選挙に関わる部分を抽出。調査対象者に、選挙でどういう行動をしたのかをアンケートを採ることで、メディアとどういう接触で投票先が変わったのか、政党を決めた人がどういう行動を取っていたかがわかるというものだ。
なお発表は速報のため、調査した全体の分析は行なっていない。今回は関東エリアの20歳から60歳のPCユーザー2041人が対象で、テレビが5月23日~7月21日、HTMLソースコードが5月23日~7月9日、政党関連ワード検索が5月23日~7月18日、政党公式サイト訪問が5月23日~7月18日の期間の部分的な分析となる。
また、この調査ではメディアは4つのパターンに分けられている。テレビが“ニュース番組”と、ワイドショーなどで選挙の話題が振れられたときの“その他の番組”の2つ、ウェブが新聞社系などの“ニュースサイト”と、ニュースをまとめて掲載するようなポータルサイトなどの“その他のサイト”の2つだ。
分析結果は、この2ヵ月の間で政治の情報に触れているメディアはテレビが95%、ウェブサイトが41%だった。ネット選挙解禁といえども、まだまだメディアではテレビが圧倒的な影響力をみせた。
各政党の公式サイト、各候補者の公式サイトの訪問数は自民党がかろうじて1.1%だが、ほかの政党はすべて1%未満というほとんどの人が訪れていない結果に。情報収集手段として政党の公式サイトは使われていないことがわかった。分析には各候補者のTwitterなどソーシャルサイトは含まれていない。
また各メディアにどれくらい接触したかの回数を示したデータでは、男女ともにテレビでは年齢が上がるとともに接触回数が増えていた。ウェブは男性がテレビと同様の動きで、女性はフラットな結果に。ウェブメディアは若年層の男性に強く、年齢が上がるにつれて下がっていくのが一般的だが、若年層のウェブ活動もそんなに多くはなかったという意外な結果となった。
実際の投票行動とメディアとの接触の関係は、ウェブは今回ネットをうまく活用したといわれる自民党が多く、テレビのニュース番組では民主党が多いという結果が出た。また検索ワードについては各政党に投票した人がどの政党を検索していたかについて、特に相関関係はみられなかった。
速報では9割超の人がテレビから政治情報に触れ、ウェブは4割程度。若年層のウェブ活用も低いという結果だった。今回は速報だったが、今後は政治情報も政策の内容だったり、5月からの時系列による接触行動の変化を分析。また、アンケートによる政治意識に基づく比較などが行なわれる予定だ。今回は選挙が近づいた時期のウェブ行動のデータが反映されていないため、このような結果がどう変化するのかが楽しみだ。
今回の調査を監修した慶應義塾大学大学院、政策・メディア研究科の曽根泰教教授によると「興味ある発見があり、速報段階でも深掘りする価値がある。ネット選挙を統括すると、空振りだったのかなという解釈も可能。最初のステップ、今後の改善する取っ掛かりができたとも考えられる」と、結果を振り返った。テレビに比べまだまだネットの影響力が少ないという調査結果も出たが、「一般論として選挙に興味がなければネットからも情報を得ない」と解説していた。
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