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無料でパソコン回収してくれる会社の工場に潜入したら、よだれが出たの巻

2013年07月23日 19時30分更新

■無料でパソコン引き取りってなんかあやしくない?

 世の中には不要な家電製品などを無料で引き取ると見せかけて高い料金を請求するという、詐欺のような行為が存在する。だから「こちらは、廃品回収車です」とスピーカーを鳴らしながら回ってくる軽トラックはうかつに声をかけないほうがいいようだ。
 だけど、古くなったテレビやパソコンは捨てるのにもお金がかかる。しかも4000円とか5000円とか結構高い。だから、先述のような行為がまかり通るわけなのだが……。

 ところで、先日、週刊アスキーを読んでいたいら、こんな広告が載っていた。

アールキューブ
↑パソコン回収.comの広告。

 “簡単”、“安全”、“タダ”といった言葉が並ぶ。……なんか、あやしい。一瞬「ん? これは大丈夫なのか?」と思ってしまったのも無理はないだろう。そこで、取材を申し込んだところ、株式会社アールキューブの松永康利社長に話をうかがうことができた。
 結論から言えば、本当に無料だし、あやしくないし、大丈夫。まぁ、考えてみれば週アスにあやしい広告が載ったりするワケがないのだ。

アールキューブ
↑やってきました、埼玉県は所沢市にあるアールキューブ社。
アールキューブ
↑アールキューブ代表取締役社長・松永康利さん。

 松永社長によると、『パソコン回収.com』(関連サイト)では、たんにパソコンの回収が無料なだけでなく、送料や、家まで引き取りにいく費用も無料なのだとか。
 その理由は、“ちゃんとそれで利益が出ているから”。つまり、当たり前なのだが、送料などを負担しても商売として成り立っているということ。
 では、収入源は何か?
 2つある。ひとつは、回収したパソコンを資材としてリサイクルする。パソコンの中にあるレアメタルや銅、プラスチックなどを専門業者に売る。なかでも金は、古いパーツのほうが多く含まれているため、古いパソコンのほうがうれしいそうだ。
 2つ目は、中古パソコンとして販売する、つまりリユースする。それが、中野ブロードウェイなどにリアル店舗もある『ジャンクワールド』(関連サイト)だ。ウェブページを見ると“Core2Duo、メモリー2GB、HDD 80GB、Windows7 Pro、19インチディスプレー付き”で、1万2500円など激安製品が並んでいる。「メモリーを増やしてほしい」など、ある程度の注文も受け付けるとのこと。
 パソコン誌の編集者のように最新機種ばかり追いかけていると、なかなかわかりづらいのだが、世の中にはまだまだこういうパソコンを必要としている人(や会社、学校など)が普通にあるようだ。

 ちなみに、“リサイクル”と“リユース”の比率だが、「数で言えば、資材として売るリサイクルのほうが圧倒的に多いが、金額ベースでは6対4くらいでリユースのほうが多い」とのこと。


■PC内のデータが絶対に漏れないよう徹底管理

 パソコンを回収してもらうときに心配なのが、データの取り扱いだ。特に企業から出る中古パソコンのHDDには個人情報をはじめとして、外に出るとヤバいデータが入っている可能性がある。データは削除しただけではHDDの中に痕跡が残っているという話もある。アールキューブでは、そのあたりの管理が徹底していた。
 一番の特徴は、必ずケースを開けて中のHDDなどをチェック、すべて外して、個別に専用のPCに接続してデータ消去していること。これは、引き取ったパソコンでデータ消去プログラムを起動すると、仮にケーブルが外れているHDDがあったら、そもそも認識されずデータが消去されないからだ。チェック時には、HDDやSSDはもちろん、CD/DVDドライブにメディアが残っていないかも調べる。そして、確認のため別の人がもう一度チェックしている。ルーター製品では、場所データなどが残っていることがあるためフラッシュメモリーまで消去の対象になっているとのこと。

アールキューブ
↑これが、データ消去の部屋。回収したパソコンは、まずここに集められ、中のデータはこの部屋からは絶対に外に出ないようになっている。それはともかく、レトロPCマニアにとっても、ちょっとした鉱脈かもしれない。よだれが出る、じゅるり。

 松永社長によれば、工場では、福祉施設とタイアップして、障がいのあるかたにも働いてもらっているとのこと。彼らは作業が丁寧で集中力や観察力が高く、他の作業場よりも高い給料を支払うこともでき、社会貢献にもなっているようだ。
 余談だが、社会貢献と言えば、『パソコン回収.com』のことを調べていたら、facebookページがあって、“10いいね!されるごとに、アールキューブが木の苗を買って世界に植える活動”もしているようす。それによると、7月13日で、229本の木をモンゴルの荒れ地に植えたそう。なんかゆるキャラの愛称募集もしているようなので、気になった人は一度見てみよう。

アールキューブ
パソコン回収.comのfacebookページ。

 次に案内してもらったのが、リユース用のストックヤード+ウェブページで注文受付等作業の部屋。先述した『ジャンクワールド』のウェブページの中の人たちだ。お伺いしたときは、6~7人のかたが作業していた。新しく仕入れたPCの情報をアップしたり、ユーザーからの注文にこたえて発送したりしている。ときには、グラフィックボードなどの型番を指定して注文してくるようなこともあるとか。そのため、PCのみならずパーツの知識も必要になってくる。

アールキューブ
↑この中にシンクパッドばかり6台持っているというようなマニアもいるとか。
アールキューブ
↑“中の人”たちのすぐ後方、上の写真で言えば左側がストックヤードになっている。

 松永社長の話では月3万台くらい回収するとのことだったので、もっと膨大な数を収めた倉庫があるのかと思ったが、意外と少ない。少ないとは言っても写真で見えるように数としては多く、いわゆる「豊富な在庫」と言えるのだが。これはつまり、それだけ、商品が“回っている”という証拠にほかならない。健全な利益が出ていることの傍証とも言える。

 最後に見せてもらったのが、資材として売るために細かく分解、部品ごとに仕分けしている部屋。仕分けの精度によって業者に引き取ってもらうときの単価が違うそうで、このあたりもノウハウの塊のようなものなのだろう。

アールキューブ
↑仕分け箱よりCPUの箱を2つほど。ここもマニアにとってはよだれの出る部屋に違いない。じゅるじゅる〜。

「レアメタルなどの資源を国内で回せるのは国益にもかなっている」と松永社長。確かに、中国などから高いお金を払って輸入するのではなく、廃品などから安くリサイクルできれば、国内産業にとって有益なことに違いない。“都市鉱山”という言葉があるが、これは都市から出た廃品をリサイクルして金属などを取り出すということで、まさに日本の資源は今、山ではなく都市に、もっと言えば私たちの家に眠っているのである。
 私も次に家のデスクトップPCを買いかえたら、パソコン回収.comで引き取ってもらおうと決めたのであった。

関連サイト
パソコン回収.com 
パソコン回収.com(facebookページ) 
ジャンクワールド 

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