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ナンバー2でRADEON HD7970狩り NVIDIA GeForce GTX670出撃

2012年05月10日 22時00分更新

GeForce GTX670のリファレンスデザイン
GeForce GTX670
GeForce GTX670

ようやく低価格ゾーンへ進出し始めたNVIDIA

 今年序盤のGPUメーカーの動きは非常に対照的だ。年明け早々に28nm世代のGPU『RADEON HD7970』を投入し、矢継ぎ早に『HD7750』~『HD7950』までのミドルクラスを展開したAMD。それに対し、NVIDIAの歩みはハイエンド『GeForce GTX680』、2GPUの超ハイエンド『GTX690』と、一般ユーザーからどんどん遠ざかっているように見える。

 しかしここへ来て、ようやく下位モデルへの展開が始まった。GTX680のスペックをやや抑えた準ハイエンド『GeForce GTX670』の登場である。

 『GeForce GTX670』の価格は399ドルだが、日本での初物価格は4万円台後半の見込み。明らかにHD7970/7950を狙い撃つためのGPUだ。

ボード長はGTX680と大差ないが……
GeForce GTX670
↑写真は上から順位GTX680、GTX670、RADEON HD7970。
基板は短め
GeForce GTX670

ショートタイプも登場するかも

 GTX670で最もインパクトのあるのは基板のコンパクトさだろう。今回テストしたリファレンスデザインでは、カード自体の長さは24センチだが、基板自体の長さは17.5センチ程度。では残り6.5センチは何かというと、ブロワーファンのハウジングとしてだけ存在するのだ。

 基板の形状だけ見れば、現在流通しているショートタイプのGTX560Ti搭載グラボなどと同じようなコンパクトな製品が出てくる可能性があることがわかる。だがこうしなかったのは、ヒートシンクの容積を確保し、2スロット幅にとどめておくためではないかと推測する。

 また、補助電源コネクターはGTX680と同じ6ピン+6ピン。2個横に並ぶように配置されているので、GTX680の時のようにコシの強いケーブルだと配線に苦労する、ということは少ないはずだ。

GeForce GTX670
GeForce GTX670

 百聞は一見にしかず、ということでGTX670の情報を『GPU-Z』を使ってチェックしてみよう。GTX680と同じGK104コアを使っているのは同じだが、CUDAコア数は192個少ない1344個。GTX680では192個のGUDAコアの集合『SMX』が合計8基入っているので、GTX670はちょうどSMXひとつぶん少ない構成になっていることが確認できた。

 CUDAコア数以外の相違点はKepler世代で新たに盛り込まれた『GPU Boost』の設定もGTX680との相違点のひとつ。今回テストしたGTX670のリファレンスモデルでは、ブースト時で980MHz設定となっており、1056MHzまで上がるGTX680と比較すると控えめ。しかしネット上でリークされていたブースト値にはバラつきがあることを考えれば、リファレンス使用よりOC版が中心となることはほぼ確実だ。その場合、OC版GTX670がGTX680の非OCモデルとどう棲み分けするかがポイントになるだろう。

 そのほかの要素、つまりメモリークロックやメモリー搭載量、メモリーバス幅に関してはGTX680と共通である。

■検証マシンの構成
CPU:インテル『Core i7-3930K』(3.2GHz)
CPUクーラー:Corsair『CWCH100』
マザーボード:ASRock『Fatal1ty X79 Professional』(Intel X79)
メモリー:Corsair『VENGEANCE CMZ16GX3M4A1600C9』(PC12800 DDR3 4GB×4)
ストレージ:インテル『SSD 520』(240GB SSD)
電源ユニット:SilverStone『SST-ST1500』(1500W、80PLUS Silver)
OS:Windows7 Professional SP1(64ビット版)
ドライバー:ForceWare 301.33(β版)/Catalyst 12.4

 ではベンチの結果を駆け足でチェックしていこう。どのテストもGTX690のテストで使った条件と同一。すなわち、解像度はフルHD(1920×1080ドット)、画質はそのゲーム中での最高設定という昨今の高性能GPUの勝負にふさわしい環境だ。

GeForce GTX670
GeForce GTX670

 まずは非ゲーム系の重量系ベンチ『3DMark11』と『Heaven Benchmark』の結果から。GTX680からやや性能が落ちるは順当だが、本来のライバルと言えるAMDの準ハイエンドRADEON HD7950は軽く蹴散らし、ライバル陣営のトップであるHD7970をも抜き去っている、という事実に注目したい。もう「お前(HD7970)の相手は準ハイエンド(GTX670)で十分だ」というNVIDIAの勝利宣言さえ聞こえてきそうな数値だ。

GeForce GTX670
GeForce GTX670
GeForce GTX670

 続いては重・中・軽量級のゲームを1本ずつ。重量級の『バトルフィールド3』は惜しくも最低60fpsキープを割ってしまったが、それでもフルHD最高画質で滑らかさを損なわない安定したパフォーマンスを出している。『The Elder Scrolls V: Skyrim』ぐらいのゲームなら、GTX670は価格的にも現状で最良の選択になるだろう。

