パシフィコ横浜にて5月23~25日の3日間、『人とくるまのテクノロジー展2012』が開催された。
この展示会は、自動車メーカーや自動車関連の部品メーカーが最新の製品や技術を展示するもの。どちらかというと、自動車業界向けの展示会のため、モーターショーなどとは違い、完成した車よりも部品の展示のほうが圧倒的に多いのが特徴。
今年は電気自動車やハイブリッドカー関連の技術展示が多かったのに加えて、車とITを融合する技術がいくつか見られた。
■5万個のLANコネクターが付いた“クラウド”カー
先日、Googleの自動運転カーが公道を試運転できる免許を取得したことで話題になったが、まさにこの自動運転カーを実現できる技術の展示があった。
ゼットエムピー社は次世代自動車の開発用プラットフォームを手がける企業。このブースにはなんと車体全体に5万個のLANケーブル用コネクターが貼り付けられた実験車が展示してあった。この実験車は『RoboCar HV』という市販車をベースに改造したロボットカー。
遠目にはわかりにくいが……?
近くに寄ってみると、確かにLANケーブル用コネクターがビッシリと付いている。この車は外見のインパクトもあるが、実は内部もスゴイ。
なんと搭載しているセンサー類により、自動車のありとあらゆる情報を数値化しクラウドに送れる。たとえば、速度やエンジンの回転数のほかに、加速度やアクセル、ブレーキペダルの状態から、ドアの開閉状態に至るまで、細かくモニタリングが可能。また、この数値をベースに車の制御もできるのだから驚きだ。レースゲームのようにiPadを傾けるだけで本物のハンドル操作をするデモも行なわれていた。
また、この技術を使えば自分の運転している車とほかの車の運転を同調させることも可能。実際に『RoboCar MV』という小型の実験車と『RoboCar HV』のアクセルを同調させてコントロールしている映像もブースで流れていた。
■iPhoneと連携できるカーナビーが続々登場
会場では、iPhoneをカーナビに接続して連携できる展示をいくつか見かけた。
アイシングループはトヨタ向けの『スマートフォン・カーナビゲーション連携アプリ』を出品。Bluetooth経由でカーナビとスマホを接続すると、スマートフォンで目的地を設定でき、カーナビにそのデータを転送したり、カーナビのAVリモコンとして使える。iPhoneとAndroidのプラットフォームを用意して、6月から提供する予定とのこと。ほかにも、スマホをカーナビとして使える『NAVIエリート』というアプリを展示していた。
ホンダではナビゲーションシステム『インターナビ』のiPhone用アプリ『インターナビポケット』を発表。年額3000円でインターナビと同等のナビゲーションシステムがiPhoneで使えるというもの。本アプリは全国のインターナビユーザーのデータを元にした走行情報から独自の渋滞情報を提供しており、地図上に道路の混雑状況を表示できるのが特徴。Android版は2012年夏ごろに提供予定。また、『デュアルサイズ ディスプレイコンポ WX-135CP』とUSB接続することで、コンポ側で操作できるカーナビとしても使用可能。そのままではカーナビが使えないコンポだが、『インターナビポケット』を接続すればカーナビになる。なお、使用するためには、ホンダの販売店でインターナビ・リンクの会員登録を行ない、ID・パスワードを取得する必要がある。
■ほかに見つけたおもしろい展示
日本精機では、フロントガラスに投影できるヘッドアップディスプレーを展示。フロントガラスに投影することで、ドライバーの視線を道路からそらすことなく、ナビ情報などを伝達できる。高輝度でフルカラー表示できるのが特徴。なお、BMW 6シリーズに搭載されているとのこと。
わかりにくいかもしれないが、フロントガラスのモックアップに速度とナビゲーション情報が表示されている。
ロボットがブレーキとアクセルを物理的に操作して自動運転をするデモがあった。これはAnthony Best Dynamics社のもの。衝突実験などでよりドライバーが操作しているのに近い状態をつくり出すための装置とのこと。
東洋製作所は車の環境試験用の機材を展示。シャーベット状の雪をつくれる人工降雪機のデモは見ていておもしろかった。これを使えば、積雪がある場所に行かなくても寒冷地での環境試験ができる。
メディアでおなじみのTDKは、カーナビ用の3Gbps対応のSSDを展示。128GB~32GBまでラインアップしており、これからメーカーに対して売り込みをかけていくという。
音響技術でおなじみのドルビーは、ドライブレコーダー向けにJPEGの拡張フォーマット『ドルビーJPEG-HDR』を紹介。JPEGと互換性をもたせつつ、8ビットの色情報を24ビットまで拡張し、ダイナミックレンジをもたせるというもの。従来のドライブレコーダーではトンネルと出口の境目などで映像が白く飛んでしまったり、黒くつぶれるケースがあるが、JPEG-HDRではダイナミックレンジが広くなることで緩和できる。
■関連サイト
人とくるまのテクノロジー展2012
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