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【スーパーボウルまで追いかけ隊】テキサンズが10年目で悲願の地区優勝

2011年12月14日 19時00分更新

 ヒューストン・テキサンズが10勝目を挙げ、AFC 南地区を制覇。チーム創立10年目にして初の地区優勝を飾りました。これまでの9年間、地区優勝どころから勝ち越しすら1回しかなかったテキサンズが、どのようにして優勝を手にしたかに注目しましょう。

●NFL第14週トピックス●
テキサンズが最終プレーで逆転TDを決め、涙の初地区優勝!
Houston Texans 20 - 19 Cincinnati Bengals

 今季9勝3敗で AFC 南地区の首位を走るテキサンズは、目下7勝5敗でプレーオフ進出の望みを捨てていないベンガルズと敵地で対戦。エース QB のマット・ショウブと2番手 QB のマット・ライナートをともにシーズンエンドのケガで失ったテキサンズは、今季の5巡指名ルーキー、QB T. J. イェーツにチームの命運を賭けます。

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テキサンズの新人QB T.J. イェーツ。ノースカロライナ大では1年生から活躍し、今季ドラフト5巡で指名された。

 QB イェーツがプロ初出場を果たしたのは、わずか2週前の11月27日のこと。ジャガーズ戦で QB ライナートがサックを浴びて鎖骨を骨折し、緊急登板したのです。翌週のファルコンズ戦では自身初の先発で出場し、17-10 の勝利に貢献。ただ、この試合ではパス成績が 12/25 と成功率 48 %に過ぎず、守備陣の活躍で勝ったようなものでした。

 そして彼の真価が問われることになったベンガルズ戦。QB イェーツはなかなかエンジンがかからず、初のパス成功は実に12プレー目でのこと。しかも14プレー目には自陣でプロ初のインターセプトを喫してしまい、ベンガルズに易々と FG を許してしまいます。

 次のドライブでは、敵陣ゴール前まで迫るものの、ここで RB ベン・テイトが痛恨のファンブル。そこからベンガルズに TD と FG を立て続け許してしまい、前半は 3-16 と13点差をつけられて終わりました。このままでは敗色濃厚です。

QB イェーツの決勝 TD パスで劇的勝利!

 しかし、ハーフタイムでうまくアジャストできたのか、後半に入ってすぐ QB イェーツが TD パスをヒット。その後、両チームとも1本ずつ FG を決め、13-19 で終盤に突入。残り2分33秒からのドライブに、テキサンズは勝負を掛けます。

 ここからはハリーアップオフェンスで、QB イェーツのパスプレーが続きます。立て続けにパスを成功させて敵陣に侵入するものの、残り1分15秒からのプレーではタイムアウトがない状況でサックを浴びる始末。しかし直後のプレーでは 17 ヤードのスクランブルを決め、さらに相手のパスインターフェアもあって、敵陣6ヤード地点まで前進。残り時間はわずか 12 秒です。

 ここからの2プレー目、残り時間6秒でテキサンズは、ノーバック隊形のショットガンから5人のレシーバーをラインアップさせ、ダウンフィールドへのパスを選択。

 タイトエンドとインサイドレシーバー2人が真っ直ぐに走ってマンカバーをくぎ付けにし、スッポリと空いた中央ゾーンに、右ワイドにセットした WR ケヴィン・ウォルターがスラントでするするっと入り込み、QB イェーツからのパスをキャッチ。見事に逆転勝ちを果たしたのでした。

多くの新興チームは4~5年目にチームが完成

 さて、劇的な勝利で地区優勝を決めたテキサンズですが、チーム創立から初優勝まで10年というのは、新興チームとしては遅咲きの部類に入ります。

 旧 NFL と旧 AFL が合併した 1970 年以降、新たに創立されたチームは以下の7チーム。それぞれの創立年と、初地区優勝までの年数を示します。

・タンパベイ・バッカニアーズ(1976年、4年目)
・シアトル・シーホークス(1976年、13年目)
・ジャクソンビル・ジャガーズ(1995年、4年目)
・カロライナ・パンサーズ(1995年、2年目)
・ボルチモア・レイヴンズ(1996年、8年目)
・クリーブランド・ブラウンズ(1999年、優勝なし)
・ヒューストン・テキサンズ(2002年、10年目)

