つい1週間ほど前、AMDが1万円台の新ミドルクラス『RADEON HD7790』を発表しましたが(関連記事) 、ウワサどおり今度はNVIDIAも新しいミドルクラス『GeForce GTX650Ti BOOST』を発表しました。
GeForce GTX650Ti BOOST
●NVIDIA
詳しいスペックは後述しますが、搭載メモリー1GBと2GB版があり、予想価格はそれぞれ146ドルと169ドル程度。ということは日本国内だと1万円台後半~2万円の価格帯に投入されることになり、必然的にHD7790と正面から激突することになります。
●GTX650Tiの強化版というよりGTX660のスペックダウン版
まずはGTX650Ti BOOSTのスペックを既存のGTX650TiやGTX660と比較してみます。ポイントは名称からもわかるとおり、従来のGTX650/650Tiでは非搭載になっていた『GPU Boost』が搭載されたこと。またメモリークロックは6008MHz相当で192bit幅と、ほとんどGTX660に近い足回りを備えていますが、コアの部分ではSP数が768基に削られています。HD7790がHD7770のスペックアップ版なのに対し、GTX650Ti BOOSTは格上のGTX660をスペックダウンした格好になっているのがおもしろいところです。
GTX650Ti BOOST | GTX650Ti | GTX660 | HD7790 | |
SP数 | 768基 | 768基 | 960基 | 896基 |
コアクロック | 980MHz | 925MHz | 915MHz | 1000MHz |
ブーストクロック | 1033MHz | - | 980MHz | - |
メモリー転送レート(相当) | 6008MHz | 5400MHz | 6008MHz | 6GHz |
搭載メモリー/バス幅 | 1GB or 2GB GDDR5/192bit | 1GB GDDR5/128bit | 2GB GDDR5/192bit | 1GB GDDR5/128bit |
補助電源 | 6ピン×1 | 6ピン×1 | 6ピン×1 | 6ピン×1 |
TDP | 134W | 110W | 140W | 85W |
またTDPはGTX660とほぼ同じですが、SPがちょっと少ないぶん4ワット低めになっている、つまり省電力機能的な面は上位モデルとほとんど変わらないという点に注目です。補助電源は6ピン×1で済むので扱いやすさはまったく同じです。今回テストしたリファレンスボードは特徴がないクーラーでしたが、GTX660/650Ti同様にオリジナルクーラー搭載の製品が主になるでしょう。基板もショートタイプなのでさまざまなスタイルの製品が出てきそうです。
GTX660等と同様に、実際の基板は見かけよりずっと短い設計です。リファレンスクーラーは“ないよりマシ”な性能(特に静音性が×)なので強化クーラー搭載版が狙い目です。
出力端子はDVI×2基、HDMI×1基、DisplayPort×1基の定番構成。ただこの構成は絶対ではなく、メーカーの設計次第で変更されることもあります。
●絶妙な性能でライバルを上回ってきた!
