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“リスナーが抱くVOCALOIDの価値観に対する僕なりの答え”sasakure.UKインタビュー

2013年05月29日 16時30分更新

 5月29日にサードアルバム『トンデモ未来空奏図』をリリースするsasakure.UKさん。SFをなぜテーマにしたのか、VOCALOIDを歌い手に起用するその理由、そして新作に対する想いを伺いました。また、『晴れた日に散歩しながら聴きたい5曲』と愛用機材をご紹介いただきました。ボリュームたっぷりのインタビューをお楽しみください!

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VOCALOIDと8ビットは似ている

――新作は未来観が溢れる1枚ですね。

sasakure.UK 新作のコンセプトがSF、そして未来観なんです。人々が思い描く未来や価値観を1枚のアルバムにしてみようと考えました。それにVOCALOIDのもつSF性や未来性が新作のコンセプトと合致していたので、そこに焦点をあてたんです。

――VOCALOIDのもつSF性とは具体的にどのあたりでしょうか?

sasakure.UK SF小説家のフィリップ・K・ディックの物語のような、実在しないものが歌ったり、踊ったりしているのを、存在するものとして信仰する部分でしょうか。そういうVOCALOIDのシーンと自分の作品をうまく絡めることができたらと。今言ったことは、僕が作品づくりを通して心がけていることでもあって、ずっとVOCALOIDにこそ歌わせておもしろい作品をつくりたいと考えているんです。

――その“ボカロにこそ”という部分は音色にも影響を与えているのでしょうか。

sasakure.UK 声質によって合う音はそれぞれ異なりますが、僕は積極的に昔のゲームっぽい音、矩形波、8ビットを使うようにしています。そもそも8ビットはゲームで鳴らすために生の音を劣化させたものですが、カッコイイし、耳にもなじみます。一方、ボカロのほうは、人の生の声を加工しています。両方とも生の音を加工しているという点で似ている部分があって、2つはとても親和性が高いんですね。

――だからこそ違和感なく2つの要素が混じり合い気持ちよく聴けると。ところで、歌詞ですが匿名性も感じました。主人公は存在しながらも固定をしない印象だったんです。

sasakure.UK 言われてみて気づきましたが、確かにそうですね。特定のひとりというよりも、不特定多数のなかのひとりに焦点をあてている感覚でしょうか。それも人それぞれが異なるイメージをもつVOCALOIDだからこそできる気がします。無意識ながら意識していたのだと思いますね。

――作品から、星新一さんの作品に出てくる”エヌ氏”や”エフ氏”的な感覚、そして藤子・F・不二雄さんのSF短編集がもつ雰囲気を感じるというか。系譜の先にsasakure.UKさんが存在している気がしたんです。

sasakure.UK そう思ってもらえるのはとてもうれしいです。SF短編集大好きですから。実際に星新一さんや藤子・F・不二雄さん、そして手塚治虫さんが描く未来観、そのニュアンスはうまく醸し出そうと、表現できたらいいなと考えていました。プラス自分なりのスパイスを加え、少しひねったレトロフューチャー感を出したかったんですよ。

――毒の部分もきちんと受け継いでますね。『トゥイー・ボックスの人形劇場feat.初音ミク』のPVしかり。ちなみに、アルバム名の『トンデモ未来空奏図』の“トンデモ”をはじめカタカナを意識的に使用していますが。カタカナだからこそのPOP感やコミカルさが生まれるなとも。

sasakure.UK タイトルに関しては“トンデモ本”や“トンデモ科学”などのたぐいの”トンデモ”です。1970年代に想像した“車が空を飛んでいる”や“パイプですべてがつながっている世界”など、あの感じ。それがアルバムコンセプトに合うので使ったんです。意識的に、カタカナ、平仮名、漢字を使い分けています。“トンデモ”ひとつとっても平仮名ならやさしく感じるし、カタカナならば少し硬くなったり。その違いが楽しくて。

2人の僕が入っています

――新作はVOCALOIDのみに歌い手を絞っているのも特徴のひとつですね。

sasakure.UK 前作の『幻実アイソーポス』はVOCALOIDと人の共存を心がけたのですが、今回はVOCALOIDをフィーチャーした作品を出したかったんです。そうしたことで新作は前作に比べ明るいし、自由。どんどん飛び回っている感じになりました。冒頭でお話したコンセプトにVOCALOIDがとても合っていたということもあります。ファーストアルバムは僕が使っているVOCALOIDのキャラクター全員が登場していましたが、今回は初音ミクとGUMIを使いました。あらためて聴くと2人がバランスよく配置されているなと思います。

