2012年10月、国内携帯キャリア各社のWindows Phone最新動向をまとめた記事を執筆してからはや半年――果たして日本のWindows Phoneはどうなったのでしょうか?
今回は携帯キャリア各社の2013年夏モデルの発表会をもとに、日本におけるWindows Phoneの最新状況をまとめてみたいと思います。
■ソフトバンクはスプリント買収後に注目
ゴールデンウィーク明けとなる5月7日、携帯キャリア大手3社のなかで最初に発表会を開催したのがソフトバンクです。発表会のなかで孫正義社長が「主力はiPhone」と言及するように、あくまでソフトバンクの主力端末はiPhone。それを補完するように6機種のAndroidスマートフォンが発表されました。
↑ソフトバンクの孫正義社長。 |
ソフトバンクの目下の課題は、米スプリントの買収です。孫氏は発表会当日の夜にも米国に飛び、機関投資家との話し合いに臨むと語っており、いかにも多忙といった様子。発表会後の5月23日には米州当局の承認を得るなど、着々と進行しています。
↑スプリント買収成立後に注目(4月30日の決算発表会より)。 |
第3のOSについて孫氏は、「iOSとAndroidを中心に展開していく」とコメント。新しいプラットフォームはつねに視野に入れているものの、実際に採用するには盛り上がりを待つという、やや保守的な姿勢を見せています。
現在のところWindows Phoneの可能性は見えてこないものの、スプリントの買収成立後にはなにが起きるか未知数です。今回の発表会の時点では、スプリント向けの具体的な端末は発表されていません。しかし買収が成立すれば、海外向けモデルの国内展開の可能性も出てくるはずです。
残念ながらスプリントはWindows Phoneに積極的なキャリアではありませんが、すでにライバルのT-Mobileは『Lumia 521』でヒットを飛ばしていることから、いつスプリントがWindows Phone 8端末をラインナップに加えてもおかしくない状況です。
■NTTドコモの状況には変化なし
5月15日に発表会を開催したNTTドコモは、以前からWindows Phone 8の発売を示唆してきました。2012年の冬モデル発表会で加藤薫社長は、「Windows Phone 8はいろいろな事情で遅れている」とコメント。さらに1月22日の春モデル発表会でも「Windows Phone 8は日本では少し遅れそう」と語っています。
↑NTTドコモの加藤薫社長。 |
↑夏モデルは“ツートップ”を中心に展開。 |
残念ながら、今回の夏モデル発表会においても、「以前に回答した時点から状況は変化していない」(NTTドコモ広報部)とのコメントにとどまっています。“遅れ”の原因についても新しい情報はなく、あくまで「ユーザーからの要望が大きく高まれば検討を進める」との姿勢をとっています。
Windows Phone 8についての進展がみられないなか、ドコモは新OSとしてTizenの導入を表明。5月22日より開催された“Tizen Developer Conference”において、NTTドコモの杉村領一氏は2013年下半期にTizen端末を出荷することを明らかにしたと報じられています。
このことから、冬モデルの発表会、あるいはさらに早い段階でTizen端末が発表される可能性があります。さらに今秋の発表が予想される次期iPhoneについて、ついにドコモからも発売されるのではないかという見方が広がっています。
これらを総合すると、ドコモの冬モデルには“ツートップ”のように強力なAndroid端末とTizen、場合によってはiPhoneが加わることになります。その一方で、プラットフォームとしての完成度やアプリ数など、Windows PhoneはTizenを上回る実績を持っていることも事実。
今秋以降、急速に充実する可能性のあるドコモの端末ポートフォリオに対して、Windows Phoneがどのように存在価値をアピールできるのか、興味深いところです。
■KDDIからも新機種なし、当面はIS12Tを継続
3キャリアのなかでは最後となる5月20日に発表会を開催したKDDIは、夏モデルのスマートフォンを4機種に厳選するという思い切った施策が話題となりました。それぞれに特徴のある端末ではあるものの、残念ながら4機種のなかにWindows Phoneは含まれていません。
↑KDDIの田中孝司社長。 |
↑残念ながらIS12Tの後継機はなし。 |
2011年8月25日のIS12T発売から、この夏で2年が経過することになります。そのため、Windows Phoneの新機種が最も期待されていたキャリアがKDDIでした。
2012年冬モデルの発表会では『INFOBAR A02』のティザー動画が披露されたこともあり、Windows Phoneに関するサプライズも期待されたものの、発表会中での言及はありませんでした。
KDDI広報によれば、現時点で「Windows Phoneの新機種の予定はない」とのこと。この点について発表会後に詳細を確認したところ、あくまで「未発表端末の予定や展望についてはコメントを控える」という意味とのこと。新機種の可能性がなくなったわけではない、と言っていいでしょう。
また、既存のWindows Phoneユーザーからの要望の声も、特に認識していないとのこと。この点について、KDDIにはiPhoneやAndroidを中心に莫大な数の要望が届いていると思われるため、相対的にWindows Phoneについての声がかき消されてしまっている可能性が考えられます。
なお、現時点で最新のWindows Phone端末となる『IS12T』について、KDDIでは“auオンラインショップ”(外部サイト)で販売が継続されています。KDDIによれば「IS12Tは現行モデル」とのこと。すでにIS12TにはWindows Phone 7.8へのアップデートが提供されており、新しいスタート画面などWindows Phone 8の機能の一部が搭載されています。
KDDIに詳しい関係者によれば「Windows Phoneは当面難しいのでは」との発言もあるものの、なんとか後継機の可能性に期待したいところです。
■スティーブ・バルマー氏もWindows Phoneへの取り組みを明言
すでに世界シェアではBlackBerryを抜き、第3のOSとしての地位を確実なものにしつつあるWindows Phoneですが、なぜか日本では発売されない状況が続いています。
こうした状況について、5月23日に来日したスティーブ・バルマー氏も把握。報道関係者向けの講演では、「Windows Phone 8はまだ日本で発売されていないが、一刻も早く発売できるよう全力で取り組んでいる」とコメントしています。
↑Windows Phone 8についてコメントするスティーブ・バルマー氏。 |
このバルマー氏の発言を受けて、日本マイクロソフトも「将来の提供に向けて全力で取り組んでいる」ことを明らかにしました。具体的な取り組みについては「準備が整った段階でご案内する」としています。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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