総務省の諮問機関である電波監理審議会は2月29日、携帯電話会社に新たに割り当てる900MHz帯の周波数帯の割当先を、ソフトバンクモバイルが適当であると答申。これを受け、総務省はソフトバンクモバイルに同周波数帯の免許を割り当てると見られる。
携帯電話は国の共有財産である“電波”を使って情報をやりとりするため、それを運営する携帯電話キャリア各社は、国から電波を利用するための免許割り当てを受けて事業展開をしている。日本で現在、携帯電話向けに用いられている電波の周波数帯域は、800MHz、1.5GHz、1.7GHz、2GHzの4種類。このうちNTTドコモにはすべて、au陣営には1.7GHz帯以外、ソフトバンクモバイルには1.5GHz帯と2GHz帯、イー・モバイル(イー・アクセス)には1.7GHz帯の免許が割り当てられている。
しかし、最近のスマートフォン人気でモバイルによるインターネットの利用が増え、携帯電話回線で大容量のデータをやりとりする人が急増。キャリアに割り当てられた電波の帯域が不足し、通信ができなかったり、遅くなったりするケースが増えつつある。また、最近ではLTEやモバイルWiMAXなど、モバイルで高速データ通信を実現する新しい通信方式が増えているが、これらを用いて高速通信を実現するには、帯域幅の広さも必要となる。
こうしたことから総務省は、新たにいくつかの周波数帯をキャリアに割り当てる方針を示しているのだが、その中のひとつに、NTTドコモとau陣営が保有している800MHz帯を整理・再編することで、2012年7月24日以降に空きができる900MHz帯がある。
↑『ワイヤレスジャパン2011』の総務省講演資料より。トラフィックの解消や高速通信の実現などに向け、今後900MHz帯をはじめ多くの周波数帯の割り当てが予定されている。 |
900MHz帯は、携帯電話に割り当てられる電波の中では周波数が比較的低く、電波の特性上、遠くに飛びやすいことから、携帯電話の通信に必要な基地局の設置コストが抑えられるメリットがある。また、この帯域は、海外でも多くのキャリアが使用しているため、海外からの機器調達がしやすいというメリットもある。例えば、世界中で同じモデルが販売されている『iPhone 4S』は、1.5GHz帯など日本独自の周波数帯には対応していない一方、海外で広く使われている900MHz帯にはしっかり対応しているのだ。
それゆえ、900MHz帯は“プラチナバンド”とも呼ばれており、その獲得には国内の4キャリアすべてが名乗りを上げていた。中でもこの帯域の獲得に熱心だったのが、ソフトバンクモバイルとイー・モバイル。両社とも携帯電話事業への参入が後発であり、同じくプラチナバンドと呼ばれる800MHz帯を所有していないことが主な要因だが、ソフトバンクモバイルはiPhoneの人気でひっ迫している携帯電話回線の混雑解消、イー・モバイルは帯域幅の拡大や、海外からの端末調達をしやすくする狙いがあったようだ。
↑イー・アクセス代表取締役社長のエリック・ガン氏。同社は900MHz帯の割り当て審査に対し総務省に要望書を提出するなど、獲得に積極的な動きを見せていた。 |
そして今日、電波監理審議会が900MHz帯の割り当て事業者について審査した結果、ソフトバンクモバイルへの割り当てが適当と答申した。その結果を受け、総務省はソフトバンクモバイルへの900MHz帯の免許を割り当てると見られる。
同社の孫正義社長は、携帯電話事業参入以前からプラチナバンドの獲得にこだわる姿勢を見せており、900MHz帯の割り当てについても、割り当て以前から基地局設置への投資を前倒しで進めるなど、獲得に向け強い意欲を示していた。今回ようやくその念願がかない、900MHz帯の獲得に至ったといえる。
↑ソフトバンクモバイルは900MHz帯のインフラに先行投資するなど、2年で1兆円の投資をする方針を示している。 |
ソフトバンクモバイルが900MHz帯を獲得することで最も恩恵を受けるのは、やはり同社のiPhoneユーザーであろう。先にも説明した通りiPhone自体は元々900MHz帯に対応しているので、900MHz帯のインフラ整備が進むことで、通信品質が大きく改善される可能性があるからだ。もっとも、この帯域が利用できるようになるのは、あくまで800MHz帯の再編が完了する2012年7月24日以降。加えてインフラ整備にも時間がかかることから、品質改善の恩恵を受けるにはもうしばらく時間がかかるということは、覚えておきたい。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります