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Windows情報局ななふぉ出張所

CES2013で見たWindows RTまとめ

2013年01月23日 17時00分更新

 1月8日から米ラスベガスで開催されたCES2013を振り返り、先週はWindows Phone 8についてまとめてご紹介しました。引き続き、今週はWindows RTについても見ていきましょう。

CES2013で見たWindows RTまとめ
↑CES2013のQualcommブース。

■クアルコムの基調講演に、まさかのサプライズゲストが登場

 CES開幕前日の1月7日、クアルコムによる基調講演が行なわれました。昨年までマイクロソフトが担当していたCES前夜の基調講演ですが、マイクロソフトが各種イベントへの出展方針を変更したこともあり、今年はクアルコムの担当となりました。

 しかしここでサプライズが。なんと特別ゲストとして、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏が飛び入り参加したのです。

CES2013で見たWindows RTまとめ
↑ステージ脇から走って現われたバルマー氏。筆者はべつの取材で参加できなかったものの、会場は大きく沸いたとか。

 最近のマイクロソフト製品でクアルコムのプロセッサーを採用しているものといえば、Windows PhoneとWindows RTです。基調講演のステージでも、サムスンの『ATIV Tab』とデルの『XPS 10』がWindows RT端末として紹介されました。

■クアルコムブースに実機を展示

 基調講演で紹介された2台のWindows RT端末は、CES2013のクアルコムブースで実機が展示されました。

 デルの『XPS 10』について、最初に発表された2012年8月のIFA時点では、まだケース入りの展示にとどまっていました。その後はWindows 8と同時に発売となり、CES2013では自由に操作可能な状態で展示されています。

CES2013で見たWindows RTまとめ
↑デルの『XPS 10』。

 XPS 10は、名前のとおり10.1インチのタブレットで、タブレットとキーボードは分離可能なタイプ。デルの米国サイトでは、キーボードなしの32GBモデルが499.99ドルとなっており、『Surface』と同じ価格設定で販売されています。

CES2013で見たWindows RTまとめ
↑キーボードと分離してタブレットとしても使える。
CES2013で見たWindows RTまとめ
↑Snapdragon S4 APQ8060A 1.5GHzを搭載。

 同じくIFAと同時に発表されたのが、サムスンの『ATIV Tab』です。クアルコムブースでの展示はタブレット本体のみですが、ATIV Smart PCシリーズとよく似た、ドッキング可能なキーボードユニットも用意されています。

CES2013で見たWindows RTまとめ
↑サムスンの『ATIV Tab』。

■レノボはコンバーチブル型のWindows RT機を展示

 レノボのプライベートブースには、昨年10月に発表された『IdeaPad Yoga 11』が展示されていました。NVIDIAのTegra 3を搭載し、Windows RTでは唯一となる、ノートPCからタブレットへ変形できるコンバーチブル型です。

 Yoga 11は日本では未発表ですが、これをベースとする日本仕様モデル『LaVie Y』がNECから発売されています。

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↑左が『IdeaPad Yoga 11』。右はCoreプロセッサー版『Yoga 11S』。

■Best Buyで『Surface』を発見

 マイクロソフト製のタブレットとして話題を呼んだSurfaceですが、NVIDIA製のプロセッサーを搭載していることもあり、クアルコムの基調講演には登場しませんでした。

 そこでCES会場に近いBest Buyに足を運んだところ、実際に販売されているところを発見。“32GB版”、“32GB版タッチカバー付き”、“64GB版タッチカバー付き”の3種類のパッケージがあり、販売価格はMicrosoft Storeと同じでした。

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↑ラスベガスのBest Buyで販売されているSurface。
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↑おなじみのパッケージがぎっしりと並んでいた。

■Windows RTの苦しい立ち位置

 このようにCES2013でもしっかりアピールしていたWindows RTですが、存在感という意味ではそれほどでもありませんでした。実際の売り上げについても、あまりよい話を聞かないというのが現状です。

 たとえばマイクロソフトのSurfaceの売り上げ台数として、スイスUBSのアナリストBrent Thill氏による「2012年第4四半期に100万台程度」という分析が多くのメディアで報じられています。これは、同氏による以前の「200万台」という予測からは半減した数値です。また、CESの基調講演に登場したサムスンのATIV Tabについて「米国市場への投入は見送る」というサムスン担当者の発言も、Windows RTの苦戦を裏付けています。

 Windows RTが苦戦している背景には、タブレット市場における競争の激化があります。要因は大きく分けて2つ。ひとつはWindowsタブレット市場における、Windows 8との競争です。もうひとつはスマートデバイス市場における、iPadやAndroidタブレットとの競争です。

 Windows 8との比較では、ARMに最適化したWindows RTの長いバッテリー駆動時間が優位性となるはずでした。しかし最新のAtomプラットフォーム“Clover Trail”はARMに匹敵する動作時間を実現しています。Clover Trailはx86アーキテクチャーのため、既存のデスクトップアプリが動作し、多くのWindows用周辺機器に対応するため、Windows 8タブレットに大きな注目が集まっています。

 一方、iPadやAndroidタブレットはアプリが充実しています。質的にも量的にも十分な数のアプリがあり、最新のアプリも真っ先に投入されます。また、最近流行のiPad miniやNexus 7のように、7インチクラスのハードウェアも豊富です。これらは軽くて持ちやすいうえに、手頃な価格で入手できる点も見逃せません。標準的なWindows RTタブレットは最小構成で499ドルですが、これは第4世代iPad(16GB版)と同じ価格です。

■Windows RTの将来性に期待

 このように比較してみると、Windows RTにはまるで優位性がないようにも思えてきます。しかしWindows RTのデメリットとして挙げられる“既存のデスクトップアプリが動作しない”という点は、裏を返せば安全性やメンテナンス性に優れるというメリットとも考えられます。

 PCを使いこなすには、多大な学習コストがかかります。苦労してそれを習得したとしても、メンテナンスコストがかかります。アプリが起動しなくなったり、周辺機器がうまく認識されなかったり、OSを再インストールするために何時間もかけたという経験が、誰にでもあるのではないでしょうか。

 これに対してWindows RTでは、自由度が大きく制限されています。ユーザーができることは、ストアアプリの使用や購入、デスクトップでのファイル操作、Office 2013 RTなどに限られています。そのかわり、誰もがすぐに使いこなせること、メンテナンスの手間を最小限にすることをWindows RTは目指しています。こういった“スマートさ”こそが、Windows RTの本質というわけです。そういう意味で、Windows RTは一般ユーザー向けのOSとして、長期的にはWindows 8(あるいはその頃には9や10かもしれませんが)に取って代わる存在になると筆者は考えています。

 とはいえ、スマートフォンやタブレットが次々とPCを置き換えている昨今では、残された時間はあまり長くありません。まずは7インチのタブレットや、フルHD画面、防水端末のようなバリエーションが欲しいところです。アプリについても、当面はWindows 8の勢いに便乗しつつ、Windowsストアを充実させることも重要です。そしてCES2013で発表されたSnapdragon 800シリーズやTegra 4のように、最新のARMプロセッサーを搭載した第2世代のWindows RT端末にも期待したいところです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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