 GTX670の前にRADEON勢は全くいいところを出せていないのだが、唯一勝てるのが『Call of Duty: Mondern Warfare 3』の最低fpsの部分。Keplerではメモリークロックが上がった割に、バス幅が256bitに縮まってしまったのが泣き所なのだが、メモリーバス幅が384bitと広いHD7970/7950の強みがここで出ているようだ。

超超重量級では性能差が拡大
 
 ここまでのテストでは、GTX670と680の差は非常に少ないものだったが、一部のテストでは両者の性能差が極端に大きくなったものがあった。『シリアスサム3:BFE』と『S.T.A.L.K.E.R. Call of Prypiat』公式ベンチの結果を見ていこう。

GeForce GTX670

 このテストではGTX690の検証で使った“究極”画質をベースに、さらにアンチエイリアス系を中心に8つの設定をさらに最高負荷設定で使っている。準ハイエンドGPU(GTX670、HD7950)の両者とも各々の上位版より激しく落ち込んでおり、シェーダー(CUDAコア)数の少なさがかなり効いているようだ。ただし、ここまでGPU虐めに近い設定は非現実的なので、「まあこういう結果もあった」程度に捉えておいた方がよいかもしれない。

GeForce GTX670

 こちらもGTX690の検証で使った最も重くなるような設定。『シリアスサム3:BFE』程ではないが、GTX670は680よりも2割以上フレームレートを下げている。現行タイトルでは問題ないが、今後より負荷の高いゲームに遭遇することを考慮すれば、GTX670はやや心もとない部分があるように思えるのは杞憂だろうか。

GeForce GTX670

 『ファンタシースターオンライン2』公式ベンチのスコアーも、GTX680から大きく後退したが、これはこのベンチの特性によるもので、これだけスコアー差があっても画面の動きに違いが出る様子は全くない。

消費電力と熱はGTX680と接戦

 最後に消費電力と熱、ファンノイズの3点をチェックしたい。消費電力は『Watts UP? Pro』でアイドル時および『バトルフィールド3』プレー中の安定値をとり、同タイミングで『GPU-Z』によるGPUコア温度を取得した。さらに騒音計『SL-1370』でバックパネル側の排気口から約40センチの位置からファンノイズを測定している。今回の暗騒音は33.3dBだ。

GeForce GTX670
GeForce GTX670

 まずゲーム中の消費電力はGTX680の約4%下で、これは性能比にほぼ近い値といえるだろう。TDPが50W以上違うのにおかしな話のようだが、GPU Boostの効果で自動OCがガンガンかかるような状況では、GTX680に非常に近い値となる。ただ『OCCT Perestroika 4.2.0』の“GPU Test”のような“Power Virus”系テストでは、Keplerコアの共通仕様として限界近くまで回らないようになっているようで、その場合はGTX680(286W)とGTX670(250W)の消費電力の差は開く。

 一方ライバルとの勝負に目を向けると、HD7970には消費電力で大きく下回るものの、HD7950には負ける。ただこの価格帯のGPUを買う人が「20~30Wの消費電力差を優先してゲームのfpsを20fps犠牲にできますか?」と問われれば間違いなく「No」と答えるはず。ワットパフォーマンスという意味ではライバルより確実に勝っているといえるだろう。

GeForce GTX670

 残念だったのはファンノイズだ。高負荷では高回転になるHD7970/7950より各段に静か、数値上ではGTX680も軽く下回っているのだが、いかにも軸ブレしてそうなカラカラという音が気になった。コスト重視の結果なのか、貸出機ならではの個体差なのかは不明だが、リファレンス使用よりもサードパーティ製の静音クーラー付きのものが狙い目になるかもしれない。

■結論

 現行ゲームならば、GTX670で十分なフレームレートが得られ、ワットパフォーマンスも非常に良好。フルHD液晶1枚でプレーする環境であるなら、GTX670は極めて現実的で優れた選択だ。

 となると、問題は価格だ。アキバ界隈の予想では、OCモデルが4万9000円前後、ノーマルの特価品が4万2000円前後になると予想されている。GTX680が5万5000円前後、限定の特売品で4万9800円程度で流通している現状を考えると、GTX670の安定価格は4万台前半になりそうだ。

 しかし、ゲーム環境に金を惜しまない猛者が、1万円をケチってGTX670をわざわざ買うというのは少々考え難い。ベンチでも明らかな通り、低負荷ではGTX680に迫るが、負荷が重い条件にするほどCUDAコアの少なさ、ブーストクロックの低さが響いてくる。

 GTX670は現行ゲームに速効性のあるソリューションとしては非常に魅力的だが、将来の超ヘビー級ゲームの迎撃用としてはややコストパフォーマンスが悪いと思えてならない。マニアには甘口すぎ、かといって一般ユーザーが手を出すには辛口すぎ、というのがGTX670の“味付け”ではなかろうか。

●関連サイト
NVIDIA

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