音楽配信サービスというと、やはりアップルのiTunes Storeの印象が強いが、もちろんほかにもサービスはある。中でもオンキヨーエンターテインメントテクノロジーが展開している『e-onkyo music』は、高音質音楽配信で音楽ファンの心を捉えているサービスのひとつ。CDと同等の音質で音質劣化のない圧縮方式を採用した“ロスレス”配信、並びにCDの音質を大きく上回る、いわゆる“ハイレゾ音源”の配信をサービススタート時から行なっているため、より“原音に忠実”に音楽が楽しむことができ、音にこだわりのあるファンが多く利用している。
その『e-onkyo music』が、新たな試みをスタートした。それは高音質のさらに上をいく、世界初のドルビーTrueHD 5.1chのサラウンド音楽配信だ。
「『e-onkyo music』がスタートしたのは2005年8月で、iTunes Storeのスタートとほぼ同時期です。当時、音楽配信といえば圧縮音源であり、音質を劣化させての配信でした。しかし、60年以上の歴史を持つオンキヨーの思想は“原音に忠実である”ということ。これを音楽配信でも実現したいというところからスタートさせたんです」とマネージャーの田中幸成氏。
当時はレーベル側の理解が得られず、スタート時はたった11曲しか配信できなかったが、努力の結果、現在は40社、6万曲を扱うにまで成長し、その過程でCDよりも高音質な24bit/48kHzや24bit/96kHz、さらにはDSD形式(.dsf)やハイレゾ音源が揃っていったそう。
「ここ数年、ハイレゾ、ネットワークオーディオ、PCオーディオといったものがオーディオ業界のキーワードで、我々にとっては追い風となっております。コンテンツとしてはクラシックやジャズが中心ではありますが、2011年はQUEENのハイレゾ配信をスタートさせるなど、バリエーションも増えてきています」(田中氏)
そうした中、5月30日から新たにスタートさせたのが、ドルビーTrueHD 5.1chのサラウンドサウンドの音楽配信。ドルビーTrueHD 5.1chは、Blu-rayで採用されているもので、サラウンドサウンドをロスレス圧縮する方式となる。
サラウンドというと、一般的には立体的な“映画サウンド”を想像するだろう。標準的な5.1chサラウンドの場合、前方の左右と正面、また後方の左右の計5つのスピーカーと、重低音を出すサブウーファーと呼ばれるスピーカー、計6つのスピーカーで音を再現するのだが、こうしたサラウンドシステムを効果的に使った“音楽作品”は、オーケストラなど荘厳な雰囲気を出す作品などで増えてきてはいるものの、業界全体からみると、非常に数が少ない。
↑AVレシーバー『TX-NR818』(実売価格12万6000円前後)
フォーマット的には24bit/96kHzのみ(AVR側の技術的要因により24bir/96kHzのみとなっているが、近々24bit/192kHzを配信開始予定)。現在のところドルビーTrueHD 5.1chファイルをそのままの音質で再生できるのは、AVレシーバー『TX-NR818』と『TX-NR717』のみとなるが、田中氏によれば今後、対応したオンキヨー製品が続々と増えるほか、他社からも登場してくることを期待しているようだ。
ちなみに、ダウンロードしたドルビーTrueHD 5.1chのデータは大きく2つの方法で再生できる。ひとつはUSBメモリーなどのUSBストレージデバイスにコピーし、それをAVレシーバーに接続して使う方法。もうひとつは、NAS上にデータを置き、そこにLAN経由でAVレシーバーからアクセスして使うといった方法だ。とくに後者であれば多くの楽曲を効率よく整理して再生する環境を整えることが可能だ。
今回、実際にオンキヨーの試聴ルームで、ドルビーTrueHD 5.1chで配信されている楽曲を聴かせていただいたが、家庭ではなかなか得られないすばらしいサウンドであった。5.1chサラウンドとはいえ、後ろから音が飛び出してくるというわけではなく、後ろからくる音の影響によって、前面の音が上にも奥にも広がっていく立体的な音の空間を作り上げてくれるイメージ。映画のサラウンドによる効果音などとは明らかに違う世界だが、これは絶対にCDでは得られないサウンドだし、ヘッドホンではありえない音の広がりがあると確信を持って言える。
「現在のところ、サラウンド配信しているのは100タイトル、約1000曲となっていますが、今後着実に増やしていく予定です。やはりジャズやクラシックが中心ですが、ポップスなどの楽曲も用意しております。また、サラウンドだからこそ得られるようなより立体感がある音楽作品、極端にいえばゲームサウンドなどのようなものを用意するのも面白いのではないか……と検討も進めております」(田中氏)。
ドルビーTrueHD 5.1chのデータとなると、上記2種類のAVレシーバーがないと再生することができないというのは大きなネックともいえる。そこでe-onkyo musicではこれに加え、WAVおよびFLACでのサラウンドデータも平行してダウンロード販売をスタートしている。
なかには一部レコード会社からの条件によって、ドルビーTrueHD 5.1chだけの楽曲もあるが、ほとんどはWAV、FLACでの販売もしている。もちろん、これらを再生するためにはPCでのサラウンド再生環境をそろえる必要があるが、より多くの人に楽しんでいただけるはずだ。
ドルビーTrueHD 5.1chのデータ、WAVのデータ、そしてFLACのデータは別商品という扱いなので、同じ楽曲であっても同時に入手することはできないようだが、これならばPC環境での再生も可能となるわけだ。その再生環境としてはマルチチャンネルに対応したオーディオインターフェイス、そしてプレイヤーソフトとしてWindowsベースのVLC media player、foober2000といったフリーウェアが対応している。
5.1chの再生環境が整うようであれば、ぜひこうした高音質サラウンドサウンドの世界を体験してみてはいかがだろうか?
↑今回お話をうかがったオンキヨーエンターテイメントテクノロジー、ネットワークサービス部の田中幸成さん。
■関連サイト
e-onkyo music
e-onkyo music(サラウンド配信コーナー)
7.1ch対応AVレシーバー『TX-NR818(B)』
7.1ch対応AVレシーバー『TX-NR717(B)』
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114,300円
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83,800円
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