いよいよ2月7日より、次期Office『Office 2013』が発売されます。WordやExcelに新機能が追加されるのはもちろん、マイクロソフトのクラウドサービスとの連携が強化され、Windows 8やWindows Phone 8との親和性が高まる点が注目されています。
とはいえ、Officeのバージョンアップは決して安いものではありません。たとえば『Office Professional 2013』にアップグレードできる数量限定の優待パッケージは、3万5800円という価格です。特に比較的新しいバージョンのOfficeを持っている人にとって、アップグレードする価値のある機能が含まれているのか、気になるところでしょう。
そこで今回は、Office 2013の隠れた新機能でもある“Officeストア”と“Office用アプリ”をご紹介したいと思います。
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↑Officeストアのウェブサイト。 |
■“Office用アプリ”とは?
一般的に“Officeアプリ”といえば、WordやExcelをイメージしがちです。しかしここでいう“Office用アプリ”とは、Office 2013と連携して動作する新しい“アプリ”のことを指しています。WordやExcelの画面内で動作するという点では、これまでのアドインに近い存在と考えていいでしょう。ちなみに英語版では“apps for Office”となっており、日本語版ではこれを“Office用アプリ”と訳しているわけです。
これだけではさっぱりわからないと思いますので、Office用アプリの具体例をご紹介します。
最初に、Excel用の『Bing Maps』アプリを見てみましょう。Bing Mapsアプリは、Excelのワークシートに貼り付けることで、高機能なグラフのように振る舞います。セルに入力されたデータを解析し、地図上にグラフをマッピングしてくれます。
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↑Excelのワークシートに『Bing Maps』アプリを貼り付けてみた様子。 |
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↑サンプルデータを展開してみると、範囲内のデータをもとに地図上にグラフが表示された。 |
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↑セルを都道府県に書き換えてみると、地図の内容も書き換わる。 |
プレゼン資料などを作る際に、似たようなグラフを作ったことがある人もいるでしょう。この場合、使える地図画像を探してきて、そこにグラフを貼り付けていくという、いかにも面倒な作業が必要です。しかしBing Mapsアプリはそこを自動的にやってくれたうえに、データと連動しているので修正にも対応しているというわけです。
ほかにも、セルの文字列をBingの辞書で検索できるアプリ『Bing Dictionary(English)』や、セルへの日付け値の入力にカレンダーを使える『Mini Calendar and Date Picker』といったアプリが人気です。
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↑『Bing Dictionary(English)』。セルの値をBingの辞書で検索できる。 |
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↑『Mini Calendar and Date Picker』アプリ。カレンダーを使ってセルに日付け値を入力できる。 |
Excel以外にも、Office用アプリはOutlook、Project、SharePoint、Word用のものがあります。アプリの種類として、サイドバーのように動作する“タスクペインアプリ”、ワークシート上などで動作する“コンテンツアプリ”、メールに対して動作する“メールアプリ”といった種類が用意されています。
■Officeストアにアクセスする
さて、いくつかOffice用アプリを紹介しましたが、これらはすべて“Officeストア”からダウンロードできます。たとえばExcel 2013の場合、“挿入”リボンの“Office用アプリ”ボタンを押して、Officeストアにアクセスできます。
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↑リボンの“挿入”から“Office用アプリ”を開く。 |
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↑初期状態では、アプリはなにもインストールされていない。 |
なお、2月5日現在ではまだ日本のOfficeストアは用意されていませんでした。現時点では米国のストアに誘導されるようです。
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↑まだ日本のOfficeストアはないが、米国サイトからアプリを入手可能。 |
このように、Officeストアにはウェブブラウザーからアクセスします。アプリのインストールもウェブブラウザー経由ですが、あらかじめ“Microsoftアカウント”でのログインが必要です。
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↑Officeストアのアプリページ。 |
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↑アプリの詳細を開き、“Add”ボタンを押してインストールする。 |
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↑Excel 2013に戻ると、インストールしたアプリが増えていることがわかる。 |
■Office Web Appsでも使えるのが特徴
Office用アプリの面白い特徴をひとつご紹介します。これまで、Office用のマクロやアドインはデスクトップアプリにのみ対応していました。一方、SkyDriveやOffice 365ではウェブブラウザー版のOfficeがあり、WordやExcelの文書を編集できます。しかしマクロやアドインが使えないため、デスクトップでの作業と比べるとなにかと制限がありました。
これに対して、一部のOffice用アプリは、ウェブブラウザー版のOfficeでも使えるようになっています。たとえばExcel用の“コンテンツ”型アプリや、Outlook用の“メール”型アプリがウェブブラウザーでも動作します。この動作は、先ほどBing Mapsアプリを使用したExcel文書をSkyDriveに保存し、ウェブブラウザーから開いてみることで確認できます。
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↑“コンテンツ”型アプリを使ったExcel文書を、SkyDriveに保存する。 |
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↑ウェブブラウザーでSkyDriveを開き、保存した文書を開いてみる。 |
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↑ウェブブラウザー版のExcelが起動した。Bing Mapsアプリがしっかり動いていることがわかる。 |
マクロやアドインと違い、Office用アプリはHTMLやJavaScriptといったウェブベースの技術で作られています。そのため、デスクトップでもウェブブラウザーでも同じ動作を実現できるというわけです。
■自作アプリも可能で、Officeストアでの販売も
Office用アプリは、自分で開発することもできます。開発環境として、Visual Studioも使えますが、ウェブブラウザー上での開発も可能です。たとえばVisual Studioやマイクロソフトの開発言語になじみがないウェブ技術者でも、すぐにOffice用アプリを作り始めることができます。
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↑新しいOffice用アプリを作り、そのまま実行してみた様子。簡単な入出力機能を備えたスケルトンが生成される。 |
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↑アプリのUIは、HTMLやCSSといったウェブベースの技術を用いている。 |
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↑コードはJavaScriptで記述する。Officeとのやり取りには非同期処理を用いており、画面が固まらないよう配慮していることがわかる。 |
自分で開発したOffice用アプリは、Officeストアに登録して公開することができます。無料アプリだけでなく、アプリを有料で販売したり、試用できるようにしたり、広告を表示したりすることも可能です。
■Office用アプリは新たなビジネスチャンス?
このようにOfficeストアは、WindowsストアやWindows Phoneストアと同じく、新しく立ち上がったアプリストアとなっています。Office 2013の発売前に登録されているアプリはまだ数えるほどしかなく、これから参入する開発者にとって大きなチャンスとなりそうです。
特にOfficeは、多くのユーザーが仕事で利用します。仕事の生産性を上げるようなアプリなら、有料アプリでも売れやすいと言えるのではないでしょうか。たしかに過去のOfficeでは、マクロやアドインにセキュリティー面での不安もありました。しかしOfficeストアへの登録には審査があり、無断でデータを収集したり、勝手に文書を書き換えたりするようなアプリは禁止されています。
ウェブブラウザーのサポート要件としてInternet Explorerだけでなく“最新版のChromeとFirefox”への対応が必要となっている点も、ユーザー視点ではうれしいところです。
アプリストアとしての潜在的な可能性は、Windowsストアにも匹敵すると言えるのではないでしょうか。まずはウェブブラウザーでOfficeストアを開いて、面白そうなアプリを探してみてください。
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