※レイヴンズは実質的にブラウンズが移転したチーム。ブラウンズはその3年後に再建、チームとしての歴史は旧ブラウンズを継承しているが、チーム自体は新しく結成されている。

 テキサンズの10年目を超えるのはシーホークスとブラウンズですが、シーホークスは9年目に12勝4敗の好成績をマーク。普通なら地区優勝の成績ですが、この年はブロンコズが13勝3敗で地区優勝したため、わりと食った形です。

 また、ブラウンズは同じ AFC 北地区に所属するスティーラーズ、レイヴンズ、ベンガルズがいずれも強豪ぞろいで、地区割りが不利だという状況は否めません。2007年シーズンには10勝を挙げながらプレイオフに進めなかったという不運もありました。

 そう考えるとやはり、テキサンズの10年目で初優勝というのは、遅咲きだと言えます。なにしろ、チーム創立後26連敗だったバッカニアーズでさえ、4年目には地区優勝しているのですから。

強力ディフェンスで AFC 第1シードを維持

 もちろんテキサンズにも擁護すべき点はあります。最も大きなポイントは、強豪のコルツと同地区だという点。なにしろテキサンズ創立後、9年連続で2ケタ勝利、2003年~2009年には7年連続で12勝以上、しかもスーパーボウル進出2回という超強豪ですから、これではテキサンズが勝てないのも無理がありません。

 そのコルツが今年、不動のエース QB ペイトン・マニングの不在により、13連敗の泥沼にハマっていることが、テキサンズには大きくプラスに働きました。開幕戦のコルツ戦は 34-7 の大勝。3敗はセインツ、レイダーズ、レイヴンズという勝ち越しチームに対して喫したもので、他は 10 点以上の大差で勝った試合が5試合にものぼります。

 この成績を支えているのは、喪失ヤードでリーグトップの鉄壁ぶりを誇るディフェンス陣です。なかでも LB ブライアン・カッシング( 2009年守備新人王 )と LB デメコ・ライアンズ( 2006年守備新人王 )が揃う LB 陣はリーグトップクラスの鉄壁守備を誇ります。

 さらに今年からは、ウェイド・フィリップス氏がディフェンスコーディネーターに就任。カウボーイズのヘッドコーチでは結果を残せませんでしたが、守備の天才と称されるフィリップス氏は DC でこそ力を発揮するタイプ。1980年代にはセインツの DC として「 ドーム・パトロール 」として知られる LB 陣を率いた実績もあります。

 そして攻撃面では、QB ショウブや WR アンドレ・ジョンソンといったリーグトップクラスのタレントに加え、昨年突如として大ブレイクした RB エアリアン・フォスターのおかげで地上戦も計算できるようになり、現時点で獲得ヤードがリーグ9位と、攻守のバランスが取れたチームに仕上がっています。

AFCチャンピオン予想は混とん

 AFC では現在、4チームが10勝3敗で並んでおり、細かな順位を決めるタイブレイクのルールにより、テキサンズが現時点での第1シードとなっています。しかもテキサンズは残り試合の相手がパンサーズ、コルツ、タイタンズで、2勝はほぼ計算できる状況。初優勝にしてまさかの第1シードも夢ではありません。

 ちなみに前述の新興7チームのうち、最初にスーパーボウルまで到達したのはレイヴンズ。初地区優勝よりも前に、ワイルドカードからの勝ち上がりで第35回スーパーボウルを制しています。なんとチーム創立5年目の快挙でした。

