先々週の連載にて、Windows Phoneアプリの開発コンテスト“Windows Phoneアプリケーショントライアスロン”をご紹介しました。皆さんはもう参加されましたか?
開発経験者向けの一般的なコンテストとは異なり、今回のコンテストでは“完走賞”や“アイアンマン賞”といった参加賞が用意されているのが特徴です。これは初めてアプリを開発する初心者にとってもうれしい仕組みと言えます。
■第2種目はタイルを使ったアプリ
このキャンペーンでは、本物のトライアスロンと同じく“3種目”が予定されています。そして先日、第2種目が発表(外部サイト)されました。
↑Windows Phoneアプリケーショントライアスロンキャンペーン。3種目が予定されている。 |
第2種目のテーマは“タイルを変更するアプリケーション”となっており、以下のいずれかの条件を満たすアプリを開発して応募することができます。
・アプリケーション自身のタイルの内容を変更する機能を有する
・セカンダリタイルを追加作成する機能を有する
・スケジュール機能を使ってタイルの内容が更新される機能を有する
第1種目では3つの条件すべてを満たす必要がありましたが、第2種目ではいずれかの条件を満たせばよいことになっており、より難易度が下がったと言えます。
第2種目の応募期間は8月20日~9月17日です。第1種目の応募締め切りは9月3日までとなっており、いまから参加してもまだまだ間に合うタイミングなのです。
■今回も手順書とテンプレートあり
前回と同じく第2種目にも、アプリケーションの作成・公開手順を解説したPDFと、Visual Studio用のテンプレートファイルが提供されています。
Visual Studio用のテンプレートにはすでにいくつかの機能が実装されており、ソースコードを1行も書かずに基本的な動作が可能となっています。具体的な手順は前回の連載をご参照ください。
↑テンプレートのアプリ。スタート画面に独自機能のタイルを追加できる。 |
Visual Studioでアプリを作成し、エミュレーターを起動してみましょう。すると、たくさんのタイルが並んだ画面が表示されます。これらのタイルをタップすると、スタート画面にタイルが追加されることがわかります。
個々のタイルには“WiFi”や“Bluetooth”といったラベルが付いています。スタート画面に追加されたタイルをタップすると、実際にWiFiやBluetoothの設定画面を開くことができます。
このことから、今回提供されているテンプレートは、スタート画面に独自のショートカットを追加するアプリであることがわかります。似たような機能を持つアプリとして、Marketplaceでは『ConnectivityShortcuts』(外部サイト)などが人気です。
このアプリには、ほかにも“Webブラウザーを開く”機能や“メールの新規作成画面を開く”機能を持つタイルが実装されています。Windows Phoneの内部では、これらは“ランチャー”という概念で表わされています。たとえばWiFiの設定画面を開くには、“ConnectionSettingsTask”を呼び出します。ウェブブラウザーやメール作成画面についても、“WebBrowserTask”や“EmailComposeTask”を呼び出すだけで開くことができます。
Windows Phoneにどのようなランチャーが用意されているかは、MSDNに一覧(外部サイト)が用意されています。これを見て、ほかに追加できる機能がないか探してみるのもいいでしょう。
なお、テンプレートにはWindows Azure公認キャラクターの“クラウディア”さんの画像が使用されています。この画像はマイクロソフトが定める利用ガイドライン(外部サイト)に従って、Marketplaceに公開するアプリに使用することが認められています。もちろんオリジナルの画像を用意してもOKです。
■コンテスト目当てのアプリが増える?
Windows Phoneに限ったことではありませんが、スマートフォンのアプリに関するコンテストを開催する場合につきものなのが、応募だけを目的としたアプリが増えるという問題です。
今回のコンテストでも、筆者のもとにそういった懸念がいくつか寄せられています。特に今回はアプリのテンプレートが提供されており、似たようなアプリが増えやすい傾向にあるのも影響しているでしょう。
たしかにMarketplaceの規約には、“個々のアプリが独自の機能を実装していなければならない”という条項があります。しかし他人が作った既存のアプリと比べて新機能に乏しいからという理由で審査に落ちたという事例は、聞いたことがありません。
そのため、似通った機能のアプリがMarketplaceに公開されることは十分にあり得ると言えます。実際、アプリ開発セミナーの参加者が申請したと思われるアプリがMarketplaceに多数公開されたという事例もあります。
ただ、それがエンドユーザーに実害をもたらすかというと、それほど影響はないと筆者は考えています。というのも、Windows PhoneのMarketplaceは、優れたアプリや人気のあるアプリが十分に目立つような画面設計になっているからです。
↑Marketplaceの検索結果。人気のあるアプリが上位に表示される。 |
現在、Windows Phone Marketplaceに公開されているアプリは全世界で10万を超えています。これは多くのユーザーにとって全体像を把握できない規模であり、なんらかのフィルタリングなしにはまともにアクセスできない数量と言えるでしょう。
その結果、注目を集めるアプリは全体のごく一部となっています。具体的な数字を挙げると、日本向けに公開されている6万以上のアプリのうち、なんらかのレビューが1件でも投稿されたアプリは5%に満たないのが現状です。さらに、5件以上のレビューが投稿されたアプリはわずかに上位1%となっています。
もちろん、“悪意のある”アプリはMarketplaceから排除される必要があります。しかし優れたアプリがきちんと注目される仕組みが機能しているかぎり、“使えない”アプリが増えることによる実害は無視できるほど小さいと言えるのではないでしょうか。
■メリットは開発者が増えること
このようなコンテストによる最大のメリットは、開発者が増えることです。開発者が増えれば、Marketplaceに登録されるアプリも多様化することが期待できます。
たとえば単に“Twitterアプリ”といっても、公式アプリがひとつあればそれでよい、というわけでありません。機能面だけを考えても、あらゆる機能を盛り込んだ“全部入り”のアプリもあれば、閲覧だけの軽いアプリ、写真や動画といったジャンルに特化したアプリもほしいところです。操作性やユーザーインターフェースについても、様々なテイストが考えられます。
Windows PhoneのMarketplaceには、有名どころのアプリがじょじょに揃いつつあります。しかしほかのアプリストアに比べ、多様性という意味での“厚み”では、まだ追いついていない印象があります。そういう意味で、ひとりでも多くの開発者にアプリ開発とMarketplaceへの公開を体験してもらうことは、Windows Phone 8を含めた今後のMarketplaceの成長に向けて欠かせないアプローチであると筆者は考えています。
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
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