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Windows情報局ななふぉ出張所

“Surface推し”を強めるMSとOEMメーカーの関係はどうなる?

2013年07月03日 17時00分更新

 7月2日、日本マイクロソフトは新年度の経営方針説明会を開催し、Surfaceをはじめとするデバイスやクラウドサービスの国内展開に関する施策を発表しました。

 マイクロソフトでは米国・日本ともに7月を年度初めとする会計年度を採用しており、2013年7月1日より、新しく2014会計年度が始まることになります。

“Surface推し”を強めるMSとOEMメーカーの関係は?
↑2014会計年度の経営方針を説明する日本マイクロソフトの樋口泰行社長。

 今回は、そのなかでも特に注目を集めたデバイスの動向について考察してみたいと思います。

■Surface RTを全従業員に配布

 日本マイクロソフトは、新年度も引き続き“デバイスビジネス”を強化していくことを発表しました。これは、単なる“ソフトウェア”の会社から、“デバイス&サービス”の会社に変革していくという、マイクロソフト全体の方針に則した動きと言えます。

 この点について、「現時点でマイクロソフトはデバイスに関してリードしているとは言えない」(樋口氏)と認めており、自らをチャレンジャーと位置付けています。たしかにWindowsは、タブレット市場におけるシェアでiOSやAndroidに先行を許しているのも事実です。これに対するマイクロソフトの施策とは、「デバイスからクラウドまでをシームレスに連携するため、社内も組織横断的にチームワークを発生させる」(樋口氏)とのことです。

“Surface推し”を強めるMSとOEMメーカーの関係は?
↑Surfaceをはじめとするデバイスビジネスを強化。

 マイクロソフトのデバイスといえば、Surfaceです。なんと日本マイクロソフトでは、全従業員にSurface RTを配布したとのこと。樋口氏は「従業員ひとりひとりがセールスパーソンの心づもりで、Surface RTを業務に活用していく」と説明。Windowsタブレットを活用した業務スタイルを、日本マイクロソフト自身が実践していくことになりそうです。

 また、今後はSurfaceを含む各種Windows8/8.1デバイスを、1500名の営業部隊で“全力で”売り込んでいくと抱負を語っています。これまでは本気を出していなかったのかというと、「6月末まで、Surfaceを売っても営業にインセンティブが入らないという社内事情があった。しかし7月からは体制を変え、責任を持ってコミットメントしていく」(樋口氏)として、体制作りにも言及しました。

 6月14日より1万円の値下げキャンペーンを行なっているSurface RTについて、具体的な販売台数の話はなかったものの、「量販チャネルの数字として、4週間連続でiPadを超えた」(樋口氏)という事実を明らかにしました。「量販店における棚のスペースという意味では、まだまだiPadに負けている。にも関わらず、Surfaceの売り上げがiPadを上回った点に注目してほしい」(樋口社長)とアピールしています。

 Surfaceについて、法人からも問い合わせが増加しており、「会計年度ベースの第1四半期(2013年7~9月)中に、法人向けにSurface展開を始める」(樋口氏)と発表しました。

“Surface推し”を強めるMSとOEMメーカーの関係は?
↑7〜9月中に、法人向けにもSurfaceを展開。

■Surfaceへの注力でOEMとの関係はどうなるのか

 このように2014年度もSurfaceを強力にプッシュしていくというマイクロソフトの戦略に対して、報道関係者からはNECや富士通といったOEMメーカーとの関係悪化を懸念する声も上がっています。

 たしかにSurfaceによってマイクロソフトがPC市場に参入し、一定のシェアを獲得すれば、ほかのOEMメーカーが分け合うシェアは相対的に小さくなることが予想されます。特に日本には世界的にも知名度の高いOEMメーカーが複数存在しており、それらとの関係が気になるところ。

 こういった懸念に対してマイクロソフトには模範的な回答があります。「まずは様々なデバイスを増やすことで、Windowsエコシステム全体を盛り上げていきたい」というものです。

 さらに今回の説明会で、日本マイクロソフト 執行役 常務の香山春明氏は、「量販店のデータによれば、OEMメーカーへの影響は出ていない。むしろAndroidデバイスがわずかに下がっているようだ」と補足しています。

 これは興味深い動きと言えます。というのも、現時点でWindowsタブレットはタブレット市場のなかでもマイナーな存在だからです。これは一般消費者がタブレットを購入するとき、選択肢に入りづらいことを意味しています。

 どんなにWindowsタブレットが優れていたとしても、ユーザーが「iPadかAndroidか」の二択で悩んでいる以上、Windowsタブレットが売れる見込みはありません。

 たしかにSurface以前にも、Windows8タブレットは数機種が発売されました。しかし量販店での扱いは、PC売場やタブレット売場などまちまち。3G/LTE対応モデルも個人向けとしては存在しないため、携帯電話売場にも置かれていないという状況でした。正直に言って、iPadに比べると存在感が薄く、Androidに比べると価格が高いという中途半端な存在でした。

 重要なことは、Windowsタブレットの存在や価値をしっかりとアピールし、タブレット市場における新たな選択肢として存在感を確立することです。そういう意味で、Surfaceは十分に成功しています。量販店にも専用のコーナーが確保され、iPadに対抗できています。また、キーボードとOfficeを組み合わせることで仕事に活用できるという“わかりやすい”訴求ポイントがあることも注目に値します。

■OEMメーカーのSurface対抗策とは

 このように、まずはWindowsタブレットというジャンルが確立するまでの間、マイクロソフトとOEMメーカーが少ないパイを奪い合うのではなく、パイ全体を大きくすることが重要である、というマイクロソフトの主張には一理あると言えます。

 また、マイクロソフトはOEMメーカーへの配慮も忘れていません。6月26~28日に行なわれた“BUILD 2013”では、参加者全員にAcerのIconia W3とSurface Proが無償配布されました。しかしデバイス配布の発表タイミングは差別化され、Iconia W3に比べてSurface Proはかなり控えめな印象を受けました。

 基調講演開始前のステージではDJが会場を盛り上げていましたが、使用機材としてAcerのUltrabookが用いられており、スクリーンでもそれを強調していました。

“Surface推し”を強めるMSとOEMメーカーの関係は?
↑BUILD 2013のステージではAcerの機材が目立った。

 一方で、OEMメーカーはどのようにしてSurfaceに対抗していくのでしょうか。SurfaceによってWindowsタブレット市場が拡大することは歓迎できるとしても、Surfaceにない魅力をもった製品を投入することは必須と言えます。

 マイクロソフトができないという意味では、Androidは有力な選択肢です。COMPUTEX TAIPEI 2013でASUSは、Windows8タブレット製品を発表する代わりにWindowsとAndroidのハイブリッドPCを発表しました。また、サムスンはATIV Qに、Windows上でAndroidを動作させるデュアルOS機能を搭載。いずれもWindowsとAndroidの両方を活用できることをセールスポイントとしつつ、Surfaceに対する明確な差別化策にもなっています。

 樋口社長によれば、Iconia W3から始まった小型Windowsタブレットについて、今年後半は続々と新製品が登場するとのこと。もちろん、年内正式リリースというWindows8.1とも連携した動きになりそうです。今後のWindowsタブレット市場にとって、SurfaceがほかのOEMにどのような影響を及ぼしていくのか、注目したいところです。

“Surface推し”を強めるMSとOEMメーカーの関係は?
↑説明会後の懇親会では“Surfaceケーキ”も振る舞われたが……。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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