 この第35回大会は 34-7 でジャイアンツに大勝し、21世紀のスーパーボウルとしては最もワンサイドとなった試合です。勝利の要因は鉄壁ディフェンスで、DT サム・アダムスとDT トニー・シラグサがラインを支配し、その背後には LB レイ・ルイス、LB ピーター・ボウルウェア、LB ジェイミー・シャーパーという夢のような布陣。さらに DB には殿堂入り CB のロッド・ウッドソンがいたのですから、これで優勝しないほうがおかしいという陣容でした。

 今期のテキサンズはさすがにこの2001年レイヴンズには敵わないものの、リーグトップのディフェンスはやはり脅威。あとは喪失ヤードでリーグ2位と3位につけるスティーラーズ、およびレイヴンズとの争いが見ものでしょう。

 ちなみにスーパーボウル候補の一角であるペイトリオッツは、なんと喪失ヤードでリーグ最下位! 失点ではリーグ14位まで持ち直しますが、上記3チームが失点でも2~4位を占めているのに比べると、見劣りせざるを得ません。このままテキサンズが第1シードをキープすれば、創立10年目にして悲願の初スーパーボウルもなくはなさそうです。

●今週の余談

 近年の NFL では、スーパーボウル初進出を果たすチームが少なくありません。2000年以降に限っても、バッカニアーズ、レイヴンズ、シーホークス、カーディナルス、セインツが初進出を決めています。

 そうなると気になるのが、未だスーパーボウルに出場したことのないチーム。新興チームのジャガーズとパンサーズはまだしょうがないとして、65 年目のブラウンズ、そして 82 年目のライオンズのファンは、今年もやきもきしていることでしょう。

 ただ、ライオンズはまだ、スーパーボウル進出の可能性を残しています。今季、開幕5連勝で注目され、現在も8勝5敗で第6シードの位置をキープしています。すでに同地区のパッカーズが地区優勝を決めていることから、敵はワイルドカードを争うファルコンズ、そしてベアーズ、ジャイアンツ、カウボーイズといったところ。

 ライオンズにとって有利なのは、残り3試合のうちチャージャーズとパッカーズは、プレイオフに関係ない消化試合になっている点です。パッカーズはもしかしたら最終戦にシーズン全勝が懸かるかもしれませんが、NFL ではシーズン全勝よりスーパーボウル優勝のほうが価値が高いことは、2007 年のペイトリオッツが証明済み(シーズン全勝したものの、スーパーボウルで敗退 )。

 しかもプレイオフ進出を懸けて命がけでプレーするライオンズ相手に、パッカーズはケガのリスクを冒して全力で戦う意味がありません。おそらくパッカーズは主力を長時間フィールドに送り出すことはないでしょう。

 そうなると、パッカーズとライオンズは NFC 決勝で再び対決する可能性があります。実はこの2チーム、旧 NFL からの歴史をひも解いても、決勝で対戦したことはないのです。長年の地区ライバルとしては、意外な関係ですね。

 そのライオンズ、最後の決勝進出は 1957 年シーズンの旧 NFL 優勝決定戦で、このときはブラウンズ相手に 59-14 で大勝しています。旧 NFL では4回の優勝経験を誇るライオンズ。スーパーボウル時代での初優勝は、近い将来に達成されるかどうか、注目です。

■筆者 カゲ■
週アスの芸能デスクかつ NFL 担当。日テレ水曜深夜の NFL 中継でフットボールにハマり、1996年シーズンから現地観戦を開始。これまでレギュラーシーズンはファンとして 15 試合、取材では3試合を観戦。スーパーボウルは第40回大会から6回連続で取材している。好きなチームはグリーンベイ・パッカーズ。QBアーロン・ロジャーズが初めて公式戦に出場した瞬間をこの目で見たのがジマン。なお週刊アスキーは、専門誌を除く日本の雑誌メディアでは唯一、スーパーボウルを現地取材しています。

(了)

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