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Windows情報局ななふぉ出張所

"Windows Blue"でスタートボタンは復活するのか

2013年04月24日 17時00分更新

 以前にご紹介したマイクロソフトが進行中のプロジェクト"Blue"について、新たな燃料が投下されました。

 4月18日に発表された米マイクロソフトの2013年度第3四半期決算において、CFOのPeter Klein氏が"Windows Blue"に言及したこと、Windows Blueと見られるOSの新たなビルドがリークしたことなどが発端となっています。

 そこで今回は米マイクロソフトの決算発表を読みながら、そこからなにが読み取れるのか見ていきましょう。

■Windowsの売り上げは頭打ち?

 米マイクロソフトの会計年度は7月に始まるため、2013年1~3月期は第3四半期に相当します。この第3四半期におけるWindows8やSurfaceを含む“Windows Division”の売り上げは57億300万ドルとなり、前年同期比23.1%の伸びとなっています。

"Windows Blue"でスタートボタンは復活するのか
↑Windows部門の売上は23.1%の伸び。

 クリスマス商戦を含む10~12月期のあとに続く1~3月期は売り上げが落ち込むのが普通なので、第2四半期からの落ち込みは想定内です。そこで2012年第3四半期と比較するわけですが、棒グラフの“FY13 Q3”には10億900万ドルぶんの金額が上乗せされています。

 この"Windows Deferral"という上乗せは、WindowsのアップグレードオファーやWindows8発売前のプリセールスぶんを繰延計上したものであるとのこと。この補正ぶんを取り除くと、第3四半期のWindows部門の売り上げは前年同期比マイナス0.4%となり、横ばいだったことになります。

 Surface Pro投入にもかかわらず横ばいだった理由として、そもそもPCが売れていないという背景があります。IDCの発表によれば、同四半期の世界のPC出荷台数市場は13.9%も減ったとのこと。マイクロソフトはSurfaceやビジネス向けWindowsの売り上げ増が、PC市場の落ち込みで帳消しになったと説明しています。一方、全体の売り上げ原価は前年同期比で21%(8億3500万ドル)増加し、ここにはSurfaceとWindows8に関するコストが含まれていると説明されています。

 CEOのスティーブ・バルマー氏はWindowsについて「まだやらなければならないことはある」と前置きしつつも、「Windowsに賭けるという選択が、長期的にはよい方向に働くだろうと楽観視している」とコメントしています。

 一方、XboxやWindows Phoneを含む“Entertainment & Devices Division”の売り上げは25億3100万ドルとなり、前年同期比で56.4%の伸びとなっています。

"Windows Blue"でスタートボタンは復活するのか
↑Xbox、Windows Phoneを含む部門の売り上げは56.4%の伸び。

 Windows Phoneについて、第2四半期決算ではWindows Phoneについて「昨年より4倍以上の売り上げ増」として前年同期比5億4600万ドルという記録を残しました。第3四半期でもこの勢いは続いており、売り上げは前年同期比で2億5900万ドル増加しています。最近は決算発表でWindows Phoneについての具体的な数字が公開されるようになったことからも、Windows Phoneが部門の売り上げに貢献しつつあることが読み取れます。

 IR担当ジェネラルマネージャーのChris Suh氏はWindows Phoneについて、「いくつかのマーケットで10%を超えるシェアを獲得した」と誇りつつも、「主要なマーケットで成功するには、たくさんの課題がある」と冷静に分析しています。

 一方、マイクロソフトの一部門となっているSkypeの通話時間はさらに伸びています。2013年2月に調査会社のTeleGeographyは、Skypeの通話時間が地球上の国際電話の3分の1に相当する長さになっていると発表し、話題になりました。最新の数字では、四半期あたりの通話時間が1380億分から1610億分へとさらに伸びています。

■Windows Blueは「顧客からのフィードバック」に対応

 今回の決算発表では、米マイクロソフトCFOのPeter Klein氏による“Windows Blue”や“小型デバイス”への言及が注目を集めています。

 なお、Klein氏は今会計年度が終わる6月末の退任が発表されています。しかしカンファレンスコールの音声を聞くかぎり、Klein氏が最後に勢い余ってリークしたというよりは、話題になることを期待して意図的にこれらの情報を出してきたという印象を受けます。

 最初にKlein氏はWindows8について、タッチとモバイルにフォーカスした先進性をアピールしつつも、Windowsの巨大なエコシステム全体を動かすのはそう簡単ではないと認めています。そして、今後もWindowsに提供する継続的なアップデートの一環として"Windows Blue"の存在に言及。Klein氏はBlueについて、「Windows8のビジョンを前進させ、顧客からのフィードバックに応える」ものになると説明しています。

 具体的にどのようなフィードバックに応えるのかKlein氏は明言していませんが、スタートボタンやスタートメニューが部分的に復活するのではないかという期待が高まっています。

"Windows Blue"でスタートボタンは復活するのか

↑StardockによるUI拡張『Start8』の画面。

 特に従業員の教育コストに敏感な企業ユーザーは、スタートボタンの復活を強く要求していると言われています。たしかに現時点でも、『Start8』のようなサードパーティーのツールでスタートボタンを再現することは可能です。しかしマイクロソフトがこれらのツールに対してどのような“対策”をするか予想できないため、企業ユーザーが安心して導入できるレベルではありません。

 以前にもマイクロソフトはWindows Vistaで導入したUACについて、Windows7で制限を緩和し、使い勝手を改善したことがありました。同じように“Windows8.1”とも言われるBlueにおいて、スタートボタンを復活させる可能性があると言えます。

■小型のWindowsデバイスを開発中

 Klein氏はデバイスについても新たな情報を提供しています。マイクロソフトがOEMパートナーとともに、Windows8をフル活用できるようなタッチ対応デバイスを作ってきた経緯を振り返り、その取り組みの一環として「Windowsで動作する小型のタッチデバイスについて、OEMと開発を進めている」ことを認めています。

 さらにこれらのデバイスは「競争力のある価格帯」で、その一部は「小型デバイスを対象としたOEM向けの提案によって可能になった」もので、「数ヵ月以内に登場する」と述べています。

 Klein氏は小型のタッチデバイスがスマートフォンなのかタブレットなのか明言していませんが、これまでのWindowsタブレットはどれも10~11インチクラスに偏っており、小型と言えば7~8インチクラスが有力なサイズとなります。また、OEM向けの提案というのは、Windowsロゴの認定要件として最低解像度が1024×768ドットに引き下げられた(外部サイト)ことを指しているのは明白です。

 価格について、7インチタブレットはiOSやAndroidで激戦区となっており、先日発表されたASUSの『Fonepad』のように、2~3万円のデバイスも珍しくありません。OEMによっては、かなりの低価格タブレットもあり得ると言えます。

"Windows Blue"でスタートボタンは復活するのか
↑日本でも発表されたASUSのFonepad。

 気になるOSについて、Klein氏は"Windowsが動作する"としか述べておらず、Windows8やWindows RT、あるいはタイミング的に最初からWindows Blueが搭載される可能性もあります。

 このことからマイクロソフトは、今後数ヵ月以内に7~8インチのタブレット端末の登場を見込んでおり、その一部は1024×768ドットの解像度を採用したかなり低価格なものになることが予想できます。直近では6月のBUILDカンファレンスでのお披露目に期待したいところです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
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