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3キャリア発表会総括 LTEのつながりやすさなど、スマホ競争は新たな段階へ

 日本の携帯電話主要3キャリアの、夏商戦に向けた新機種・サービスが相次いで発表された。改めて各キャリアの発表内容を振り返ると、そこにはある共通した狙いを見ることができる。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ
2013夏スマホ 3キャリアまとめ
2013夏スマホ 3キャリアまとめ

↑主要3キャリアが夏商戦向け発表会を実施。それぞれの個性を打ち出す戦略を示した発表内容となった。

 今回の各社の夏商戦戦略において、とくに注目を集めたのが新製品スマホの投入数と、その販売施策についてだ。まず、新型スマホの数を見ると、ドコモが10機種、ソフトバンクが6機種、auに至っては4機種と、従来より大幅に少なくなっているのがわかる。

 また新機種の販売戦略においても、大きな戦略転換が実施されている。それを象徴するのがドコモで、同社は『GALAXY S4 SC-04E』と『Xperia A SO-04E』の実質負担額を大幅に割り引くなどして、それ以外の新機種よりも手厚く販売する“ツートップ戦略”を打ち出した。このことは、選ばれた端末とそれ以外とで、販売面で大きな差がつくことになることになり、業界全体に大きな波紋を呼んだ。

 しかしなぜ、各社とも投入するスマホのモデル数、あるいは積極的に販売するモデルの数を絞り込んでいるのだろうか。その要因には、市場に大きな変化が起きていることが挙げられる。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ

↑ドコモは新機種の中から2機種の販売を優遇する“ツートップ”戦略を発表、大きな波紋を呼んだ。

 実は、日本で初めて『iPhone3G』が販売されてからもうすぐ5年、『Xperia SO-01B』や『IS03』などのAndroidスマホが日本で積極的に販売されるようになってから、およそ3年が経過している。このあいだ、キャリアがスマホの販売に積極的となったことで、市場には多くの端末が投入され、欲しい人には既に行き渡っている状況となった。3年も経っていれば、いわゆる“2年縛り”の影響も解けていることから、古いスマホから新しいものへと、買い替えをする人も出てきている。

 しかし一方で、ユーザーに好まれる端末販売戦略を取っていては、現在もフィーチャーフォンを使い続けているユーザーを取り込むのは難しいということも、この数年で明らかになってきている。KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、今回の発表会で「auのスマートフォン普及率は37%」と話しているほか、決算資料などを見ると、ドコモのスマートフォン利用者も、契約者全体の3分の1程度であることがわかる。

 そこで各社が躍起になっているのが、現在も多数派を占めるフィーチャーフォン利用者の取り込みだ。スマホに興味関心がなく、乗り換えに積極的でない人たちにとって、店頭に似たような形の端末がたくさん並んでいる現在の状況は“わかりにくい”ものでしかない。それゆえ、各社はラインアップを絞り込んで選択肢を少なくしたり、“イチオシ”のモデルを用意したりすることで、店頭での選びやすさを重視しようとしている訳だ。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ

↑auは新機種自体を4つに絞り込み、それぞれに特徴を持たせることで顧客にわかりやすさを提供する施策を実施。

 フィーチャーフォンからの移行を狙う動きは、個々の端末からも見て取ることができる。ドコモであれば、ケータイのインターフェースに近い“シンプルUI”を搭載した機種を2つ用意してきているし、auも『URBANO L01』に同種のUIを搭載するなどして、フィーチャーフォン利用者に安心感を与えようとしている。またドコモに続いて、ソフトバンクもシニア向けの『シンプルスマホ 204SH』を投入。スマホに乗り換えたいシニア層を狙う動きを見せている。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ

↑ドコモは、従来のiモードケータイに近い“シンプルUI”を『MEDIAS X N-06E』など2機種に搭載し、乗り換えを狙う。

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↑ソフトバンクも『シンプルスマホ 204SH』でシニア向けスマホに参入。画面の一部を拡大できる“かんたんズーム”など独自の機能を備える。

 端末と同時に、注目を集めたのがネットワークに関する取り組みだ。なかでもソフトバンクは、新製品発表よりもネットワークの充実をアピールするのにプレゼンテーションの時間を割くなど、異例ともいえる取り組みをしている。

 同社がネットワークの充実度合いをアピールする背景のひとつには、ソフトバンクが米スプリントの買収合戦があり、ネットワーク面における自社の優位性を強調したい狙いだ。だがもうひとつの狙いとしては、やはりMNPによるユーザーの取り込み、とくに他社のフィーチャーフォンユーザーを取り込みたいという狙いがあると見ることができよう。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ
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↑ソフトバンクは、新製品よりもネットワークの充実に多くの時間を割いて説明していた。

 ソフトバンクはiPhoneでスマートフォンへいち早く参入しただけでなく、iPhoneの販売に注力した取り組みをすることにより、ユーザーにわかりやすさを与え、多くの顧客を獲得してきた。それゆえ他社よりスマホ利用者の比率は高いと見られるが、一方でauがiPhoneを販売するようになって以降、MNPによるユーザーの獲得は落ち込んでいる。

 他社が多く抱えるフィーチャーフォン利用者は、ソフトバンクにとって魅力的な存在となる。それだけに、知名度の高いiPhoneを主軸とするわかりやすさを武器として、他社ユーザーを取り込みたい狙いが同社にはある。しかし他社のユーザーが乗り換える上で壁となっているのが、“つながりにくい”というイメージだ。同社は近年、多額のインフラ投資を実施するなどして改善に力を入れており、実際につながりやすくなったというデータは出ているものの、それがユーザーのイメージの改善にはつながっていない部分もある。

 それでソフトバンクは、つながりやすさの面で他社を上回ったことを強調する取り組みを積極的に実施している。イメージを改善することでMNPでのユーザー獲得を拡大したい狙いがある。こうした動きに対し、MNPで多くのユーザーが流出しているドコモも、接続率やインフラの高速化などを積極的にアピール。対抗する姿勢を打ち出している。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ

↑ドコモは富士山のXiエリア化を公表するなど、Xiのネットワーク充実さをアピール。

 だが一方で、この土俵に乗ろうとしていないのがauだ。auは今年に入り複数回の大規模なネットワーク障害を起こしているのに加え、“4G LTE”のエリア表記に不当な表示があったとして消費者庁から措置命令も受けている。ネットワークに関する問題が多く発生しているため、それをアピールするのが難しいというのが、理由のひとつにあると考えられる。

 だが、現在auがMNPによる会員獲得でトップを走るなど有利な立場にあることも考えられる。それゆえauはネットワーク施策よりも、スマホ初心者に向けた手厚いサポートサービス“auスマートサポート”を提供するなど、サービス面に注力することで自社フィーチャーフォンユーザーの流出を防ぐ動きを見せている。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ

↑MNPによる加入者獲得が好調なauは、きゃりーぱみゅぱみゅさんと“のりカエル”を起用した新CMで、さらなる“乗り換え”を促す。

2013夏スマホ 3キャリアまとめ

↑ネットワーク施策のアピールは控える一方、“auスマートサポート”などサービス面での充実さをアピール。スマホ初心者に訴える施策に出ている。

 夏商戦における各社の取り組みからは、スマホがもはや“目新しいもの”から“日常的なもの”へと変化しつつある印象を強く受ける。スマホに最初に飛びついた先進層と、これからターゲットにする層とでは購入や利用の傾向が大きく異なるだけに、キャリア各社には今後も、大きな戦略転換が求められることになるだろう。

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