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ドコモから発売予定の新OS『Tizen』セミナーレポート

2013年06月26日 20時30分更新

 “第3のOS”として注目を集めるTizen。アプリの開発に、Webと同じ言語のHTML5を利用でき、サムスンやドコモ、インテルといったプレイヤーが導入を推進している。日本では、今年下期にドコモから端末が登場する予定だ。このTizenのアプリを開発する開発者に向けたセミナー『Tizen Developer Lab』が19日、インテルによって開催された。同セミナーでは、インテルやディベロッパーから、Tizenの特徴や開発ツール、マーケットのへの登録の仕方などが紹介された。ここでは、その中からユーザーにとって“Tizenとは何か”をつかむの必要な情報をピックアップしてお届けしよう。

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↑セミナーでは、アプリ開発者用のTizen端末も紹介された。サムスン製で、GALAXY SIIIをベースにしたものと思われる。

 セミナーの冒頭には、インテルのソフトウェア・サービス戦略本部アライアンス・マネージャーの柳原明人氏がインテルのTizenに対する取り組みを紹介。Tizenは、従来のスマートフォン向けプラットフォームとは異なり、HTML5でアプリを作成できる特性を挙げ、「オープンなイノベーションが新しい市場を作る。インテルだけでなく、デバイスメーカー、ソフトウェア開発者、キャリアなど、いろいろな会社にもチャンスが生まれる」と語った。

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↑インテルがなぜTizenやHTML5に取り組んでいるのかを語る柳原氏。

 続いて登壇したのは、アプリ開発会社ピーシーフェーズの技術本部アプリケーション開発部マネージャーの松園勝喜氏で、Tizenの概要やストアの特徴を紹介した。松園氏はTizenの特徴を「モバイル以外の様々なカテゴリーをターゲットにしたOS。オープンソースなので誰でも自由に利用でき、たとえばシニア向けのデバイス、子供向けのデバイスといったように、メーカーが自由に開発した端末が登場することが期待できる」と話した。開発者が期待するのは、やはりHTML5だ。

 「Web開発者の皆さんが知っているHTML、JavaScript、CSSに、Tizen用のAPIを知っているだけでいい。アプリも、クロスプラットフォームでの開発がとてもスムーズにできる」

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↑ピーシーフェーズの松園氏が、Tizenの概要を紹介した。
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↑Tizenの主な特徴。オープンなプラットフォームで、幅広いメーカーが参画できる。
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↑Webにリッチなコンテンツが求められるようになり、HTMLは徐々に進化を遂げてきた。その最新版が、Tizen上でも動くHTML5だ。

 Webアプリだが、Tizenではアプリをパッケージとしてインストールするため、APIを通じて端末の各種機能へのアクセスが可能になる。そのため、ユーザーの側では特にHTML5であることを意識せず、スマートフォンのアプリとしてこれらを利用することが可能だ。パフォーマンスが低いと思われがちだが、「OpenGL 2.0やOpenGL ES 2.0をサポートしているため、特別なプラグインも必要なく3Dグラフィックスが使える。3DがWeb開発者にとって、非常に身近なものになる」(松園氏)という。HTML5を実行した際のスコアも高く、「iOSは主要なOSの中ではHTML5のレスポンスがよくできていると思っていた人が多いと思うが、そのiOSと比べてもTizenの方が大幅に高い」(松園氏)という。

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↑Tizenは、iOSやAndroidと比べてもHTML5の実行能力に優れたプラットフォームとなっている。
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↑3DグラフィックスもHTML5で動作している。
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↑ウェザーニューズ社のアプリも、HTML5で作成された。

 一方で、“Webでは実現できないとなれば、ネイティブでの開発というスタイルもサポートしている”のがTizenが他のプラットフォームと異なる点だ。たとえば、ネイティブアプリには画像認識のAPIが用意されており、こうした機能を使う場合はHTML5だと実現が難しい。こうしたときには、無理をせずネイティブアプリを利用できるというわけだ。

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↑ネイティブアプリについては、サムスンのドクス氏が解説した。

 そのネイティブアプリについては、サムスン電子のサービスオペレーションチーム メディアソリューションセンター エヴァンジェリスト/エンジニアのドクス・ハン氏が詳細を開発者に解説した。Tizenのネイティブアプリには2つの種類があり、通常のアプリのほかに「フレームワークとしてUIを持たず、バックグラウンドで動くような選択もできる」(ドクス氏)。「UIサイドはWebで実装して、ネイティブから機能を得てデータを渡すこともできる」(ドクス氏)という特徴もある。オーディオプレイヤー、録音、録画、カメラ、音声処理といった、多彩な機能を利用できるのがネイティブアプリならではのメリットだ。

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↑UIを持つアプリ、持たないアプリを作成でき、HTML5とのハイブリッド方式にも対応する。利用できるAPIの種類も多彩だ。

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↑試作機にもNFCやギャラリーが搭載されており、こうした機能はアプリから呼び出すこともできる。

 このHTML5アプリとネイティブアプリ、2つを配信するのが『Tizen Store』だ。現時点でも「すでにCP(コンテンツ・プロバイダー)登録が始まっている」(松園氏)といい、iOSやAndroidと同様、アプリの審査も行われる。「審査は3日以内に行われて、リジェクトがあった場合、レスポンスが返ってくる。認証システムは自動だが、オペレーターによる手動審査もある」(松園氏)という。アプリ内課金や、キャリア決済にも対応しているという。

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↑Tizen Storeへの登録はすでに始まっている。有料アプリを販売するには、4つのステップがある。

 UIにもガイドラインがあり、たとえば、アイコンは円形のものが必須となる。そのほかにも推奨されるUIのガイドラインが公開されており、アプリ内の構造や、フォント、カラーパレットなどもその中で確認することができる。このガイドラインに準拠すれば「強制ではないが、Tizenアプリであることを主張でき、ほかのアプリから孤立しないデザインになる」(ピーシーフェーズ 技術本部 アプリケーション開発部 UI/UX/アプリグループ 皆川広毅氏)。

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↑TizenのUIガイドラインを紹介する、ピーシーフェーズの皆川氏。
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↑アイコンの形状や、フォント、色、アプリ内の階層など、様々な項目がガイドラインで定められている。ただし、多くは“推奨”で、必ずしもここに準拠している必要はない。

 また、Tizenには“ホーム画面にダイナミックボックスがある”のもUIの特徴だ。これは、Androidにおけるウィジェットに近い機能で、タッチすると画面が展開してより詳細な情報が表示される。こうした機能を取り込んでいくことで、アプリに“Tizenらしさ”を出せそうだ。

 こうした開発者に向け、『Tizen App Challenge』という総額4億円のアプリコンテストが実施されている。初の商用端末発売に向け、アプリのエコシステムも着々と強化されていることがうかがえる。

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↑Tizen App Challengeの賞金総額は、なんと4億円。日本は早くから端末が発売される国だけに、開発者にとってもチャンスが広がりそうだ。

 着々と開発されている注目のモバイル新OS『Tizen』。週刊アスキー936号(6月25日発売号)には、Tizenの歴史や発売予定キャリアのドコモへのインタビューも掲載! 一足お先にTizenを知るチャンス!!

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