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ノキア再生の期待が持てる、新型Lumiaが発表 by 山根博士

2012年09月06日 16時00分更新

 ノキアとマイクロソフトは9月5日にニューヨークで新製品発表会を実施、Windows Phone 8を搭載するLumia 920、Lumia 820の2機種を発表した。この2製品は最新のWindows Phone OSを搭載するだけではなく、スマートフォンとしてのスペックも高められ、さらには使いやすさを追求したノキアならではの製品に仕上がっている。

新型Lumia

 Lumia 920は同社のフラッグシップモデルに相当するハイスペックな製品だ。ディスプレーは4.5インチのIPS、解像度は768×1280ドット。CPUはQualcommのSnapdragon S4 1.5GHz デュアルコアを搭載。また、カメラは8.7メガピクセルながらも高画質処理に優れたPureView技術を搭載し、室内でもフラッシュ無しできれいな写真を撮影できるという。さらにはワイヤレス給電規格の「Qi」に対応し、ケーブルレスでの充電も可能だ。そして、通信方式は待望のLTEに対応、高速なデータ通信環境を利用できる。

Lumia 920
新型Lumia

 一方、Lumia 820は現行の最上位モデル、Lumia 900のリプレイスとなる製品。ディスプレーは4.3インチ、解像度は480×800ドットとLumia 900から変化は無いが、CPUとカメラはLumia 920と同等のものを搭載している。LTEとQi対応もLumia 920に準じている。本体はバックカバーが交換可能で、着せ替え気分で7色も用意されたカバーを付け替えられる。Lumia 820はミッドレンジクラスに属する製品となり、価格はLumia 920より抑えられる予定だ。

 この2製品のハードウェア性能は、ほかのスマートフォンのレベルにようやく追いついた部分も少なくない。だがノキアがこの新型Lumiaでアピールしたいのはハードの進化だけではない。スマートフォンとしての使いやすさの追求、すなわちソフト部分の進化こそが新しいLumiaの大きなセールスポイントなのである。

Lumia 820
新型Lumia
Lumia 920、Lumia 820

 Lumia 920と820の最大の特徴でもあるPureView技術を採用したカメラは、ピクセルあたりの画像を多重処理することにより高画質化の実現のみならず、暗闇やコントラストの激しいシーンでの撮影にも強い。カメラそのものの性能が高いために複雑な設定を行なうことなく、ワンタッチで失敗の無い写真が撮影できるという。また、カメラモジュールはフローティングユニットを採用したことで、手振れに強く、動画の撮影にも最適だ。

 IDCの調査によると2012年は携帯電話を使った写真撮影がデジタルカメラを初めて越えた年であり、1日当たり14億枚もの写真が携帯電話で撮影されているという。そのうち約6億3800万枚の写真が毎日ソーシャルサービスにアップロードされているとのこと。スマートフォンでの利用に限ればその割合はさらに増えるだろう。すなわち、今やスマートフォンにとってカメラは利用頻度が高い機能であり、スマートフォンのユーザーエクスペリエンスを高めるためにはカメラ機能を充実させることも重要なのである。そして、Lumia 920、820のカメラは単純に高画質化を目指したものではなく、写真撮影そのものをより簡単に、そして満足度の高い撮影結果を提供するためにPureView技術を採用しているのだ。

 また、ノキアがこれまで提供してきたナビゲーションサービスの集大成とも言える「City Lens」機能も搭載されている。これは街中の風景をカメラを通して見ることで、レストランやお店の情報、そしてそこからWEBページへのリンクや電話発信、あるいは予約までをも行なえる。AR(拡張現実)を利用したもので、表示される情報は同社の地図サービス「Nokia Maps」で提供されているものが利用される。また、店舗検索機能も備えており、検索結果までのルートはカーナビゲーション「Nokia Drive」や都市の乗り換え案内「Nokia Transport」を使い最適な経路を調べることができる。「Nokia Drive」は渋滞情報を加味した上で予想到着時刻も表示可能である。

ARでお店の情報を表示するCity Lens
Lumia 920、Lumia 820

 なお、Lumia 920にはPure Motion HD+ディスプレー技術も採用。明るさに応じて画面コントラストを自動調整可能で、太陽光下でも見やすいという。カメラやCity Lensの実際の利用シーンを考えると、この見やすいディスプレーの搭載は新型Lumiaの大きなアドバンテージのひとつになるだろう。

 さらには標準搭載となったワイヤレス給電機能も、給電ユニットを別売するだけではなく、ヴァージンアトランティック航空やコーヒーチェーンの「The Coffe Bean & Tea Leaf」と提携。店舗にQi対応の給電ユニットを設置し、外出先でのワイヤレス充電環境を整備していくという。今後はほかのファーストフード店などとの交渉も視野に入れているようで、新型Lumiaがワイヤレス充電の市場を牽引していくかもしれない。

Qiでワイヤレス給電
新型Lumia

 もちろん、Windows Phone 8をOSに採用したことにより、Windows 8 PCやタブレットとのシームレスな連携、撮影した写真のSkyDriveへの自動アップロード、10万以上の豊富なアプリケーションが利用可能などスマートフォン単体としての使いやすさも向上している。Windows 8 PCがこの冬出てくることから、PCコンパニオンとしてのWindows Phone 8スマートフォンのプレゼンスも高まり、Lumiaへの注目も集まるものとノキア、マイクロソフトの両社は期待しているだろう。マイクロソフトのスマートフォン戦略は一見するとほかのOSよりも出遅れているようにも思えるが、PCも含めたトータルなエコシステムの構築を図っていることを考えれば、Windows 8とWindows Phone 8が同時期に市場に出てくることはほかのOS陣営にも少なからず影響を及ぼすものになるだろう。

 さて、ノキアはこのLumia 920、820で今年のクリスマスシーズンを戦うことになる。週明けに発表予定の新型iPhoneや、サムスン電子のGALAXY S III / GALAXY Note II、そしてソニーのXperia T / Xperia Vなど、この冬はライバル製品が非常に多い。Lumiaの第一世代モデルは「ノキア初のWindows Phone」という以外の点でアピールする点に乏しいものだったが、今回のLumia 920/820はスペックと使い勝手の高さで、ようやくライバルと同じ土俵に立てる製品になったと言えそうだ。また、北欧系のカラフルでPOPなボディーカラーや側面に曲線を多用したデザインなど、Lumiaシリーズは他メーカーのスマートフォンと外見の部分でも差別化に成功している。

 ただし、まだまだ製品ラインアップが少なく、この2機種だけでは販売シェアを回復するには力不足の点があるかもしれない。だが、ノキアのWindows Phoneは着実に進化しており、これまでLumiaに興味を持てなかった消費者の目を少しずつひきつけていくだろう。今回のLumia 920、Lumia 820はこれまでのノキアのスマートフォンよりも大きく進化し、十分期待できる製品に仕上がっていることは間違いない。

Lumia 920、Lumia 820

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ノキア

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