発売中の製品がハイエンドばかりの日本とは異なり、世界では、“そこそこのスペックで値段は格安”というスマートフォンのニーズも非常に高い。たとえば、中国市場では「1000元スマートフォン」(1000元は日本円で約1万3200円)が人気で、多くがAndroidを採用している。こうした格安端末は、中国などの中小メーカーが開発。大手メーカーのものほど作りこまれてはいないが、スマートフォントしてきちんと使えるレベルに仕上げられる。
↑クアルコム・リファレンス・デザインを解説する、プロダクトマネージメントのショーン・オレリー氏。 |
実は、Snapdragonを開発するクアルコムも、この市場を「クアルコム・リファレンス・デザイン(QRD)」でサポートしている。QRDとは、「OEMメーカーがとても簡単に、しかもローコストでデバイスをプロデュースできる」(プロダクトマネージメント、シニアディレクター、ショーン・オレリー氏)ことを目的としており、クアルコム側が製品一歩手前の「リファレンスモデル」を用意。あらかじめ決められたデバイスと、ドライバー、アプリを組み合わせるだけで、メーカーがスマートフォンを短期間かつ低コストで作れるのが特徴だ。
↑QRDの主な取り組み。設計からサポートまでを、クアルコムが一貫して行なう。 |
↑メーカーにとっては、コストの削減や、スピーディーな製品投入といったメリットがある。 |
一方で、Andoridには“CTS”というGoogleの認証試験があり、この基準を満たしていない端末は大きな制限を受けることになる。具体的には、Google製アプリを搭載できず、Google Playも利用できなくなる。また、スマートフォンをはじめとする無線端末は、通信をするための認証が必要だ。日本では“技適”がおなじみだが、海外でも“GCF”や“CDG”といった機関が一般的。これらの認証を取った上で、実際に通信ができるかどうかのフィールドテストも行なわれる。メーカーにとっては手間のかかる作業だが、QRDを採用すれば、ここもクアルコムがサポートする。
設計からサポートまで一貫して行なう結果、端末出荷までの期間も「OEMメーカーがリファレンスを受け取ってから商品にして、出荷するまで60日以内で完了する」(ショーン氏)と、劇的に短縮される。採用メーカーは、2G時代に格安の「山寨機」を開発していた中国の会社が中心。一方で「レノボやファーウェイ、ZTEといった大手もQRDを使っている」(ショーン氏)といい、これらのメーカーは独自開発のハイエンド端末とは別に、QRDを採用したローエンド端末を発売している。
↑採用メーカーも増え、現在では40社以上が参画。100を超える端末が登場している。 |
↑日本では見慣れないメーカーも多いが、ファーウェイやZTE、レノボもローエンドではQRDを使うことがある。 |
↑来年にはクアッドコアまでサポートされるなど、QRDも高機能化が進んでいるのが現状だ。 |
↑アプリケーション開発者との協力も、クアルコムが行なっている。中国市場が中心のため、現地のSNSなどとも連携。 |
ただし、QRDはあくまでエマージングカントリーと呼ばれる発展途上の市場に向けたもの。これらの地域では2Gのシェアも高く、スマートフォンが3G移行の鍵にもなっている。日本をはじめとする先進国への導入は検討されていないが、デバイスメーカーやアプリ開発者にとっては市場の広がりがチャンスになりそうだ。
↑3Gの比率が低い国で、スマートフォンが移行の起爆剤になりつつある。 |
↑部品の組み合わせを変えることで、差別化も可能だ。日本メーカーも、部品を供給している。 |
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クアルコム
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