事の成り行きはこうだ。
1月下旬、auお客様センターより電話が来た。「通信料に関して、大事なお知らせがございますので、XXX番のKDDIお客様センターまでお電話ください」とiPhoneの留守電に入っていた。
かけ直して、オペレーターを呼び出すと、「海外でお使いになられた通信料が高額になってしまっていますので、そちらのお知らせをと思いまして……」となんだか歯切れが悪い。「あ、はい使いましたよー」と私。
私「パケ定額で使っていたと思うのですが……」
オペレーター「えーと、海外パケット定額をご利用とのことですね。たぶん、該当の事業者以外に接続されてしまったぶんになると思われるのですが」
“ん? なんかやっちゃった?”とチラッと頭をよぎった。
出張先はドイツ。パケ定額のキャリアにつながっていると思い、日本にいるときと同じように使っていた。ミュンヘンでは道に迷い、雪が吹雪くなか、GPS機能とネットを利用し、目的地までたどり着くことができたのはiPhoneのおかげだった。そのときは命の恩人とさえ思ったほどだ。
オペレーター「ええと、大変申し上げにくいのですが……」
口を濁しながら、次の瞬間、サポセンのお兄さんが発したのは、「76万円」という驚愕の金額だった!!
「はっ????」 耳を疑った。これが噂の“パケ死”!! だが、あまりに高額すぎて、実感がない。「それ全額払え……と?」
キャリアを手動設定できない!?
さて、なぜ“パケ死”な通信料を出してしまったのか。auのiPhoneならではの落とし穴があったからだ。
ご存知のとおり、日本国内でiPhoneを扱っているキャリアはソフトバンクとau。両社ともに海外でのパケット通信利用に“海外パケットし放題(ソフトバンク)”、「海外ダブル定額(au)という定額サービスプランを設けている。どちらも2980円/日の上限を設け、日本時間の0:00~23:59を基準に課金される。
ソフトバンクのiPhoneの場合、海外着後、電話機能をオンにすると“ソフトバンクより”というメッセージが届く。内容は“「海外パケットし放題の○○○○に接続されました。この接続を維持するため、手動設定してください”というもので、手動の設定方法と海外からも無料のコールセンターの電話番号が記載されている。
一方のauのiPhoneでは、ドイツ着後にメッセージは送られてこなかった。それもそのはず、GSM圏内では、SMSができないそうだ(CDMA圏内では可能)。
さて、私はここで“パケ死”を導く、大きな思い違いをしていた。実はauのiPhoneでは、キャリア選択が不可能な仕様になっている。ソフトバンク利用のiPhoneでは“設定”のなかに“キャリア”という項目があり、そこから“自動”をオフにすることでキャリアが検索され、そのなかから選んで手動で切り替えができるのだが、auのiPhoneには、その“キャリア”という項目さえない。
↑au仕様のiPhoneには“キャリア”という項目がない。
↑こちらはソフトバンク仕様のiPhone設定項目。海外滞在時には“キャリア”設定内の“自動”をオフにすると、利用可能なキャリアが表示され、手動で選択できる。
また、auのスマホを海外で使ったことのある知人が、「自動接続でキャリアにつながって海外パケ定額になるよ」と言っていたのと合わせて、auでは、てっきり海外で使うときは該当キャリアに自動的につながってくれるものだと思い込んでいた。
思い込みというのは怖い。本当に怖い。auのサイトの“海外ダブル定額の事業者拡大で安心”などのキャッチも、自動接続だから安心というニュアンスで私のなかにはインプットされていた。
あとで調べてみると、“CDMAモードの場合は、滞在中の国・地域内で自動的に事業者が選択されます”と説明があるので、アメリカ、韓国などを訪れた知人の場合はこれに該当していたようだ。
しかし、“GSMモード”の場合は、これに該当しない。つまり、勝手に“海外ダブル定額の対象以外の事業者”にも接続されてしまう。そして、もしそれがわかっていたとしても、現在の仕様ではなにもできない。高額請求をまぬがれるには、モバイルデータ通信を“OFF”にし、パケット通信を行なわないという選択しか残されていない。
ドイツでは“e-Plus”と“O2”が定額適応のキャリアなのだが、確かに“Telecom.de”などもつながっていたことに気づき、一度、ミュンヘンからauのサポート窓口に電話を入れた。
そこでは「キャリアは手動で設定してください」と言われ、「iPhoneでできないようだが? やり方は?」と尋ねると、「iPhone担当者でないとお答えできないので、対応できる日本時間の9~17時の間にかけ直してください」と促された。
結局、そのあと、“e-Plus”につながってくれたのと、日本時間に合わせるのが難しかったため、かけ直すことはなかった。
対応は3月予定
さて、話は戻ってサポセンとのやり取り。“iPhone”利用を伝えたことで、au側も“手動設定できないこと”が落ち度であると認識しているようだった。そして、対応を検討するつもりなので改めて連絡すると言われた。
数日後、べつの担当者から連絡が入った。なにしろ“76万円”だ。ドキドキ。
「本来は手動設定でキャリアを選んでいただきたいが、いまの弊社の仕様では手動にできないため、こうなってしまった。今回の該当ぶんは、海外パケ定額に置き換えて請求金額を訂正する」といった内容を告げられた。
とりあえず、ホッとしたが、誰もが通信モードなどに詳しいわけではなく、こういったことはもしかするとひんぱんに起こりうるのではないか?
う~ん、それにしても、なんでまた、auさんはiPhoneをキャリアを自動設定のみの仕様にしてしまったのだろう……。
その担当者の方に、「iPhoneサイトでの告知をもっとわかりやすくしないと危険ではないか」、「どのサポート担当者が対応しても、せめて、iPhoneではSMS制限とキャリアの選択制限があるなど基本事項は答えられるようにしておくべき」といったお願いをしたところ、善処していく旨を前向きに回答いただいた。
なお、その後auのサイト上でiPhone利用者への注意点が詳しくなっていたので、対応いただいたのだと思う。
そして、手動設定の対応予定については「現在、iPhoneの仕様変更もしくは、アプリ提供の形のどちらかで、対応するよう動いている。3月提供予定だが、正式な日にちは未定」との回答を得た。
問題は3月のリリースまでの間だ。その担当者の方いわく、自動設定では、通信状況のよい事業者を選んでつないでしまうとのこと。となると特にヨーロッパなどでは、パケ定額提携事業者よりも非提携事業者のほうが強いエリアも多いのでかなり危険だ。
「iPhoneの場合、3月までは海外でパケ通信を使えないと思っていたほうがいいんですよね?」と確認すると、「あ、いえ、お客様のご利用を制限することはできないので……」と困ったご様子。
それまでは個別に対処するつもりなのだろうか。しかし、利用者の料金を減らしてくれたとしても、あの金額を告げられるのは心臓に悪すぎる。
そして、実際に利用したパケ代についてauから海外事業者auには支払いが生じるはずだ。
iPhoneの海外利用を考えている人にとっても、auにとってもデメリット以外なにもない。なんとしても、早急な対応が待ち望まれる。
↑1月の料金明細とグローバルパスポート通信料の内訳。海外パケット定額の該当業者につながっていたぶんを合わせると100万円近い金額のパケット通信料となる。ミュンヘン滞在の3日間ほどでこの金額なので、1週間程度使ったら、数100万レベルの請求が来てしまうだろう。
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