――またインストもまた味わい深く、入ることで全体が締まりますね。

sasakure.UK ボーカルものよりも意味をもたせた音を選んでいます。楽曲の合間のお話として解釈してもらえるようにしたんです。それにインストの制作はボカロと出会う前にずっとやっていたことなので新作には昔の僕と、VOCALOIDを見つけてその魅力を感じた2人の僕が入っています。なので、セカンドアルバムとは異なる意味で集大成だと言えますね。

――VOCALOIDがメインのファーストアルバム、人との共存がテーマのセカンドアルバム、そしてサードアルバムは再びVOCALOIDをフィーチャー。人間と共演したからこそ見えたVOCALOIDの魅力や、この3年の経験がたくさん詰まっているということですね。

sasakure.UK ファーストを出してから3年が経過し、リスナーが抱くVOCALOIDの価値観に対する僕なりの答えのような気がするんです。「VOCALOIDはこれがあるからおもしろいし、成立しているんだ」という。それが提示できたのではないかと思います。

今回インタビューの際にプレイリストも作成していただきました。sasakure.UKさんが晴れた日に聴きたい曲とは!?

【お題】
晴れた日に散歩しながら聴きたい5曲
選曲:sasakure.UK

公園や木々が生えていて自然がたくさんある場所で散歩をするときにおススメの5曲です。多摩地区とかもいいですね。ダウンテンポからアップテンポのものまで選びました。これからの季節だと梅雨の合間のすごく晴れた日に聴けば、憂鬱な気分が吹き飛ぶはずです。

【1曲目】
Cymbals
『Higher than the Sun』(アルバム『sine』収録)

昔から愛してやまない土岐麻子さんが歌っていらっしゃって、よく学生時代に散歩をしながら聴いていた時期がありました。とても思い入れのある曲。自転車に乗りながらだとテンポがよく合います。

sine - Cymbals

【2曲目】
YUKI
『坂道のメロディ』(シングル『プレイボール/坂道のメロディ』収録)

去年いちばんよく聴いた曲ですね。YUKIさんが大好きな友人に薦められて。転調がきもちよくて。辛い坂道があったとしても、楽しく登りきることができると思います。

プレイボール/坂道のメロディ - Single - YUKI

【3曲目】
cubesato
『Le Petit Prince (from Meine Meinung)』(シングル『Le Petit Prince (from Meine Meinung)』収録)

とてもドラマティックなエレクトロニカ。メロディックでとてもカワイイので幅広い人に聴いてもらえると思います。星の王子さまが題材の曲なんですよ。

Le Petit Prince (from Meine Meinung) - cubesato

【4曲目】
yanokami
『David』(アルバム『yanokami』収録)

レイハラカミさんと矢野顕子さんのユニット。エレクトロ寄りのサウンドに矢野さんの声がとても合っていて心地よいです。矢野さんの魅力を感じながら散歩ができますよ。

yanokami - yanokami

【5曲目】
HIDETAKE TAKAYAMA
『Express feat. Silla (múm)』(アルバム『Asterism』収録)

銀河鉄道の夜を題材にした3DPVなので動画でも聴けますし、観ることもできます。とてもドラマティックなので切ない夜に歩きながら聴いてみてください。きっと心に染みるはず。

Asterism - Hidetake Takayama

愛用の機材もご紹介頂きました。気になる製品は……コチラ!?

『microKORG Synthesizer/Vocode』

新作の制作で使った機材です。シンセの音色をつくるときや、声を加工してロボットボイスをつくるときに重宝します。

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【ニューアルバム】
『トンデモ未来空奏図』

レトロフューチャー、でも新しい音

未来をコンセプトに制作された新作はボカロと8ビットの融合が気持ちよい楽曲を多数収録。インスト曲をはじめsasakure.UKの今と過去そして未来も聴こえる1枚だ。
●初回限定盤CD+DVD 3000円、通常盤2700円 ●発売中 ●U/M/A/A Inc.

トンデモ未来空奏図 - sasakure.UK

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【プロフィール】
2010年にファーストアルバム『ボーカロイドは終末鳥の夢を見るか?』でデビュー。楽曲とともにPVなどの映像作品も評価が高い。動画サイトで作品を投稿しており“ささくれP”とも呼ばれている。

●関連サイト
 sasakure.UK オフィシャルサイト
 
『トンデモ未来空奏図』特設サイト

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