7月17日、レノボ・ジャパンはHaswellを搭載したThinkPadの新製品として『ThinkPad X240s』、『ThinkPad T440s』の2機種を発表しました。モバイルで人気の高いX/Tシリーズの新機種というだけでなく、筆者はThinkPad X230を愛用中ということもあり、“個人的”にも気になる発表会となりました。
いずれもWindows8対応はもちろん、年内にも正式リリースを見込むWindows8.1世代を見据えたUltrabookとなっているはず。さっそく両機種を詳しく見ていきましょう。
■X240sは内部構造が大きく変化
『ThinkPad X240s』は、X230の後継機種という位置付けのモデル。ディスプレーはX230と同じ12.5インチ、プロセッサーはインテルの最新第4世代Coreプロセッサー“Haswell”に強化されています。
↑12.5インチのモバイル向け最新モデル『ThinkPad X240s』。 |
しかし外観を見てみると、X230から大きく雰囲気が変わったことに気付くはずです。どちらかというとThinkPad X1 CarbonやIdeaPad Yogaに近い印象を受けます。
↑X230(左)とX240s(右)の比較。がらりと雰囲気が変わった。 |
X230と比べて大幅に薄型化した17.7mミリという厚さにもかかわらず、VGAや有線LANといったインターフェースをしっかり搭載。さらに、有線LANポートは右側奥に移動したのもうれしい点です。というのも、X230ではなぜか右側手前にあり、マウスを使うときにLANケーブルと干渉しやすいという問題があったのです。
↑X240sの左側面。VGAポートもしっかり搭載している。 |
↑X240sの右側面。有線LANは奥に移動し、使いやすそう。 |
内部構造も大きく変わりました。これまでキーボードをはずすことでアクセスしていたThinkPad内部には、裏蓋をはずしてアクセスする方式に変更されています。バッテリーは内蔵式となり、交換不可に。同容量のバッテリーを前後に2つ搭載するのが特徴です。
↑X240sの底面。バッテリーやメモリー、ストレージにアクセスできるようには見えない。 |
↑実は裏蓋全体を取りはずすことが可能。2.5インチのストレージ、1スロットのDIMM、2スロットの“M.2”(NGFFとしても知られる最新の小型・高速インターフェース)、2分割されたバッテリーが確認できる。 |
なぜバッテリーを交換できないにもかかわらず2つに分割したのかというと、「重量バランスを考慮したため」(レノボ・ジャパン担当者)とのこと。これらのバッテリーは、Windows8上からも2つ認識されています。残量のパーセント表示は両者を合算した値が表示されるものの、ユーザー視点ではやや煩雑な印象を受けます。
↑X240sのWindows8上からも、バッテリーを2個認識していることがわかる。 |
2個のバッテリー容量はいずれも24Wh、合計48Whで、バッテリー駆動時間はカタログ値で11.8時間となっています。参考までに筆者が使用中のX230では、9セルバッテリー(94Wh)を搭載して10時間弱の動作。バッテリーの持ちは1.5~2倍近く向上していると考えられます。
重量も1.29~1.35キロと、わずかに軽量化。もちろん、ほかにもっと軽量なノートPCはいくつもありますが、“ThinkPad水準”の堅牢性とのトレードオフと言えます。
残念な点として、日本国内では3GやLTE通信に対応したモデルが用意されず、アンテナも搭載されないことが挙げられます。SIMカードスロットは用意されているだけに、なんとか対応を期待したいところです。
↑展示機にはSierra Wirelessの4G/LTEカード(写真左)が搭載されていたが、国内モデルではサポートされない。 |
■T440sはホットスワップに対応
12.5インチのX240sに対し、14インチのT430sやT431sの進化形と言えるのが『ThinkPad T440s』です。
↑同じく“"Haswell”を搭載したT400シリーズの最新版『ThinkPad T440s』。 |
7月中には出荷開始予定のX240sと異なり、T440sは8月下旬の発売予定。外形寸法や重量などの詳細スペックも、発売直前に公表する予定とのことです。
↑T440sの左側面。USBポートやオプションのスマート・カード・リーダーが確認できる。 |
↑T440sの右側面。X240sと同じく薄型筐体だが、有線LAN、VGAを搭載する。 |
T440sもX240sと同じくバッテリーを2個搭載するものの、そのうちひとつは取り外し可能なデザインになっています。このとき、もう片方のバッテリー残量が残っていれば、電源を切ることなくバッテリーの交換が可能な“ホットスワップ”に対応します。
↑T440sの底面。X240sと異なり、バッテリーは交換可能。 |
また、T440sは底面にドッキングステーション用のポートを搭載。DisplayPortやDVI、HDMI、有線LANなど多数のポートを提供する3種類のドッキングステーションを接続することができます。残念ながらX240sはドッキングステーションに対応していません。
↑T440sのみドッキングステーションに対応。 |
■タッチパッドの操作感は変化
両機種に共通する変更点として、ボタンがタッチパッドと一体化した“5ボタンクリックパッド”が採用されています。
↑トラックポイント用のクリックボタンはタッチパッドに一体化された。 |
この一体型タッチパッドは、ThinkPad Helixで最初に採用されたあと、X240sやT440sにも導入された形となります。特徴として、ThinkPadシリーズで共通の、トラックポイント用のクリックボタンが廃止されたように見えます。
しかし実際には、従来のクリックボタンの位置を物理的に押し込むことは可能です。ボタンとはクリック感が異なるものの、タッチパッドの左下や右下を押し込むように、“左上”や“右上”を押し込むことができます。さらにHelixと異なり、X240sとT440sではクリックボタンの位置に赤いラインが追加され、よりわかりやすくなっています。
ボタンの一体化により、パッドの面積は最大化され、Windows8のジェスチャー操作が快適になるものと説明されています。一方で、トラックポイントの操作中にクリックボタン上に親指を“添える”ことが難しくなり、どこに親指を置いてよいか迷いやすくなっているのも事実です。従来のThinkPadユーザーにとっては、慣れが必要かもしれません。
■タッチ対応はどうなる?
Windows8発売以降、マイクロソフトやインテルの後押しもあり、多くのノートPCがタッチに対応してきました。しかしX240sとT440sの両機種からは、タッチ対応の優先度がそれほど高くないという印象を受けます。
たとえばX240sにはタッチ対応モデルが最初から用意されるものの、T440sはタッチ非対応が優先的に投入されることになっています。
↑両機種ともタッチ対応モデルはあるが、オプション扱いにも感じる。 |
Windows8においても、ビジネスユーザーからは必ずしもタッチ操作は必須ではないとの声が多く上がっていました。さらにWindows8.1では、デスクトップを中心としたPCの利用スタイルについて、多くの改善が入る予定です。多くの操作には、X240sやT440sで大型化したタッチパッドも活用できます。
タッチ非対応モデルでは、タッチパネルを省略できるため、厚さや重量の面で優位性があり、価格も安くなるというメリットがあります。Windows8.1世代においても、タッチ非対応モデルがまだまだ生き残る可能性が高いのではないでしょうか。
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