Twitterが4月18日(日本時間)にサービスを開始した「Twitter #music」(外部サイト)は、Twitterのもつソーシャル機能と音楽配信を組み合わせた新しいサービスだ。現在はまだ日本を含む多くの国でサービス・インしていないが、いち早くスタートした6ヵ国のうち、米国で同サービスを体験する機会があったので概要をレポートする。
Twitter #musicってどんなサービス?
米国ではインターネット音楽ラジオを標榜するPandora(外部サイト)をはじめ、欧州発のストリーミング音楽配信サービスSpotify(外部サイト)、そして日本でもお馴染みiTunesなど、ざっとカウントしただけでも数十種類以上のユニークな音楽配信サービスが存在している。たんに音楽を販売するだけでなく、気に入ったジャンルの曲をカスタマイズして延々と流したり、サブスクリプション(購読)形式で無制限に曲を聴けたりと、個々にその役割が異なり、それぞれの志向に応じたユーザーの支持を集めている。では、この分野に新規参入したTwitter #musicは、どういったサービスで、かつどういった層をターゲットとするものなのだろうか?
iOS版アプリ『Twitter #music』 |
アプリ起動直後の画面 |
「Listen Now」を選択 |
Twitter #music「Web版サービスとiOS版アプリの2種類が現在提供されている。また、今後の予定として、米国以外の国でのサービス・インやAndroid版アプリの提供も計画されている。現在、提供されているWeb版サービスとiOS版アプリの機能は基本的に一緒で、PCのブラウザーとiOSデバイスで動作するかの違いでしかない。まずはiOS版アプリをApp Storeからダウンロードしてみる。簡単な解説の後に設定画面が表示されるが、まずはListen Nowを試してみよう。
アプリの基本画面 |
4つのメニューが用意 |
楽曲を選ぶと再生スタート |
曲名タップでプレイヤーが表示 |
「#NowPlaying」を選んでTwitterアカウントを登録 |
フォローしてる人が再生中の楽曲 |
楽曲を選択するとプレーヤーが出現して当該の曲の再生を行なう。デフォルトでは30秒で再生を終了して次の曲へと切り替わっていく。プレーヤーに表示されるiTunesボタンを押すと、iTunesからその楽曲が直接購入可能だ。また楽曲再生中にコメントつきツイートが可能で、ここでのツイートには#NowPlayingのハッシュタグのほか、楽曲のタイトルとともにiTunes Storeのリンクが埋め込まれる。自身がどの曲を聴いているか、ほかのユーザーから一目瞭然というわけだ。
Twitterのソーシャルグラフとほかの音楽配信サービスを組み合わせる
Twitter #musicのデフォルト設定では楽曲の30秒のPreview再生しか行なえず、あとはフルの楽曲をiTunes Storeから購入できるのみだ。フルの楽曲演奏を続けて楽しみたい場合はどうすればいいのだろうか? そこでSpotifyとRdioの登場となる。これらサービスはストリーミング配信と呼ばれ、インターネット経由で適時楽曲の配信が行なわれるためiTunesと違って手元に楽曲を残せないものの、サブスクリプションと呼ばれる購読の仕組みで月額一定料金さえ支払えば無制限に楽曲の配信サービスが楽しめる(広告で無料になるタイプのものもある)。モバイル環境ではネットワークが安定しなかったりオフラインになることも想定して、アプリ側がある程度楽曲をキャッシュすることで切れ目なくストリーミング配信を楽しめる。
Spotifyは欧州で人気のストリーミング配信サービスで、米国にも2年前に上陸したばかりだ。一方のRdioはSpotifyの米国上陸と同時期にスタートしたサービスで、Skype創業者らが経営に関わっていることで知られている。どちらのサービスもFacebookアカウントを使っての接続認証が可能で、手軽に利用開始できる。今回、2週間の無料トライアル期間があり、iPhoneから簡単に登録設定が行なえたRdioを例に紹介する。Twitter #musicの設定項目でRdioを選択するとログイン画面が出現するので、Facebook認証画面を経て数ステップでTwitter #musicからRdioへの接続を許可する。すると先ほどまで楽曲プレイヤーにiTunesと表示されていた項目がRdioへと変化し、楽曲の再生時間も30秒からフル再生へと拡大する。
