ソフトバンクモバイルは、7日、夏モデルの発表会を開催した。新たに登場するのは、4機種のAndroidスマートフォン。発表済みの『シンプルスマホ 204SH』、『DM015K(ディズニー・モバイル)』や、『みまもりケータイ3 202Z』、『Pocket WiFi 203Z』といった製品まで含めると、合計で8機種となる。
↑ソフトバンクは、夏モデルとして全8機種を取りそろえた。 |
同社の代表取締役社長、孫正義氏が、端末以上に強調していたのが、ネットワークだ。会見の冒頭では、過去の会見の映像が流れ、ソフトバンクの過去の取り組みを紹介。WiFi対応や、基地局の設置範囲を狭くする“小セル化”、イー・モバイルのLTEを活用する“ダブルLTE”などのキーワードが挙がった。孫氏は、「通信事業者最大の責務として、これを提供するに至った」と語っている。
↑過去の発表会の映像とともに、ソフトバンクのネットワークに対するこれまでの取り組みが紹介された。
新たな取り組みとしては、WiFiスポットの認証方式や、混雑解消のための施策を紹介。SIMカードでWiFiスポットのユーザーの認証を行なうことで、「つながる前のプロトコルのやり取りに10秒から20秒かかっていたが、SIM認証では2秒から4秒でサクとつながる」(孫氏)ようになるという。また、孫氏によると、他社でも実施されている、弱電界でWiFiの電波をつかんだままにならないような技術も導入されるようだ。
↑WiFiスポットにはSIM認証を入れ、通信が不安定な場所で電波をつかんだままにならないような品質改善も施す。
基地局では、AXGPの“クラウド化”をアピールしている。これは、“SFN(シングル・フリークエンシー・ネットワーク)”と呼ばれるもので、簡単に説明すると、細かく配置した基地局を1つのエリアとして制御する技術のこと。「世界で唯一、TD-LTE互換方式を使って実現した」といい、結果として「(トラフィックを3Gとは別の通信回線に逃すことで)音声のつながりやすさにもつながった」(孫氏)という。こうしたネットワークの強化を挙げ、孫氏は「単に端末というのではなく、世界最先端のスマホが、世界最先端のネットワークにつながる」と自信をのぞかせた。
↑TD-LTEと互換性のあるAXGPには、SFNという仕組みを入れ、小セル化を進めている。 |
↑自社のネットワークに自信をのぞかせる、孫正義社長。 |
端末のトップバッターは、フルセグに対応し、5インチ、フルHDのディスプレイを搭載するシャープ製の『AQUOS PHONE Xx 206SH』。ワンセグの低い解像度では「ギザギザだった」(孫氏)映像が、鮮明に映るのが特徴だ。206SHは、録画機能やF値1.9のレンズも、売りの機能と言えるだろう。ハイエンド端末としては、同じく5インチ、フルHDディスプレイ搭載の富士通製端末『ARROWS A 202F』も用意。こちらもフルセグに対応し、指紋認証や、“ヒューマンセントリックエンジン”による使い勝手のいい機能を特徴としている。
↑フルセグ対応で、録画も可能な『AQUOS PHONE Xx 206SH』。 |
↑『ARROWS A 202F』は、大画面でも片手で操作しやすいよう、画面を全体的に下方向に寄せる機能を搭載。 |
京セラからは、『DIGNO R 202K』が登場する。こちらは、“防水端末で世界最軽量”がキャッチフレーズで、会場では風船につりさげられた展示も行われていた。ディスプレイ全体がレシーバーになる、“スマートソニックレシーバー”も搭載する。コンパクトなサイズを誇り、測定時間が2倍程度に向上した放射線測定機能に対応するのが、シャープ製の『AQUOS PHONE ss 205SH』。通話キーやメールキーを備えたシニア向け端末『シンプルスマホ 204SH』も、同じくシャープ製だ。
↑京セラ端末は、世界最軽量を売りにする。発表会では、風船につりさげられたデモを行っていた。 |
↑より測定を速く行えるようになった放射線測定機能を搭載する『AQUOS PHONE ss 205SH』。 |
WiFiルーターなども含めて総勢8機種は、ラインナップとしては少な目だが、これは「機種はしぼって、新しいサービスの面だとか、シニア向けだとか、従来取りこぼしていた部分、新しく幅を広げる部分にわれわれの特徴を出していきたい」(孫氏)ため。発表会も、どちらかと言えば上述したネットワークへの取り組みや、『Fitbit Flex』と連動する“ソフトバンクヘルスケア”の説明に時間が割かれた。もちろん、背景にはソフトバンクの売れ筋端末の中心がiPhoneに偏っていたり、AXGPに対応できるメーカーが少なかったりといった事情もある。
↑囲み取材での孫氏。Sprint買収が成功した際のシナジー効果などを力説。 |
ただし、Sprintの買収が成立すれば、事情は変わってくるそうだ。孫氏は「だいたい端末を用意するに18ヵ月ぐらいかかる。当然国際ブランドメーカーはまだ少なくて、日本のメーカーを中心に準備してきた。Sprintとのディールが成立すれば、国際メーカーも続々とやってくる。さらに国内メーカーもSprintに出荷するビジネスチャンスも生まれる」と語り、グローバルでメジャーなブランドをもつ端末が登場する可能性を示唆する。
このように、ネットワークやサービスの紹介に時間が割かれた記者会見だったが、一方で6日に、そのネットワークに発生した障害についてはあまり言及がなかった。囲み取材で詳細な原因を問われた孫氏だが、「詳細な報告は上がっていない。原因の特定は詳しくやっている最中。一部のメールサーバーに異常があり、一部の地域でつながりにくいことがあった」と述べるにとどまった。ネットワークを主題にした発表会で質問があるまで障害について言及がなかったことは少し不自然だった。「こうした障害を極力なくしていく」とひとこと宣言すれば、ネットワークの強化に真摯に取り組むソフトバンクとしてポジティブに受け止められた気もするのだが……。
また、質疑応答でSIMロックフリー端末の受け入れについて問われた孫氏は、「今のところ、そういう持ち込みがたくさんきている認識は、少なくとも私のところには上がっていない」と述べ、積極的な対応に否定的な見方を示している(持ち込み契約は一部端末で実施済み)。キャリアの大きな選択要素には料金や端末もあるが、少なくとも孫氏が語っているように、本当にソフトバンクが最強のネットワークを誇るのであれば、他社でSIMロックを解除した端末をソフトバンクで使いたいというニーズも自然と増えてくる。こうした発言の端々から、孫氏自身が自社のネットワークにまだ懐疑的なのではという印象を受けた記者会見だった。
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