4月16日、Twitterは、同社社長のディック・コストロ氏の来日会見を開いた。会見の中では、同社の今後の方針が語られたわけだが、それについての解説はちょっと後回しにしておこう。会見で明かされた「数字」には、SNSの今後を考える上で重要な、様々な情報が隠れている。まずはそこを分析してみよう。
コストロ氏の明かした数字は、すべてTwitterの利用実績に関するものだ。
まず第一にアクティブユーザー数。ここでいうアクティブユーザーとは、いわゆる「累積での利用者数」ではなく、アカウントが抹消されておらず、同社内に記録されている現在のユーザーの数を指す。同社が公表した数字は「1億4000万人」。非常に多いようだが、別に世界のSNSでトップ、という訳ではない。
たとえばFacebookは全体で約8.5億人とけた違いに多い。2月にはFacebook自身が、日本での月間ログインユーザー数(月に1度以上アクセスする人、すなわち有効なアカウントと考えられる)が1000万を越えた、と発表している。mixiが登録ユーザー数で2623万人、月間ログインユーザー数で1520万人と発表している(共に同社2月発表のIR資料より)から、日本においてはまだmixiの方がユーザー数は多い、ということになるだろうか。会見では、日本でのユーザー数について直接的な言及はなかった。しかし「利用者の70%がアメリカ以外からのアクセス」「日本は三番目に大きな市場」「アクティブユーザーの数は日本でも増え続けている」(コストロ社長)とのコメントはあったので、相当な数であるのは間違いない。種々の調査によれば、2000万人程度が日本のユーザーと見られており、その推定はおそらく、そう遠くはないだろう。
それよりも重要なのは、“いかにサービスが使われているか”だ。Twitterが今後どのようなビジネスモデルを採るにしろ、重要なのは数多くのユーザー、それも利用度の高い「本当に価値のあるユーザー」をどれだけ抱えているか、という点だ。コストロ社長のコメントも、そこに注力したものだった。
「現在の1日のツイート数は3億4000万件。我々が創業以来、累計で10億ツイートに到達するには3年2ヶ月が必要だったが、今は3日で10億に達する」(コストロ社長)
このコメントは、同社が「活発に使われる、生きたサービスである」という主張に他ならない。毎日Twitterにアクセスするユーザーが「全世界で5000万人以上」というのも、この主張を裏付けるものだ。
他社の場合、サービスの形が違うため、まったく同じように比べられる指針はない。mixiが、同社サービス経由で行われた「総コミュニケーション数」を、毎月8億件と公開している。だが、メッセージ投稿から写真投稿、カレンダー閲覧に各機能へのフィードバックと、ありとあらゆる行動をカウントしたものなので、同じようには比べられない。
そこでTwitter側が持ち出すのが、昨年12月に「天空の城ラピュタ」テレビ放映時に行われた「バルス祭り」の同時ツイート数だ。「バルス」のタイミング、1秒間での同時ツイート数は2万5088件。次が日本の新年の挨拶(2012年)で、1万8348件となっている。もっともTwitterユーザーが多いアメリカの数は3位から6位までであり、1位と3位の間は1万以上の差がある。「バルス」は同時ツイートに向いたもので、ちょっと特殊である……との指摘もあるが、利用者数3位の日本が、同時ツイート数で断然トップにおり、トップ10のうち5つを占めているというのは、日本におけるTwitterの定着を示す大きな指針であるのは間違いない
この点で重要視されるのが、Twitterのインフラとしての有用性だ。今回コストロ社長が来日したのは、災害時や公的な部分でのTwitterの活用について話し合い、理解を深めるためだという。
「日本のTwitterチームと話し合い、ライフラインとしての機能をどう強化できるか検討する。日本チームが中心となるが、その成果は世界中で、できるかぎり早く共有したい」とコストロ社長は言う。個人にとってより有用なメディアになる、というのが、Twitterの今後の目標だ。公的な活用もその一環である。東日本大震災において、Twitterやmixiは個人の情報インフラとして、非常に大きな役割を果たした。解決すべき点がまだあるのは事実だが、SNSに必要とされている機能であるのは間違いない。Facebookも2月に、世界に先駆けて、日本で災害用伝言板機能を公開している。
いかに生活に密着したメディアになれるか。当たり前といえば当たり前の結論だが、震災後にSNSが見直されたのはそのためでもある。現在Twitterが日本で定着しつつあるのは、おもしろさももちろんだが、そういう部分での可能性を支持されてのことではないだろうか。
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