ソニーは7月3日、定額制の音楽聴き放題サービス『Music Unlimited(ミュージックアンリミテッド)』の日本向けサービスを開始した。翌4日に報道関係者向けの体験会が行なわれたので、その模様と実際にどういったサービスなのかを改めて詳しく紹介する。
■そもそもどんなサービス?
インターネットで音楽を配信・販売するサービスは、Appleの『iTunes』をはじめAmazonなどが世界中で行なっている。日本では携帯電話向けの着うた音楽配信サービスから市場がスタートし、今はフィーチャーフォンからスマホへの大きな移行期。レコチョクなどは2011年末にスマホ向けサービスを始めたほか、7月2日にはiOS向けのアプリを提供して、フィーチャーフォンで購入した楽曲をiOS機器でも聴けるようにしたばかりだ。
『Music Unlimited』はこうした1曲・1アルバムごとの購入(買い切り)とは異なる、“サブスクリプション型”と呼ばれる定額制のサービスだ。
曲単位での購入ではなく、サービスに登録されている楽曲のすべてを30日間あたり1480円で聴き放題になる権利を購入するというもの。同様のサービスは、規模こそ違うがKDDIの『LISMO Unlimited』がある。2010年5月、『Napster』のサービス終了よって定額制音楽サービスは下火になるかと思われたが、その後も海外を中心に次々新しいサービスが誕生し、爆発的にユーザーを増やし続けている。
ソニーの『Music Unlimited』は、すでにイギリスとアイルランドを皮切りにして、世界各国の準備の整った地域から順次サービスエリアを拡大しており、日本は17カ国目のサービスエリア。
↑世界の各地域ではすでに展開中。日本は17ヵ国目のサービス地域として、満を持してのスタートとなる。
■どうやって使うの?
利用にはアカウントが必要だ。ID/パスワードを登録してSEN(SONY Entertainment Network)アカウントを取得する必要がある。ただし、すでにPS3やPS Vitaなどをネットワーク接続で楽しんでいる場合は、PSN(Play Station Network)アカウントをそのまま利用することが可能だ。これらと同じくソニーが提供する映像配信の『Video Unlimited』、写真共有の『PlayMemories Online』などは共通のSENアカウントとして利用できる。
↑SENアカウント、PSNアカウントを使って『Music Unlimited』を利用。PS3、Vitaでネットワークサービスを利用していれば、サービス開始もスムーズ。
利用できる機器は、大きく10カテゴリーあり、まずスタートしたのが、Android搭載のウォークマン、スマートフォン、タブレット。ウォークマンはZ1000シリーズ、スマートフォンはAndroid2.1~2.3および4.0、タブレットはAndroid3.xに対応する。Google Playから無償で入手できるアプリは、ウォークマン・スマートフォン向けとタブレット向けで異なっており、タブレットでは大画面に最適化されたインターフェースになっている。
↑『Music Unlimited』が利用できる代表的な機器の数々。
↑PS Vita、Xperiaのインターフェース。Z1000シリーズのウォークマンにも対応。
↑Androidでは、タブレットに最適化されたインターフェースのアプリも用意。
↑二画面のSONY TabletPでも利用できるが、現時点では二画面に最適化されたインターフェースは用意されていないとのこと。
ゲーム機では、PlayStation3とPS Vitaで利用が可能。前者はXMB(クロスメディアバー)の音楽カテゴリーに『Music Unlimited』の項目が表示され、後者はPS Storeからアプリを入手、PC/MacではブラウザーアプリとしてFlashベースで利用する。これらはすでに7月3日から公開中だ。
加えて、2010年度モデル以降のネットワーク対応液晶テレビ『ブラビア』シリーズとソニー製のブルーレイディスクプレーヤー、ソニー製のAVアンプからも利用できる(具体的な対応モデル名は公式サイトで案内中)。さらにiPhone/iPod touch向けにもアプリを提供予定で、これらは7月中旬以降の対応とされており、準備の整ったものから詳細な案内が行なわれる予定だ。
■端末ごとの楽しみ方について
手っ取り早く体験したいなら、PC/Macが最も簡単。ウェブブラウザーを開いて『Music Unlimited』のサイトにアクセスすると、Flashベースでグラフィカルなページが表示される。PC/Macでは実際にアカウントをつくったりログインしたりしなくても1曲あたり30秒間の試聴が可能。サービスの内容を簡単に把握したいなら、この試聴でいろいろ試してみるのがいいだろう。
PlayStation3、PS Vitaはアプリケーションのインストール、起動といった手順はあるものの、いずれもデバイスに最適化されたインターフェースで利用できる。
また、デバイスごとの制限として、PC/Macのウェブブラウザー、およびPS3/PS Vitaでは利用のためのアカウント作成および契約(サブスクリプションの手続き)を直接機器から行なえるが、Aodroidスマートフォンやタブレット、およびブラビアなどのAV機器では、アカウント作成と購入手続きを事前に行なってから、アカウントを各機器に適用させる必要がある。いずれAndroid端末などからも直接アカウントの作成を行なえるようにしていく計画はあるようだが、実現時期はまだ未定とのこと。
↑液晶テレビのBRAVIA、ソニー製Blu-rayプレーヤー、AVアンプでも利用可能。
↑デバイスごとの対応機能比較表。
SENアカウントは個人単位の契約になるが、リビングルームなど家族みんなで楽しむ分には、必ずしも家族全員分のアカウントを取得する必要はないという。ただし、スマートフォンなどのポータブル機器を個別に利用している場合には、個々にSENアカウントを取得・契約する必要がある。Music Unlimitedはストリーミング再生形式なので、同時試聴は基本的にアカウントあたり1デバイス限り。たとえばリビングのPS3で音楽再生をしたまま、書斎でPCを起動して『Music Unlimited』の利用をはじめると、同一アカウントのリビング側の接続は途切れることになる。
