GPUチップ本体はTITANと同じ『GK110』でCUDAコア数は少ないがクロックは上
5月23日、ついにNVIDIAがデスクトップ版GeForce 700シリーズの第1弾となる『GeForce GTX780』を発表しました。カード本体は先日上海で行なわれた『GeForce eSports』の開会式でもチラ見せされた通り、TITANそっくりなクーラーに『GTX 780』と刻印されたもの。
GPU名 | GTX780 | GTX TITAN | GTX680 |
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コア名 | GK110 | GK110 | GK104 |
製造プロセス | 28nm | 28nm | 28nm |
SP数 | 2304基 | 2688基 | 1536基 |
コアクロック(ブースト時) | 863MHz/900MHz | 837MHz/876MHz | 1006MHz/1058MHz |
メモリー転送レート | 6008MHz相当 | 6008MHz相当 | 6008MHz相当 |
メモリータイプ | 3GB GDDR5 | 6GB GDDR5 | 2/4GB GDDR5 |
メモリーバス幅 | 384bit | 384bit | 256bit |
TDP | 250W | 250W | 195W |
補助電源 | 8ピン+6ピン | 8ピン+6ピン | 6ピン×2 |
気になる中身は、新シリーズではありますが、残念ながら新アーキテクチャーではありません。GeForce GTX TITANと同じGPUダイである“GK110”を使いつつも、ストリーミングプロセッサー(SP)数を減少させ、コアクロックはやや高い、という位置づけの製品となっています。GTX780とTITAN、そしてGTX680の主な仕様を表にまとめてみましたが、GPUに詳しい読者であればこれだけでも、GTX780がじゃっかんTITAN寄りの中間的な仕様であることが掴めるのではないでしょうか。
また機能面でも『GPU BOOST 2.0』をはじめ、TITANで導入された機能は基本的に継承されています。さらにリファレンスカードで搭載されるクーラーもTITANと同仕様。ベイパーチャンバー採用のヒートシンクと高性能なブロアーファン、そして地味にコストの掛かりそうなアルミフレームまでも同じです(もちろん、型番の刻印は違っていますが)。筆者が担当する週アス本誌の『新義リークス』では、“GeForce GTX TITAN LE”という製品のウワサがあったことをお伝えしましたが、この名前が体を表していると言えるでしょう。
ただし、ちょっと気になるのが販売価格。GTX780はGTX680の後継として位置づけされますが、NVIDIAの推定小売価格は8万4980円で、登場当初の店頭価格は9万円台になるとみられています。GTX680が発売当初6万円前後であったことを考えると、こちらもTITANに近く、後継機というより上位機種にあたるようです。
また、新機能として“ADAPTIVE TEMPERATURE CONTROLLER”が発表されています。GPU BOOST 2.0は80度を維持できる範囲でクロックをアップする機能でしたが、その温度を維持するためにファンの回転数が上下していました。ファン回転の挙動を効率化してファンノイズを抑える仕組みが加えられています。
さらに、ゲームのグラフィック設定を自動的に最適化するソフト『GeForce Experience』にも新機能を追加。“SHADOWPLAY”は、KeplerアーキテクチャーのGPUがもつH.264エンコーダーを利用して、バックグラウンドで常にゲームを録画するもの。ソフトウェアベースの録画ソフトに比べてハードウェアリソースを奪わないのがメリットです。GeForce 600シリーズ移行で利用でき、今夏から使える予定とのこと。最近話題の『SHIELD』や『NVIDIA GRID』のベースとなる機能なのではないか、と推測できる注目機能です。
GTX680との新旧直接対決!!
今回は比較対象として、GeForce GTX680のリファレンスボードを準備しました。GeForce GTX TITANが準備できなかったのが残念なところですが、新旧直接対決ということでご了承ください。
ベンチマーク環境
CPU:Core i7-3770K(3.5GHz)、マザーボード:ASUSTeK『P8Z77V PRO』(Z77)、メモリー:Silicon Power 『SP008GBLTU133V21』(PC10600 DDR3 4GB×2)、SSD:Kingston『HyperX SH100S3/120G』(120GB)、電源ユニット:ENERMAX『EPG600AWT』(600W、80PLUS GOLD)、OS:Windows8 Pro(64ビット)、ドライバー:320.18(GTX780)/314.22(GTX680)
性能は良くも悪くも“狙い通り”?
まずは新『3DMark』の結果から比べていきましょう。単体グラボ用の“Fire Strike”と“Fire Strike Extreme”で計ってみました。
GTX780は680に対して約32%アップ、Extermeでは約38%アップのスコアを出しており、きっちりと仕事をしている印象です。スコアの伸びが出やすい3DMarkではありますが、もともと十分高速なGTX680に対してこれだけの差を付けているのであれば、価格の面はさておくとしても、新シリーズとしての貫禄はありそうです。
続いて、ゲーム本編が期待される『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編』で試してみます。解像度は1920×1080ドットのフルHD、最高画質にしています。
こちらは3DMarkほどの伸びは見られず、約9%ほどに留まりました。なおゲーム自体はGTX680でも“非常に快適”と判断されるレベルで、目視でも十分滑らかに動作しています。
最後に、超重量級FPSの代表格として『クライシス3』で試してみます。解像度は1920×1080ドット、画質およびテクスチャー解像度を“最高”に、アンチエイリアスを“SMAA 2TX”に設定しています。検証はステージ2の中盤、防衛タワーとの戦闘時の比較的安全な草むらを移動する際のフレームレートを『Fraps』で計測しています。背の高い草の数が多く重いシーンです。
平均と最低フレームレートでは13%、最高フレームレートでは31%の向上になりました。平均フレームレートで見ると意外な伸び悩みという印象がありますが、最高フレームレートの伸びだけが大きい点を見ると、グラボ以外の要因もありそうです。
消費電力はどうでしょうか?サンワサプライの『ワットチェッカー』を使い、システム起動後10分後のアイドル時と『3DMark』のFire Strike Extremeテストでの最高値を計測しました。
アイドル値では、780が680より低い点に注目。これはTITANでも見られた傾向ですので、GK110チップでの改良点と言えそうです。高負荷時は約50ワットアップと、公式のTDP差に近い上昇率で、やはりここも“TITANの直系”を感じさせます。ただし、電力効率(いわゆるワットパフォーマンス)という点からすると、しっかりと680より向上させている点は侮れません。
位置づけはピッタリだが、当面は価格がネックに?
GTX780はGTX680に比べてもきっちりと性能と電力効率の向上を見せており、十分に後継モデルとして位置づけられる存在といえるでしょう。700番台を名乗ることに関しては複雑な思いもありますが、少なくともその実力は確かなものです。
ただしネックはやはり価格。GK110や3GBメモリ搭載であること、そして円安基調を考えるとGTX680より高くなるのはある程度やむなしとは思いますが、もう一声二声ほど安価になると、盤石な地位を築けると思えるのですが。市場価格の動向に期待したいところです。
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