ではベンチでGTX650Ti BOOSTの性能をチェックしていきましょう。今回はGTX650Ti BOOSTのリファレンスボード(2GBメモリー搭載版)と既存のGeForceやRADEON系ミドルクラスと比較してみようと思います。ベンチのハード構成はHD7790のときと同じにしてあります。
CPU:Core i5-3570K(3.4GHz)、マザーボード:ASUS P8Z77V PRO(Z77)、メモリー:センチュリーマイクロ CAK4GX2-D3U1600/ELP(PC12800 DDR3 4GB×2)、SSD:Intel SSDSC2CT240A4K5(240GB)、電源ユニット:Seasonic SS-760KM(850W、80PLUS GOLD)、OS:Windows8 Pro(64ビット)、ドライバー:Catalyst 13.3 beta3/GeForce 314.21(ベータ版、GTX650Ti BOOST)/GeForce 314.12(ベータ版、そのほかのGeForce)
まずは『3DMark』の“Fire Strike”を使って性能をチェックしてみます。
既存のミドルクラスGTX660のやや下、なおかつ低価格ミドルのGTX650Tiには圧倒的な差をつける位置にGTX650Ti BOOSTが着地しました。ちょうどHD7790のときと同じ展開ですが、HD7790のときはOC版だったのに対し、GTX650Ti BOOSTはリファレンス版でこの結果を出している、という点を評価すべきですね。
次はやや古くなってしまいましたが重量級の定番『バトルフィールド3』で試してみます。GTX650Tiは高負荷設定だとカクつきが多く、力不足の印象でしたが“BOOST”が付いてどうなったか注目です。設定は1920×1080ドット、画質“最高”に設定して4面開始時のシークエンスを『Fraps』で測定しています。
GTX650Tiは瞬間最大風速で30fps突破がやっとな状況でしたが、GTX650Ti BOOSTではHD7850と比肩するまでの性能にアップ。最低フレームレートも40fpsに到達したのも驚嘆です。このゲームに限るなら、GTX660の魅力が一気に霞んでしまった気すらします。
次は“時間泥棒”の名を欲しいままにしている人気作『シムシティ』でチェックしましょう。画質は各項目をいちばん重くなるように(フィルターは“ナチュラル”)、解像度は1920×1080ドットに設定。入門ガイドの都市の上をカメラで飛び回ったときのフレームレートを『Fraps』でチェックします。
さすがに最新重量級ゲームだけあって、既存のミドルクラス(GTX660/HD7850)には2歩も3歩も差をつけられていますが、GTX650Ti BOOSTなら最高画質で普通に動けるなと感じました(ただし都市が発展してくるとわかりませんが)。
洋ゲーばかり攻めている感じなので、国産の注目ゲームにも目を向けてみましょう。次は『バイオハザード6』の公式ベンチで検証します。画質はデフォルト(最高画質)のまま、1920×1080ドットに設定して実行します。
3DMarkではあれだけRADEON勢とつばぜり合いをしていたのに、このベンチだとGeForce勢の圧倒的有利になったので、最適化というのはスゴイものなんだと実感します。このゲームでは、GTX650Ti BOOSTはHD7850をも上回るパフォーマンスの超お買い得グラボといえるでしょう(実際の価格次第ですが)。
まだリリース前ですが『ファイナルファンタジーXIV』の新ベンチマークも試してみました。画質は『最高品質』、解像度1920×1080ドットに設定してみました。
こちらもバイオハザード6と同じ傾向です。メモリー2GBのリファレンス版でこの性能なので、OC版ならもっとGTX660に近づくことでしょう。
●ワットパフォーマンスはやや微妙なところ
最後にお約束の消費電力を比較してみます。『Watts UP? PRO』を使い、PC起動10分後および『バトルフィールド3』開始から10分後の値を比較します。HD7790の時は3DMarkで計測しましたが、こちらのほうが安定した値が得られます。
HD7790は消費電力を抑える新要素が入ったのに対し、GTX650Ti BOOSTではそういった要素は入っていません。高負荷時の消費電力が性能に対して高い気がしますが、GTX660の設計をそのまま下に降ろし、SPの一部をソフト的に無効化しただけの製品と考えれば納得できそうな感じです。GTX650Ti BOOSTは描画性能ではHD7790に勝ちましたが、本当にただスペックダウンした感じの製品である印象は拭えないのが残念なところです。
●まとめ:ゲーミングPC構築用にオススメ!
価格がまだ不明な部分はありますが、GTX650Ti BOOSTはGTX660に匹敵する高い描画性能をもっていることがわかりました。ゲームにもよりますが、HD7790よりも微妙に性能を上回っており、HD7790をいきなり出したAMDは相当焦っていたのではないか、と勘ぐりたくなります。
今回テストしたのは2GB版なので、4月以降出荷予定の1GB版だともうちょっと性能が落ちるでしょう。今回試した2GB版の性能を見るかぎり、これならちょっとお高めのOC版GTX650Tiを買うよりも、ノーマル版のGTX650Ti BOOSTを買うほうが絶対にお得です。
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