Android端末やPS Vitaなどのポータブル機器でストリーミング視聴した場合も同条件となるが、ポータブル機器に限っては機器内にキャッシュをもたせることで、オフラインでのリスニングもできるようにした。キャッシュ容量はメディアの空きスペースが十分にある場合でAndroidが4000曲、PS Vitaが1000曲。ただし契約解除後は、たとえキャッシュが残っていても、これらの楽曲のリスニングはできなくなる。オフラインでのリスニングに登録可能な機器は最大で3台まで。4台目を登録する際にはこれまでの機器から1台を解除する必要がある。
↑ポータブル機器ではチャンネル、プレイリストなどを事前にダウンロードしてキャッシュしておくことで、オフラインでのリスニングも楽しめる。
リスニングは“チャンネル”と呼ばれるストリームを選択する。TOP100などを中心としたプレミアム、音楽カテゴリー別のジャンル、ソニーの12音解析を利用し、音楽のイメージでグループ化される“SensMe”や“年代”などに分類される。ユーザーはこれらのチャンネルを選択し、ストリーミングされる音楽を聴く仕組みだ。曲に対しては“好き”、“嫌い”といった好みを反映することができ、これらを蓄積していくことで同じチャンネル内でも提供される楽曲が少しずつ変化していく。検索機能を使って楽曲、アーチストを探し、マイチャンネルなどの作成をすることもできる。
↑チャンネルを選んで聴きたい音楽のストリームを選択しよう。
↑アーティストや楽曲、アルバム名などを指定しての検索も可能。
↑PlayStaion3のインターフェース。十字ボタンの上下で楽曲の好みを選択。こうした情報の蓄積で、ストリーミングされる音楽の傾向が変わってくる。
また、PC/Macでは“Music Sync”という機能が利用できる。これはユーザーのHDD内にある音楽データやプレイリストをチェックして、『Music Unlimited』が提供する楽曲とのマッチングを行ない、自動的にライブラリー化する機能。解析は音楽ファイルのメタデータだけではなく、波形によるマッチングも行なっているとのこと。プレイリストは『iTunes』や『Windows Media Player』などの一般的な形式に対応している。なお、DRM(著作権保護)がついている楽曲はたとえHDD内にあっても解析は行なわれないのでリストアップできない。
ユーザーのライブラリーと、『Music Unlimited』をマッチングし、リスト化のみを行なう。これはどういう意味かというと、リスニングにユーザーの所有する楽曲を使うのではなく、同じ曲があれば『Music Unlimited』のライブラリーに自動的に同じ曲を表示し、ストリーミング再生するという仕組みだ。ここは米国内で行なわれている“iTunes Match”や“Google Music”のように、所有する楽曲をアップロードするロッカー型のクラウドミュージックとは異なるので注意したい。
↑提供されるチャンネルと、マイライブラリー、プレイリストの仕組み。
■音質について
『Music Unlimited』で試聴できる楽曲のコーデックは、HE-AAC 48kbpsのもの。これは、PC/Mac、PlayStation3からAndroid端末まで含めて、どのデバイスを使っても共通の音質となる。基本的にはストリーミング試聴になるので、ポータブル機器におけるWi-Fi、3G回線といった通信速度とリスニングの音質のバランスを考慮したものとのこと。
日本でのサービス開始時に聴くことができる楽曲の数は“1000万曲以上”(参考として『LISMO Unlimited』は100万曲)。EMIミュージックジャパン、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージック、ワーナーミュージック・ジャパンといった大手レーベルが参加しているのが強みだ(2012年7月現在)。
↑参加する国内レーベルとサービスの基本内容を紹介。
ただし、楽曲の構成は大半がいわゆる洋楽で、J-POPなどの邦楽は、現時点で数万曲だという。国内レーベルとの協議は継続しており、邦楽ラインアップの拡充は今後も注力して進めていく意向があり、なるべく早い時期にひと桁アップの数十万曲への引き上げを目指したいとしている。なお、ひと口に1000万曲といっても、エリアごとに提供楽曲の構成は異なる。ワールドワイドで展開している楽曲もあるが、特定エリアのみで提供される楽曲もある。邦楽の場合は、一部のJ-POPが欧米の『Music Unlimited』でも提供されているが、日本国内限定で提供されている邦楽も数多い。
■料金について
欧米では“Basic”、“Premium”といった2段階の価格設定があるが、日本では“Premium”に相当する1480円/30日間のプランのみが提供される。初回登録から30日間は無料で利用できるので、興味があればとにかく試してみるのがいちばんだろう。いずれもクレジットカードの登録が必須で、登録後はデフォルトで自動更新になるため、心配なら、この自動更新の設定をオフにしておくこと。継続利用する場合は自動更新をオンに設定しなおせばいい。クレジットカードが必須な点が、ややサービスの敷居をあげているが、PSNにおけるプリペイド式なども含めて、クレジットカード以外の課金の仕組みは今後もさまざまな形を検討したいとしている。
【7月6日15時追記】SENアカウントの家族間共有について、一部誤解を与える記述がありましたので追記及び修正致しました。関係者並びに読者の皆様にお詫び申し上げます。
■関連サイト
Music Unlimited
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