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Windows情報局ななふぉ出張所

第3のOSはWindows Phoneで決まり?

2013年05月22日 17時00分更新

 米国の調査会社IDCが5月16日(米国時間)に発表した世界のスマートフォン市場調査(外部サイト)において、2013年第1四半期にWindows Phoneのシェアが3位に上昇したことが話題となっています。

 同四半期のWindows Phoneの出荷台数は700万台で、スマートフォンOSとして3.2%のシェアを確保しています。そこで今回はこれまでのIDCによる調査を振り返りつつ、Windows Phoneが3位になった背景を考えていきましょう。

■Windows PhoneがBlackBerryを抜いて3位に

 まずはIDCによるプレスリリースから、2013Q1の出荷台数とシェア、前年同期のデータをまとめた表を抜粋します。

世界のスマートフォンOSの出荷台数とシェア(IDC調べ)
  2013Q1
出荷台数
(百万台)
2013Q1
市場シェア
(%)
2012Q1
出荷台数
(百万台)
2012Q1
市場シェア
(%)
前年同期比(%)
Android 162.1 75.0 90.3 59.1 79.5
iOS 37.4 17.3 35.1 23.0 6.6
Windows Phone 7.0 3.2 3.0 2.0 133.3
BlackBerry 6.3 2.9 9.7 6.4 -35.1
Linux 2.1 1.0 3.6 2.4 -41.7
Symbian 1.2 0.6 10.4 6.8 -88.5
その他 0.1 0.0 0.6 0.4 -83.3
合計 216.2 100.0 152.7 100.0 41.6

 

 今回の調査結果で最初に注目したいのは、Windows Phoneの出荷台数がついにBlackBerryを上回ったという点です。これまでBlackBerryは下落傾向にあり、Windows Phoneは上昇傾向にあったため、将来的に両者が逆転することが期待されていました。

 両プラットフォームの推移を端的に示すために、IDCの過去の調査をもとにWindows PhoneとBlackBerryの出荷台数を抜き出したグラフを作成しました。

第3のOSはWindows Phoneで決まり?

 グラフは2011Q1~2013Q1の2年間を示しています。これを見ると、2013Q1にWindows PhoneがBlackBerryを見事に逆転したことがわかります。

 今年のMWC以降、“第3のOS”としてFirefox OSやTizenが話題となる機会が増えました。しかし世界シェアという観点では、これまで第3位だったBlackBerryをWindows Phoneが追い抜いたことで、Windows Phoneが“第3のOS”になったといっていいでしょう。

■いま勢いのあるスマホOSはAndroidとWindows Phoneだけ?

 各プラットフォームの勢力を分析する上で、出荷台数やシェアと同じくらい興味深い値が“Year over Year Change”(前年同期比)です。IDCの調査では、スマートフォン市場の四半期ごとの前年同期比はだいたい40%台。やや成長は鈍化しつつあるものの、これは“スマートフォン市場が前年同期比で40%拡大する傾向が続いている”ことを示しています。まだまだ成長を続けているわけです。

 しかし40%という市場平均の伸び率を上回っているスマートフォンOSは2つしかありません。2013Q1では、Android(前年同期比79.5%増)とWindows Phone(同133.3%増)です。特にWindows Phoneは2012Q2以降、4四半期連続で100%以上の伸び率を示しており、かなりの存在感を示しています。iOS(同6.6%増)もプラスで推移しているものの、徐々に頭打ちの傾向にあります。

 BlackBerry・Linux・SymbianなどIDCが調査対象としているそのほかのOSは、いずれも前年同期比で減少に転じており、市場全体の伸びに追いついていないことがわかります。

 それでは、今後もWindows Phoneが伸び続けると仮定して、将来的にAndroidやiOSを上回る日はやってくるのでしょうか。この点で筆者が注目しているのはWindows PhoneとほかのOSの出荷台数比率です。IDCの調査をもとにして、Windows Phoneが1台売れるごとに、AndroidやiOSが何台売れているかをグラフに示してみます。

第3のOSはWindows Phoneで決まり?

 たとえば最新の2013Q1の時点で、Windows Phoneが1台売れるごとにAndroidは23.2台、iOSは5.3台売れていることがわかります。グラフが示すように、台数は大きく上下しています。ただ、急速に広がったり、縮まったりする傾向は見られません。現時点でWindows Phoneは健闘しているものの、AndroidやiOSとの差を急速に詰めるほどではない、といってよいでしょう。

■Windows Phoneの行く手はなかなか厳しい

 このように第3のOSとしてじょじょに存在感を高めつつあるWindows Phoneですが、一方でスマートフォン市場のプレーヤーはAndroidとiOSの2つに絞られつつあります。これを端的に示すために、同じくIDCの調査にもとづいて、AndroidとiOSのシェア推移をグラフ化しました。

第3のOSはWindows Phoneで決まり?

 2011Q1から2013Q1の2年間、Androidのシェアは上下しつつも伸びています。iOSは横ばいといったところでしょう。しかしここで注目したいのは、AndroidとiOSのシェアを合計したオレンジの線です。この2年間、AndroidとiOSの合計シェアは一貫して伸び続けており、2012Q4にはついに90%を突破しました。

 以前から、スマートフォン向けアプリやサービス、周辺機器の多くが、iOSとAndroidにのみ対応する傾向にありました。このように市場の寡占化が進むことにより、その傾向が今後も続く、あるいは強化される恐れがあります。これはWindows Phoneにとって逆風となるでしょう。

 また、Androidがスマートフォン市場の75%を占めていることで、Googleの影響力が大きすぎる点も懸念されます。GoogleはWindows Phone用アプリの提供に積極的ではなく、Windows PhoneはGoogleのサービスを使いやすい環境とは言えません。この状況を改善するには、マイクロソフトがGoogleとなんらかの取り引きをするか、さもなくばマイクロソフトの独自サービスによりGoogleを代替することが必要になるはずです。

 最後に、ノキアについての懸念を挙げておきます。現在のWindows Phoneの勢いの大部分は、ノキアのLumiaシリーズによるものという見方が有力です。たとえば5月14日にはグローバル向けに『Lumia 925』を発表。米Verizon向けには『Lumia 928』を提供するなど、積極的に新端末をリリースしています。

第3のOSはWindows Phoneで決まり?
↑米Verizon Wireless向けの『Lumia 928』。

 また、米国のスーパーマーケット“ウォルマート”ではT-Mobile USA版の『Lumia 521』を130ドル(約1万3500円)で販売。大きな話題となっています。

第3のOSはWindows Phoneで決まり?
↑ウォルマートで話題の『Lumia 521』。現在は品切れ中。

 しかし、このようにノキアへの依存度が上がることは、Windows Phone市場にとって健全なことなのでしょうか。すでにAndroid市場では、サムスンの存在が大きすぎることが問題となっています。

 規模は異なるものの、Windows Phone市場もまた似たような構図になる可能性があると言えます。たとえばノキアの株主は、Windows Phoneを主力OSとする事業計画に不満を抱いており、経営陣に対して方針転換を求めつつあります。いまのところノキアはWindows Phone路線を堅持していますが、Windows Phoneの将来を考える上では大きな火種と言えます。

(2013年5月22日20時32分追記)“Windows Phone 1台あたりの出荷台数の推移”の表の単位が誤っていました。お詫びして訂正いたします。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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