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iPhone版『スパイダーソリティア』で思い出す、ゲーム廃人だったあの頃

2012年06月14日 08時00分更新

 

 RucKyGAMESさん、このゲーム、ヤバイんですけど……。

 なんとなく暇だったので、1本のゲームをiPhoneに入れた。RucKyGAMESさんがつくった無料のゲーム『スパイダーソリティア』。ダウンロード完了後、早速遊びはじめて1分で気がついた。こ、これはかつて封印した“悪魔”のゲームではないか……。

  スパイダーソリティア
spider solitaire
  (C)RucKy
スパイダーソリティアで思い出したゲーム廃人化の歴史


 10年くらい前だっただろうか、野田秀樹さんの芝居を観に行ったとき、主役の藤原竜也さんが台詞の中で「それは何だ? スパイダーソリティアだ!」と叫ぶシーンがあった。思わずハッとしたことを覚えている。なにしろそのとき、スパイダーソリティアに人生の大半の時間を奪われていた、まさにその最中だったからだ。きっとあの当時、戯曲の作者、野田秀樹さんもスパイダーソリティアの悪夢と戦っていたに違いない、と勝手に思っている。魔のゲーム再び。何をバカな、と読者の方はお思いになるかもしれないが、断じて冗談などではないのだ。

「編集長って、どうしてずっとゲームばっかりやってるんですか?」――この発言は、週アス編集部員ではなく、わが盟友であるK氏が率いていた編集部のスタッフによるものだ。20年以上昔のことになるが、まだ一介の担当編集だったころ、編集長のところへ原稿の確認に行くと、パソコンは必ず『A列車で行こう』の画面だった。『エクセル』(当時は『ロータス1-2-3』。懐かしー)とかが開いていることなど、一度も見たことがない。いつもいつもA列車。ただ、沿線の町が微妙に発展しているという……(笑)。

 もっとも他人のことはまったく言えない。編集長になって1年も経つと、デスクトップには常に『大戦略』か『三國志』が常駐するようになった。オペレーションを1ターンやっては仕事、の繰り返し。最初はコンピューター側のターンを待っている時間に十分に仕事ができるのだけど、ゲーム終盤になると、こちら側のターンのほうが圧倒的に長くなるわけで、そうなるともう仕事そっちのけ。あ、もう時効だよね、この話。

 Windows 3.1が登場したとき、デフォルトでついていたのが『ソリティア』と『マインスイーパー』。言うまでもなく、これもサルのようにやり込んだ。編集部で色校正を待っている間の暇つぶしに、ほぼ無限ループ化してやっていた。ちなみに、マインスイーパー上級の最高タイムは198秒。そんなこと自慢しても意味ないけど。ただ、どちらも常習性があるわけではなく、ちょっとハマったくらいの感じだった。

スパイダーソリティアで思い出したゲーム廃人化の歴史
スパイダーソリティアで思い出したゲーム廃人化の歴史

 しかし、Windows Meについてきたスパイダーソリティアは別物だった。これは、トランプのキングからエースが順番に揃ったときに、トランプの一列が消えていくのだが、そのとき発するあのバラバラバラという音。これが脳内の深淵部にある快感を検知するレセプターに引っかかり、その“バラバラバラ”味わいたさに、永遠にやり続けてしまうという危険極まりないゲームだったのである。

 カードを移動させながら、忍耐強く揃えていく。が、次に偶然によって配られるカードは、それまでのプレーヤーの努力を一瞬にしてフイにしてしまう。ああ、という“うめき”とともに、それでも繰り返されるカードを揃えていく作業。これほどMなゲームをほかに知らない。

 気がつけば空はすでに明るくなり、貴重な休日の前夜をムダにしたことを知る。深い後悔に沈みながら、しかしまたスパイダーソリティアを立ち上げる自分。これはもう現代のアヘンと言って差し支えない。ああ。

 その後、Macユーザーに転向し、スパイダーソリティアの魔の手から解放された……はずだったのに。今年55歳。不惑の歳から15年も経った。ということでみなさん、一緒にソリティア廃人になりましょう(笑)。

スパイダーソリティアで思い出したゲーム廃人化の歴史

スパイダーソリティア (トランプ)
App Store価格:無料
RucKyGAMES
(価格は記事作成時のものです)

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※本記事は週刊アスキー連載『Scene2012』を再編集したものです。

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