2012年10月1日より違法ダウンロード刑罰化されDVDなどのDRMを回避したリッピングが違法行為となる。と言われても、一体何が変わり、何に気を付けなければならないのか、よくわからない読者も多いだろう。「自分には関係無い」と思っている読者も多いかも知れない。
けれども、この著作権法の改正は私たちのインターネットの利用に大きな影響を与えることになりそうだ。何がダメになり、何はオーケーなのか、またどうしてこうなったのか? この特集では4つのケースとテーマについて弁護士の福井健策氏に答えてもらった。
(1) CDやDVDなどのディスクメディアのコピーはどうなる?
(2) 音楽や映像のダウンロードなどネット利用への影響は?
(3) 録画したテレビ番組の利用はどうなる?
(4) どうしてこうなったのか? そして今後懸念されることとは?
【第1回】
CDやDVDなどのディスクメディアのコピーはどうなる?
Q 10月1日からこれらの法律が改正される訳ですが、そもそも違法ダウンロードやリッピングは誰のどんな権利を侵害している、ということになるのでしょうか?
A 著作権者の“複製権”や、実演家や原盤権者の“著作隣接権”を侵害しているということになります。
これまでも著作権などを侵害する違法アップロードは処罰の対象でしたが、私的な目的でダウンロードする分には、2010年以前は適法でした。しかし、2010年1月以降、違法にアップロードされたと知りながらダウンロード(録音・録画)すれば、刑罰の対象ではなかったものの違法行為となったのです。更に、有償作品についてはそれに刑罰を適用しようというのが、今回の“違法ダウンロード刑罰化”です。
Q 今回、DVDのリッピングも違法となる点も影響を受ける人は多そうです。オリジナルの保存を目的に、普段の視聴はDVD-Rなどにコピーしたディスクを観る、といったこともできなくなるのでしょうか?
A 今回ダウンロード刑罰化と共に施行される“DRM回避規制”によって、そうしたコピーは違法となります。DRMとは、コピーガードのような権利保護の技術をいいます。著作権法では“技術的保護手段の回避”と呼んでいて、私的な目的であっても、CCCDのようなコピーガードを解除して複製することは以前から著作権侵害でした。それが、今回の改正で、B-CASのように視聴を特定の機器に限定するための、“暗号化”によるアクセスガードを解除して複製を行なう事も違法となったのです。その結果、DVDの私的リッピングも違法となりました。ただし、こちらに刑事罰はありません。
Q コピーガードやアクセスガードが施されていないCDのような著作物であれば、DRM回避規制の対象にはならないということですね。
A そうですね。違法ダウンロードの刑罰化と混同されたりもするため誤解も生じやすいところなのですが、そういった保護技術を回避しない私的目的の純粋なリッピングであれば適法です。
↑DRM回避規制と罰則の全体像。網がけ部分が10月1日から新たに導入される。(出典:文化庁平成18年文化審議会・著作権分科会報告ならびに無名の一知財政策ウォッチャーの独言第266回「写り込みに関する権利制限やDRM回避規制の強化を含む著作権法改正案」掲出の図から作成)
Q これまで、DRMを回避するためのソフトウェアをネット上で公開していたり、販売しているケースもありましたが、そういった行為も違法になりますか?
A 今回の改正で、アクセスガードを回避するソフトウェアを配布する行為も著作権法上違法になり、刑事罰もあります。また、ユーザーがそういったソフトウェアを入手、購入しただけでは違法ではありませんが、ソフトウェアを使って、DRMを解除し、私的複製を行なった時点で違法行為となります(刑事罰はなし)。
なお、TPPへの参加が決まれば、DRMを単に解除しただけで違法となる可能性があります(DRM単純回避規制)。これについては4回目で詳しくその問題点を解説します。
Q 今回の改正は過去の行為にも及ぶものなのでしょうか?
A 及びません(遡及しない)。過去にDRMを解除してコピーしたDVDを所持し続けても違法ではありません。ただし、それを他人に提供(公衆に送信したり、ネットオークションに出品するなど)したらその時点で別な権利侵害になって、罪に問われる可能性はあるので注意してください。
第2回、「音楽や映像のダウンロードなどネット利用への影響は?」は近日公開です。
福井健策
●弁護士(日本・ニューヨーク州)/日本大学芸術学部 客員教授
1991年 東京大学法学部卒。米国コロンビア大学法学修士。現在、骨董通り法律事務所 代表パートナー。『著作権とは何か』、『著作権の世紀』(集英社新書)、『契約の教科書』(文春新書)、『『ネットの自由』vs. 著作権』(光文社新書)ほか。国会図書館審議会ほか委員・理事を務める。
●関連サイト
http://www.kottolaw.com
Twitter: @fukuikensaku
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