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電子書籍の主役は大手印刷会社!? 国際電子出版EXPOの注目展示レポート

2012年07月05日 19時30分更新

 東京ビッグサイトで現在開催中(~7月6日)の『国際電子出版EXPO』。電子出版に特化した世界最大の展示会で、最近またまた注目が高まっている電子書籍の動向を探るうえでも重要なイベントです。会場で見つけた注目の展示をレポートします。

凸版印刷の電子書籍専用端末

 凸版印刷のグループ会社、BookLiveが開幕初日にプレスリリースを出した新端末の試作機をブース内に展示。6インチ電子ペーパーを採用し、電子書籍ストアー『BookLive!』(関連サイト)で販売されている電子書籍、約8万点が購入可能となる予定です。発売予定は今秋で、価格や通信方式などの詳細は未定。ライバル機の動向なども見極めて、仕様を決めていくようです。

国際電子出版EXPO
国際電子出版EXPO
↑試作機ということで実際に触ることはできず。仕様は今後、順次発表する予定。

大日本印刷のハイブリッド書店とARシステム

 大日本印刷のブースでは、リアル書店とネットストア、電子書籍ストアをひとつにまとめたハイブリッド書店サービス『honto』(関連サイト)を強力プッシュ。共通のポイントサービスや“マイ本棚”サービスなどが特徴で、本好きの人に全方位からアプローチ。hontoでは現在、首都圏8店舗の提携書店でポイントサービスが開始されたことを記念して、ポイント3倍キャンペーンを実施中です(7月31日まで)。

国際電子出版EXPO
↑ブースでは、実際に紙の書籍・雑誌を販売。サービスの魅力をアピールしていました。

 大日本印刷のブースではこのほか、グループ会社のDNPデジタルコムがマーカーレス認識技術を活用したAR(拡張現実)システム『DM+AR』を展示。ARコンテンツを表示するためのマーカーを必要とせず、誌面デザインそのものを認識するのが特徴です。雑誌やDMと連動するARプロモーションなどでの利用が想定されています。

 今年5月には、このシステムを利用して、高級ブランドFENDIと小学館の女性誌3誌によるコラボプロモーションが行なわれました。ARアプリで3誌の特集ページに掲載されているFENDIのバッグを読み取ると、バッグの3Dビューや編集部員のコメントなどが表示される仕掛け。紙の雑誌を拡張する仕組みとしておもしろいですね。

国際電子出版EXPO
国際電子出版EXPO
↑『AneCan』の誌面をARアプリで読み取ると、FENDIのバッグ『カメレオン』の3Dビューを表示。

 ちなみに、今回の展示会でブース面積が最も広いのは上記の印刷会社2社。「電子書籍になったら印刷会社は困るんじゃないの?」と思うかもしれませんが、2社とも電子書籍の制作から流通、販売(凸版印刷は端末も)までをカバーするソリューションを提供しており、日本の電子書籍業界でキープレーヤーとなっている企業です。ブース面積が業界での存在感を象徴しているようで興味深かったです。

電子書籍の自動販売機

 銀行の通貨処理機やスーパーのレジ釣銭機などの開発・製造・販売・保守を行なうグローリーが参考出品。購入の仕組みは非常にシンプル。タッチパネルで買いたい作品を選び、現金を投入して発券ボタンをタッチ。発券されたチケットにはQRコードが印刷されており、スマホで読み取るとサーバーにアクセスし、電子書籍をダウンロードできます。自販機で電子書籍を購入するメリットとしては、電子書籍ストアの会員登録が不要で、現金決済が可能(クレジットカードが不要)なことが挙げられ、未成年者や年配者の不便・不安を取り除くための解決法と言えそうですね。

 まだまだビジネスモデルが成立するかどうかを探っている段階とのことで、機器の仕様や価格などはすべて未定。設置場所としては、書店や駅構内、ショッピングモールなどを想定しているそうです。設置場所の提供者にメリットがある仕組みを確立して、複数の電子書籍ストアとコンテンツの品ぞろえで提携できれば、ビジネスとして成立する気がします。

国際電子出版EXPO
国際電子出版EXPO
国際電子出版EXPO
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↑展示されていた自販機は、別用途で使われている既存の自販機を改造したものだそうで、本格参入の際には小型化なども検討する予定とのこと。

ソーシャルリーディングのサービス『bookpic』

 美術出版ネットワークスが提供する『bookpic』(関連サイト)は、いわゆる“ソーシャルリーディング”の場を提供するサービス。Twitterと連動して、サイトで販売されている電子雑誌の誌面に対してつぶやくことができ、それらのつぶやきが誌面レイアウト上にそのまま表示される点が特徴です。HTML5を利用しており、PC、iOS端末、Android端末のいずれにも対応しています。

 ソーシャルリーディングの魅力は、本来は孤独な作業である読書という体験をさまざまな人たちと共有できること。やっぱり、読んでいて「おもしろい!」と思ったことをみんなで共有できれば楽しいじゃないですか。bookpicには、オリジナル作品を投稿して公開できるコーナーも用意されており、アマチュア作家の作品発表の場としても活用できます。感想がダイレクトに返ってくれば、創作意欲につながりますからね。

国際電子出版EXPO
国際電子出版EXPO
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↑つぶやきがアイコンとともに、誌面レイアウト上にそのまま表示されるのが楽しい。おもしろい感想をつぶやいている人をフォローすることもカンタンにできます。

モリサワの電子雑誌制作・閲覧システム

 フォントで有名なモリサワは、電子雑誌の制作・閲覧システム『MCMagazine』を展示。出版社や制作会社向けのソフト『MCMagazine Maker』では、InDesign(アドビのDTPソフト)やPDFのデータから、電子雑誌のデータへとカンタンかつスピーディーに変換できます。出版社としては電子雑誌制作の手間や人員を減らすことができ、コスト削減に貢献。また、ビューアーソフトも非常に読みやすい工夫がされています。

国際電子出版EXPO
↑ビューワーソフトでは、誌面レイアウトを保ったまま“テキストウィンドウ”をポップアップさせることで、文字を読みやすくする工夫がされています。

東芝の電子ブックリーダー

 東芝ブースでは、今年1月に発売された電子ブックリーダー『BookPlace DB50』を中心に展示。電子ペーパーではなく7インチカラー液晶を搭載しており、直販価格は2万1900円(マイクロSDHCカード4GBセットモデル)。『BookPlaceストア』(関連サイト)で利用できるポイント5000円ぶんが、価格にあらかじめ含まれているのでお得感がありますね。BookPlaceストアの品ぞろえは約5万点です。

国際電子出版EXPO
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↑カラー表示はやはり強みで、重量も約330グラムと(7インチとしては)軽め。ただ、バッテリー駆動時間約7.5時間は気になる人もいそうですね。

●関連サイト
第16回国際電子出版EXPO

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