Facebook経由でRdioへ接続 |
『Twitter #music』の設定画面を確認 |
楽曲を再生する |
つまり、Twitter #musicの仕組みとしては、Twitter上のソーシャルグラフを活用して楽曲のオススメを行ないつつ、実際の楽曲ソースはiTunes、Spotify、Rdioといった外部のサービスを活用しているわけだ。音楽に限らず、コンテンツ配信サービスではユーザーにもっとさまざまなコンテンツに触れてもらうために、さまざまな形でオススメ機能を実装している。Amazon.comの購入履歴やiTunesのGeniusもそうだし、人気のPandora Radioはジャンル選択+好みのカスタマイズの形で同種の機能を実現している。Twitterの場合はコンテンツそのものはもたないものの、自社のTL内に日々流れる楽曲情報や個々のユーザーの志向をオススメ機能として実装している。Twitterによれば、世界に2億人いる同ユーザーの半数は最低ひとりは音楽アーティストのアカウントをフォローしており、多くのアーティストもまたTwitterをファンとの交流の場としているという。ユーザーもまた日々の音楽に関する購入や感想をTL上にしたためており、これを活用して新しいサービスとするのが狙いだったと説明する。
受け身のユーザー体験
実際に少しサービスを利用しての筆者の感想だが、自身はTwitterでひとりもアーティストを含む著名人をフォローしておらず、フォローしている相手も顔見知りの日本人の仕事仲間が多いため、Suggested、#NowPlayingといった自分のアカウントの活動内容が反映されるメニュー項目の内容は非常に寂しいものとなってしまった。#NowPlayingについては同種のハッシュタグを用いて音楽を楽しんでいるユーザーが少ないのと、前述の3つの楽曲配信サービスでカバーされていない邦楽が多いというのもあるのかと思う。このあたりは日本で正式サービス・インされ、同サービスを活用するユーザーが増えてこないと厳しいかもしれない。一方で洋楽ファンで積極的にアーティストをフォローしているユーザーであれば、また違った見方ができるだろう。
Popular、Emergingという試みは面白く、特にEmergingはリアルタイム性が反映されやすいTwitterならではの機能といえる。Pandoraもそうだが、こうしたサービスはTVやラジオでヒットチャートを延々と聞き流すのに似ており、海外でもPassive(受け身)型のサービスと言われている。つまり積極的にオリジナルのプレイリストをつくって音楽を聴くのではなく、日々トレンドの変化する楽曲の組み合わせをなんとなく聞いているといったイメージだ。
そうした意味で考えれば、iPhoneで音楽のバックエンド再生ができないのは若干残念な印象だ。勉強や仕事中、通学・通勤時間にiPhoneでTwitter #musicを楽しみたいと思った場合、気になった楽曲が出現するまで画面を見ることなく音楽を聞き流すパターンが考えられる。だがiOSの制限か、Twitter #musicのバックエンドでの再生は1分ほどで終了してしまい、続けて聴くことができない。一方でPCであれば、ブラウザーの該当ページさえ開いていれば延々と曲を流し続けることができるため、作業音楽にも有効的だ。このあたりは現在準備中というAndroidアプリ版の登場を楽しみにしたい。
ウェブ版『Twitter #music』 |
ハッシュタグとともに楽曲をツイート |
最後にTwitter #musicの今後についてだが、自前コンテンツをもたずに自身のソーシャルグラフを活用して音楽サービスを提供し始めた点は興味深い。今後、ストリーミング音楽配信サービスの世界ではAppleやGoogleが参入を狙っているという話が出ているが、おそらくポイントとしてはPandoraのようにPassiveなユーザーをターゲットとした配信の仕組みや、オススメ機能の実装にあり、数多ある類似サービスでの差別化要因となる。その点で、Twitterは大手参入で激化するサービス競争に先鞭をつけたといえるかもしれない。
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