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Windows情報局ななふぉ出張所

Windowsストアのアプリ数はどれくらい重要なのか?

2013年03月27日 20時00分更新

 Windows 8から導入されたWindowsストアのアプリ数は、日々増え続けています。この数を独自にカウントしているMetroStore Scanner(外部サイト)によれば、3月25日現在で5万380本。ここ数日は、5万本を超えたことがニュースとしても報じられています。

Windowsストアのアプリ数はどれくらい重要なのか?
↑アプリ数が5万本を超えたWindowsストア

 さらにそれを後押しするかのように、アプリ開発者向けのキャンペーンも次々と打ち出されています。今回はこれらのキャンペーンを紹介しつつ、アプリストアとアプリ数についての議論を整理してみたいと思います。

■米国では最大2000ドル相当がもらえるキャンペーンが開始

 米国では、WindowsストアまたはWindows Phoneストアにアプリを公開することで、ひとつのアプリごとに100ドル、最大で2000ドル相当がもらえるというキャンペーン、“Keep The Cash”(外部サイト)が始まりました。

Windowsストアのアプリ数はどれくらい重要なのか?
↑コンテストではなく、アプリを公開することでもれなくもらえる

 一般的なアプリコンテストとは異なり、アプリがWindowsストア・Windows Phoneストアの審査を経て公開された時点で100ドル相当がもらえます。それぞれのストアに10個まで、最大2000ドル相当が賞金として提供されます。

 賞金は現金ではないものの、“Virtual VISAカード”と説明されています。これはプリペイド式のクレジットカードとして知られており、VISAカードが使えるお店ならどこでも利用できるため、ほぼ現金に近い賞品と言えます。

 Keep The Cashの規約(外部サイト)によれば、参加資格として18歳以上のアメリカ国民である必要があります。そのため日本人は参加できませんが、日本でも同様の取り組みが始まっています。

■日本の開発者支援キャンペーンは二段構え

 日本では、新たにWindowsストアに開発者登録をするだけで5000円ぶんのAmazonギフト券がもらえる、“Windowsストア アプリ「いつ作るの? 今でしょ!」キャンペーン”(外部サイト)が始まっています。

Windowsストアのアプリ数はどれくらい重要なのか?
↑開発者アカウント費用に相当する5000円ぶんがもらえる。

 現在、Windowsストアに個人として開発者登録を行なう場合、日本では年間4900円の登録料がかかります。これに対して、このキャンペーンでは先着500名という条件付きではあるものの、5000円ぶんのAmazonギフト券が提供されます。このことから、Windowsストアへの開発者登録が実質的に無料で行なえることになります。キャンペーンの有効期間は2月20日から3月31日までとなっています。

 また、このキャンペーンと合わせて、Windowsストアアプリのコンテスト“エイっと作ろう! Windows ストアアプリ選手権”も始まっています。こちらは賞金総額110万円のコンテストとなっています。応募期間は3月8日から5月8日で、春休みとゴールデンウィークを含んでいます。

 キャンペーンのサイトでは“エイっと作ろう”というタイトルと合わせて、エイと思われる魚類のイラストがあしらわれていますが、これはWindows 8(エイト)を意識したネーミングであることは、説明するまでもないでしょう。

 コンテストの協賛企業として、日本マイクロソフトでWindowsストアアプリのハンズオンセミナーも開催しており、スマートフォン業界でもなにかと話題の“アプリソムリエ”(外部サイト)や、Windowsストアアプリを専門にレビューしているサイト“MADO-APP!(マドアプ)”(外部サイト)などが挙げられており、受賞作品がこれらのサイトで紹介されるという特典もあるようです。

 このように“開発者登録”と“アプリコンテスト”は二段構えのキャンペーンとなっており、春休みや5月の連休にWindowsストアアプリの開発に挑戦したい人にとって渡りに船と言えるでしょう。

■“アプリ数”論争再び

 このように国内外でWindowsストアアプリの開発を支援するキャンペーンが発表されたことに伴い、アプリストアとアプリ数に関する論争が再燃してきました。

 マイクロソフトだけでなく、アップルやグーグルも自社のプラットフォームにおける“アプリ数”を基調講演などで取り上げることが少なくありません。一般的にアプリ数は、そのプラットフォームがどれだけ盛り上がっているかを示す指標として用いられる傾向にあります。

 その一方で、アプリの“数”よりも“質”のほうが重要ではないか? という指摘もあります。たしかに、個々のユーザーが実際に使うアプリは数本から数10本程度と考えられます。このことから、ストアに何10万というアプリが存在していようと無意味である、という意見はもっともらしく聞こえます。

 とはいえ、個々のユーザーが使う数本のアプリが重複せず、バラバラであるとするならば、それなりのアプリ数が求められることになります。あるいは、多くのユーザーはデフォルトのアプリのみを使っており、ストアからアプリを入手するユーザーは一部に過ぎないという調査もあります。

 いずれにしても、高品質なアプリが大量にあることが望ましいといえばそれまでですが、低品質なアプリを求めるユーザーは少ないはずなので、かなりの程度において“質”が重要であると言わざるを得ないでしょう。

 もし、どのアプリストアにおいてもつねに一定の割り合いで高品質なアプリが含まれると仮定すると、アプリ数が多いストアほど、高品質なアプリも多く含まれることになります。アプリ数が指標として用いられる背景には、このような漠然とした期待があるように感じられます。逆に、この期待を裏切るような現象があればあるほど、仮説としては弱くなっていくでしょう。

 “Keep The Cash”キャンペーンが議論を呼んでいるのも、まさにこの点にあります。このキャンペーンでは、アプリの品質に関係なく、公開したアプリの数に対して賞金が支払われる点が特徴です。もちろんアプリは各ストアの審査により選別されるため、どんなアプリでもよいというわけではありません。しかし100ドルという賞金は、優れたアプリを作る開発者にとっては取るに足らない金額ですが、賞金目当てのアプリを“量産”しようと目論む開発者にとっては十分な金額と言えます。

■本質的に重要なのはWindowsストアを盛り上げること

 Windowsストアのアプリ数は伸び続けているものの、その一方で“Keep The Cash”のようなキャンペーンが始まっています。その理由として、アプリの数や質の増加ペースが、マイクロソフトの期待を下回っているのかもしれません。現実的には、アプリは増加しつつあるものの、ライバルに追いつくにはまだ勢いが足りないといったところでしょう。

 その背景として、開発者が期待していたほどWindowsストアが盛り上がっていないように感じられます。Windows 8の発売前、マイクロソフトは「数億人をターゲットにアプリを販売できる」とアピールし、かなりハードルを上げてしまった印象があります。もしWindows 8が普及し、Windowsストアから次々に億万長者が現われるような事態になれば、優れた開発者やアプリは自ずと集まるでしょう。もちろん、商業的な利益以外にも、多くの人に使ってもらえればそれだけでうれしいという開発者も少なくないはずです。

 そういった意味では、“Keep The Cash”を始めとする各種キャンペーンによってWindowsストアがどれくらい盛り上がるのか、今後ストアに登録されるアプリに注目したいところです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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