週刊アスキーの連載ページ『ネット早耳かわら版』に掲載している“ニコニコ動画 今昔物語”クロス連載。引き続き“ドワンゴ川上会長が見つめるニコニコ動画の未来”をテーマにして、最終回を掲載します。話が非常におもしろかったため、全6回に分けた連載企画、最終回で取り上げたのは“niconico”のユーザー構造についてだ。
↑川上会長(写真右)と筆者(写真左)。ニコニコチャンネルの“週刊アスキーチャンネル”にてインタビュー風景を生放送しました。
■スタジオジブリの小冊子にヤンキー特集
川上会長は2010年末から、スタジオジブリの鈴木敏夫さんの元で、プロデューサー見習いとして修行をしています。そのジブリが発行する小冊子『熱風』の2012年11号にてヤンキー特集が組まれ、川上会長も精神科医の齋藤環さんのインタビューに聞き手として参加。ニコ動が「オタクがつくって、ヤンキーが消費するサービス」ということに気づいたそうです。
↑『熱風』2012年11号。
オタクの定義は、世間ではやっているものはさておき、中身にこだわりたいタイプ。一方、ヤンキーは、仲間内で話題になるのなら何でもよくて、世の中で流行ってるものに飛びつくタイプです。「ニコ動には、ネタを二次創作して作っていくオタク側面と、コメントで盛り上がれれば何でもいいというヤンキー側面がある。その本質的なアーキテクチャ(構造)があるから、2006年に誕生したときにネットをほとんど見ない人が飛びついて、ライトオタクになった。それがずっと続いている」と川上会長。
音楽業界でいえば、曲はきちんとCDでそろえたいコアなファンと、ランキングチャートの上位に流れる曲をケータイで買ってその場だけ聴ければいい層と分けられるかもしれません。あるいはサッカーなら、日頃から足しげくスタジアムにかようファンと、テレビでワールドカップが放送されるときだけ応援して街角で騒ぐ層。
確かにニコ動のクリエイターに取材すると、ニコ動以前に作品を上げていたネットの投稿サイトでは“視聴者イコール作り手”の状態で、再生数も数百行けばすごい、感想は付かないのが基本という話をよく聞きます。ニコ動は動画にコメントをつけるというシステムを大々的に打ち出し、ユーザーの打ったコメントで画面が埋まる(弾幕)という盛り上がりをわかりやすくしたことで、ヤンキー的な層も「なんだかよくわからないけどスゴそう」と食いついたのかもしれません。
↑動画のハイライトに合わせて、みんなでコメントを打つ“弾幕”。
ちょうどニコ動の登場に近い時期では、車やパチンコ、パチスロといったヤンキー文化と親和性の高そうな分野で、“痛車”や“萌えパチと萌えスロ”が出てきています。そうしたヤンキーとオタクの文化が混ざっていく時代背景もあって、アニメやゲームが強いニコ動にも抵抗なく入っていけたのかもしれません。
来週からは、話はライブ配信サービスの“ニコニコ生放送”に変わります。ユーザー生放送出身で今や公式放送の司会者としても活躍している“百花繚乱”さんにインタビューして、ニコ生の歴史を伺います。
■関連サイト
週刊アスキーチャンネル(ニコニコチャンネル)
■週刊アスキー 連載ページ『ネット早耳かわら版』
リニューアルしてパワーアップしたネット情報満載の連載ページ。SNSを使いこなすテクニックやウェブアプリやサービスの紹介、ソーシャルメディアの話題など、盛りだくさんの4ページでお届けしている。
■著者紹介-広田稔
ウェブサイト“ASCII.jp”でMacやネットサービスなどのネタを担当。初期からニコニコ動画を取材し、2007年には笛のお兄さんの「Fooさん」を取材(関連サイト)していたりして、有り体にいえば“ニコ厨”(ニコ動好きな人)、好きが高じて『ニコニコ動画めもりある ~ニコニコ大会議編~』という書籍を執筆。
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