WWDC(Worldwide Developers Conference)とは、Appleが毎年5〜6月頃に開催する開発者向けのイベントだ。開発者向けとはいえ、その基調講演ではMacの新機種が初披露されることも多く、Apple製品ユーザーにとっては見逃せない。今回は、2008年6月に催された同イベントについて振り返ってみたい。ご存知のとおり、AppleはiPhoneの成功によって世界のモバイル市場を席巻していく。この基調講演はその起点となった、極めて重要な意味を持つイベントと言える。
この講演の上演時間は、約1時間40分。映画1本分に相当する長さのプレゼンテーションは、以下の3部構成で実施された。
(1)iPhoneソフトウェア2.0について
(2)MobileMeの発表
(3)iPhone 3Gの発表
言うまでもなく、目玉は第3部のiPhone 3Gのお披露目だ。しかし、この「メインディッシュ」にたどり着くまでに、観衆は1時間以上も焦らされることになる。時間的に一番長かったのは、第1部のiPhoneソフトウェアに関するプレゼンだ。開発者向けのイベントという、本来の趣旨からすれば当然と言えば当然なのだが、この1時間強のスピーチのうち、実に50分近くは、iPhoneソフトウェア開発のトップであるスコット・フォーストールが仕切ったのが印象的だった。ちなみにフォーストールは、約3カ月前のスペシャルイベントでは副社長という肩書きだったが、この講演では上級副社長へと昇格していた。当時のAppleがいかにiPhoneを重視していたかがわかるエピソードと言えるだろう。
第2部を仕切ったのは、マーケティング担当上級副社長のフィル・シラー。「MobileMe」は現在の「iCloud」の前身となるオンラインサービスで、Mac、iPhone、Windowsマシン間でメールやカレンダー、写真などのデータを共有・同期できるサービスだ。iCloudはいまやAppleユーザーにとって不可欠のサービスだが、MobileMeまでは年額99ドルと有料だった。その後、こうしたクラウドを利用したデータの共有・同期こそがモバイルデバイスの普及を加速するカギであると確信したAppleは、MobileMeからiCloudへの切り替えと同時に、無料化へと踏み切ることになる。
シラーの演説が終わったのは、講演開始から1時間20分近く経過した頃だった。シラーからバトンタッチされ大トリを飾るのは、もちろんジョブズだ。観衆が待ちかねているのを知っているジョブズは、iPhoneのニューモデル、すなわちiPhone 3Gについて自信たっぷりに話し始めた。
iPhone3Gでは、その名の通り3G通信に対応しデータ通信速度が36%向上したほか、業務用途向けの機能をサポート。サードパーティー製アプリがApp Storeで提供されるようになり、価格がより手頃になった。そして、GPS機能の搭載と、ホワイトモデルの追加。今となっては、いずれも特に目新しさは感じないが、いまからたった5年前には、これこそ最先端であり、画期的な出来事だったのだ。そう考えると、IT技術の発展の速さがいかにすさまじいものかがわかる。
しかし、日本のユーザーにとっての何よりの朗報は、自分たちもようやくiPhoneを使えると判明したことだろう。iPhoneを扱う各国のキャリアが発表され、その中にはSoftBankも含まれていた。早くiPhoneを使ってみたいと待ちわびていた人々は、この講演のストリーミング中継を見ながら、賞讃の拍手を画面越しに送っていたのではないだろうか。
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