7月29日(日)、ノキアファンによるイベント『Come Back Nokia to Japan 3』が開催されました。
昨年11月に開催された第2回に続く3回目となる今回のイベントですが、ノキアの公式サイトを見てもわかるように、日本からノキアが撤退して早数年。主催者側も「さすがにそろそろ開催が厳しいのでは?」と予想していたとか。しかしフタを開けてみれば、前回と同じくノキアファンが会場を埋め尽くすという盛況ぶりでした。
しかも来場者の多くが日本で未発売のノキア端末『N9』や『808 PureView』、そしてWindows Phone『Lumia』シリーズを保有。セッションの合間にも各端末の魅力を語り合っていました。
↑ピードラ氏によるノキアの戦略についてのセッション。 |
↑山根康宏氏によるノキアの現状と将来予測についてのセッション。 |
昨年同様に、大量のおみやげが用意されていました。メーカーがスポンサーについているわけでもないのに、いったいどこからこれだけのグッズが集められてきたのか不思議です。
↑来場者特典のおみやげ袋。 |
↑主に山根さん提供によるノキアグッズが大量に! |
↑恒例のじゃんけん大会によるレア端末やグッズの配布も。 |
当日のセッション動画はUSTREAMでライブ中継され、主な内容が録画として公開されていますので、この記事にあわせてご参照ください。
CBNJ3 USTREAM Part.1(外部サイト)
CBNJ3 USTREAM Part.2(外部サイト)
■Lumiaの現状とは
ノキアの発表によれば、2012年第2四半期に販売したLumiaは400万台。昨年11月以降に販売した300万台と合わせて、合計700万台に達したとのことです。
絶対的な数字としてはまだまだ物足りない面はあるものの、Lumiaシリーズが新しいプラットフォームとして出発したことを考えれば心強い数字と言えます。決算の数字には表われないものの、世界中に張り巡らされたノキアの販売網を利用したプロモーションにより、Windows Phoneの知名度が大きく上昇したことも事実。マイクロソフトのイベントでも随所に登場するなど、Windows Phoneの“顔”となっています。
その一方で、Lumiaシリーズには現状のWindows Phoneにおけるさまざまな限界が表われているのも事実です。
↑Lumiaシリーズ。左から710、800、610、900。 |
フラッグシップモデルのLumia 900は、基本性能としてはLumia 800とほぼ同じ。画面サイズやフロントカメラ、LTE対応などで差別化しているものの、ややインパクトに欠けるのも事実です。もちろんスマートフォンで重要なのはスペックよりも実際に触ったときの体感速度ですが、この点ではライバルのAndroidも着実に向上してきています。
一方、ローエンドとして登場したLumia 610にも様々な課題があります。Lumiaシリーズのなかでもっとも安価とはいえ、100ドル台のAndroid端末に対抗できるほどではありません。そのためノキアはさらに低価格のローエンド端末の投入を計画しているようです。不安が残るのはソフトウェア面です。Windows Phone OSはビルド8773(Tango)によりローエンド端末への対応を強化したものの、アプリによっては動作速度が犠牲になっています。
画面解像度がWVGA(480×800ドット)に固定されていることで、前面キーボードの小型端末のようなモデルは設計が難しくなっています。ノキアが得意なNFCについても、Windows Phone 7.5は未対応で、今後発売予定のNFC対応版Lumia 610は、ノキア独自の実装となるようです。
■Windows Phone 7.8、そしてWindows Phone 8へ
6月20日に開催されたWindows Phone Summitでは、Windows Phone 8の概要が初めて公表されました。ノキアも、Windows Phone 8端末をリリースする最初の4社に含まれています。
Windows Phone 8では、ソフトウェア・ハードウェアの両面が大きく進化する予定です。ソフトウェア面では、デスクトップ版Windows OSのカーネル技術を採用したシェアードコアや、スタート画面のライブタイルの強化、様々なAPIの追加が予定されています。OS標準の地図アプリとして“Nokiaマップ”が採用されることも発表されました。
ハードウェア面では、デュアルコア・クアッドコアの最新プロセッサーやHD解像度のディスプレー、マイクロSDカード、NFCといった最新機能に対応します。
↑Windows Phone 8のハードウェアの変更点(Windows Phone Summitより)。 |
現在はフラッグシップのLumia 900もSnapdragon S2世代のシングルコアプロセッサーと、WVGA(480×800ドット)解像度にとどまっています。しかしWindows Phone 8世代では、クアッドコアやHD解像度も搭載できるようになるわけです。
また、Lumia 900や800を含む既存端末へのアップグレードとしては、新しいスタート画面などWindows Phone 8の新機能の一部が『Windows Phone 7.8』として提供される予定です。
■ノキアが中心とはいえ、ライバルも多い
Windows Phone 8の最初の端末は、ノキア、サムスン、HTC、ファーウェイから発売されることが発表されています。また、ほかにもいくつかのメーカーが開発を進めていると言われています。
↑最初のWindows Phone 8端末はこの4社から発売(Windows Phone Summitより)。 |
ノキアはこのなかでもっとも重要な地位を占めるメーカーになると見られています。たとえばWindows Phone 8のデモンストレーションでLumiaが使われたり、ほかの端末に先行して発売されるなどの優遇措置が採られる可能性があります。さらにノキア自身も世界各国のキャリアとのパイプを通じて、Windows Phone 8の大規模なプロモーションを計画しているようです。
このようにWindows Phone 8でもっとも注目すべきメーカーがノキアであることは間違いありませんが、ライバルが増える点にも注意が必要です。いまもっとも勢いのあるサムスンはもちろん、Windows Phone 8への期待を公言しているHTCや、Windows Phoneに初めて参入する中国のファーウェイは、いずれも強力なライバルになるでしょう。
実際のところ、現時点でリークされているWindows Phone 8端末を見る限り、最新のAndroid端末に近いスペックになっています。メーカー各社も、まずは売れ筋のAndroid端末をWindows Phone 8向けにアレンジしてくるはずです。たとえばGALAXY S IIIのような最新端末のWindows Phoneバージョンが発売される可能性があります。
9月5、6日にはヘルシンキで流通関係者向けのイベント“Nokia World 2012”が開催されますが、ここでWindows Phone 8端末がお披露目されるという噂も広まっています。もしこのタイミングで発表されれば、昨年同様に年末商戦前にWindows Phone 8を投入することが期待できると言えます。
■ノキアは日本に帰ってくる!?
世界各国へのLumiaシリーズの展開をビジュアル化した“Nokia Lumia Momentum Map”を見てもわかるとおり、Lumiaシリーズは欧米だけでなく、韓国や香港、台湾をはじめとするアジア地域にも積極的に投入されています。最近では中国本土でも発売されました。
↑アジアに積極的に投入されているが、日本では未発売。 |
日本のユーザーにとって最も気になるのは日本への展開でしょう。しかし海外の展示会でノキア関係者に尋ねると「日本は特殊な市場なので……」という反応が返ってくることが多く、あまり期待できない状況です。
しかし世界のスマートフォン市場と同じく、日本市場も大きく変化しています。スマートフォンの躍進により、ノキアが日本で展開していた頃に比べれば海外メーカーの端末は大幅に増加し、一般ユーザーに受け入れられています。
また、Lumiaシリーズのカラーバリエーションや丁寧な細部の作り込みは、日本でも十分に通用するのではないでしょうか。実際、様々なガジェットを使い慣れたWindows Phone開発者の間でもLumiaシリーズは大人気です。
次回の『CBNJ』で報告できるよう、筆者もノキアや各キャリアにプッシュし続けていくつもりです。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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