前編はこちら↓
電子書籍の未来はガラケーにあり!?(前編)
■ガラケーに(結果的に)最適化されていた電子書籍
つい最近まで、日本における電子書籍市場の大半はガラケーを中心に発展してきました(2011年度、629億円の市場の約75%はガラケー向け) (関連サイト)。
その理由として「リアルな店舗では買いにくいちょっとHな作品がウケた」と一般には言われていますが、それだけではないような気がします。
もっと重要なポイントとして、当時は、配信容量や画面サイズの制約があったために、結果的に、ガラケーでのコンテンツ利用スタイルに最適化されていたのです。
コミックは1冊を10~15分割した「小さい商品」として販売。また、小さい画面サイズでも読みやすいように、1コマずつ切り出して表示するなど、紙の常識では考えられない表現方法を確立しました。
ケータイ小説についても同じことが言えます。一文が短い独特な文章スタイルも、ガラケーの小さい画面に適応していった結果だと考えられます。
いずれも、短期間で大きな市場を創出しました。
スマホや専用端末へとその市場を移行しつつある今、ユーザーにとって、最適な「本」とはどのようなものでしょうか?
PCや、Kindleなどの電子書籍専用端末のユーザーにとっては、紙の本と同じものを電子化した商品が喜ばれるのかもしれません。この層は紙の本もたくさん読むけれど、保管場所や持ち運びの便から電子書籍に移行していく可能性があります(すでに移行している人もいます)。
ではスマホではどうでしょう。
スマホでのコンテンツ利用シーンで顕著なのはその利用時間です。同じく「スマートフォン読書調査」(関連サイト)の結果から、1日あたりの電子書籍の利用時間は平均で10分程度、音楽やゲームでも30分程度がボリュームゾーンとなっています(読まない日も含めての平均)。PCや専用機器での利用に比べて、時間は短く、空き時間や寝る前などのちょっとした時間に少しだけ楽しむ、というスタイルのようです(次図参照)。
このことは、読者が「払っても良い」と感じる価格帯についても同様で、電子書籍は紙の本に比べて明らかに単価が低くなっています(同調査より)。
スマホユーザーは、音楽やゲームと同じく、少額のものを少しずつ買うことに慣れているのでしょう。逆に言えば、スマホで高額なものを購入するのは、まだ、心理的にハードルが高いのかもしれません。
そう考えると、スマホユーザーにとって現状の電子書籍は、ボリューム・価格ともに大きすぎるのかもしれません。
そこで今、出版社の中からも、スマホの利用シーンに最適化されたコンテンツを提供しようという動きが出てきています。マイクロコンテンツと呼ばれるもので、文字通り「小さいコンテンツ」です。中身は雑誌や新聞の記事をまとめたものや、書き下ろしまで様々ですが、共通しているのは紙の本に比べてボリュームも価格も控えめなことです。
角川グループでも、「ミニッツブック」という電子書籍レーベルを2013年3月に創刊しました。
『仕事&プライベートがはかどる ライフハックiPhoneアプリ おすすめ超厳選10』『こんなゲームがあったのか!? 名(迷)作iPhoneゲーム おすすめ超厳選15』などのIT・アプリ系、『パブリックシフト ネット選挙から始まる「私たち」の政治』などの時事もの、その他、松尾スズキや大江千里のエッセイ、人気ビジネス書のスペシャルダイジェスト版まで、様々なジャンルのものが、30分前後で読み終わる分量で、価格も100円~300円程度で読むことができます。
これらの新しい動きがきっかけとなり、スマホでの読書体験が一般ユーザーに受け入れられれば、「本」の新しい居場所を創り出すことにつながるかもしれません。
今後、日本の電子書籍市場が、アメリカ型で大きくなっていくのか。それとは別に、ガラケー時代のように端末や利用シーンに合わせて独自に最適化されていくのか。あるいは全く異なるサービスやデバイスと出会うのか。これからが楽しみです。
スマートフォン読書調査
2013年6月に株式会社角川アスキー総合研究所と株式会社ブックウォーカーが共同で行った、スマートフォンにおける読書利用状況を調べたインターネットアンケート
■関連サイト
ミニッツブック公式サイト
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